小さいことはいいことだ
森永「エールチョコ」のCMより

 「大きいことはいいことだ」

 これは、広告業界ではよく知られた名コピー。1960年代後半に森永製菓「エールチョコレート」のTVCMで放映され、流行語になりました。いざなぎ景気の中で、高度成長を続けている日本経済は、ついにGNPが世界第2位に。大量消費ブームはなかなか衰えず、人々は、まだまだ高度成長への期待を夢見ていた、そんな時代です。

 そして、2012年。およそ半世紀経とうとしている今、僕は「小さいことはいいことだ」と思うようになってきました。いやむしろ、"小さいこと"は、僕らが幸せに働き、生きていくために大切な考え方かもしれません。

"規模"は大きいほうがいいなんて誰が言ったのか

 37シグナルズという会社があります。米国のソフトウェア会社で、彼らはなんと十数人のメンバーだけで数百万人のクライアントを抱え、あの有名なRuby言語のフレームワーク「Ruby on Rails」なども開発しています。

 その経営者たちが書いたビジネス書『小さなチーム、大きな仕事』(原題は「REWORK」)のカバーにはこのように書いてあります。

〈  会社は大きいほうがいいなんて幻想だ。今日では誰でも自分のアイデアをもとにビジネスを始められる。高価な広告、営業部隊、オフィス、いや、会議も事業計画も要らない。昼間の仕事をしながら、初めは週末の数時間を費やすだけで十分だ。小さな所帯で、シンプルに、迅速に、臨機応変に。それで僕らは成功している。  〉

 この続きを読みたい方は是非、本書を読んでみてください。独自の哲学に基づいたシンプルでわかりやすい理論が展開されていて痛快です。

 また彼らは、ウェブ上で公開しているGetting Realで"「より小さな」規模"というタイトルを付けて、このように書いています。少し長いですが、引用します。

「より小さな」規模

ムダがないほど変化しやすい
物事が大きければ大きいほど、その方向を変えるのに莫大なエネルギーが必要になります。物理の世界だけでなく、これはビジネスの世界にも言えることです。

(中略)

規模が大きくなる要素は...
長い契約
多すぎるスタッフ
不変な決定
ミーティングのためのミーティング
煩雑なプロセス
(物理的・精神的に)たまっているもろもろ
オープンにしないソフトウェア・ハードウェア・テクノロジー
オープンにしないデータ・フォーマット
過去に定められた未来
長いロード・マップ
会社での処世術

逆に、規模を小さくする要素はというと...
その場の考え チーム・メンバーで複数のタスクをこなす(人員削減)
規則を無視せず把握する
より少ないソフトウェア・より少ないコード
より少ない機能・特徴
小さなサイズのチーム
シンプルさ
切り詰めたインターフェース
オープン・ソースの製品
データ・フォーマットのオープン化
失敗も認めやすいオープンな雰囲気

小さな規模で、あなたは迅速に舵を変えることができます。周りに敏感に反応し、進化するのです。よいアイディアを採用し、悪いものは落とすことができます。顧客の声に耳を傾け、返事することができます。新しい技術を後回しにせず、今取り入れることができるのです。航空母艦ではなく、高速船で行きましょう。そして、それを満足に思うことです。

(中略)スピーディーな小さな規模のビジネスは、ビジネスモデル、製品、特色、マーケットのメッセージといったもの全てを素早く変えることができます。(中略)そして最も重要なのが、自分たちの気持ち自体も変えることができるのです

 彼らは実経験をもとに、素直かつ明快に、「小さいことはいいことだ」と言っています。このインターネット/ソーシャル時代におけるビジネスの視点で。これは、会社の規模と、成果・成長を切り離した思考です。最後には太字で、「自分たちの気持ち自体も変えることができる」と書いています。つまり、小さいからこそ、自らの気持ちに対して、素直に、ありのままで居ることができる素晴らしさについて提言しているのだと思うのです。

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