中国大使館書記官のスパイ容疑でも急浮上。
米輸出など1兆円規模の先駆的ビジネスを目指した「農林水産物等中国輸出促進協議会」の重大局面

「(農産物の対中国輸出の)勉強会に出てもらったことはあるし、経済担当書記官として中国大使館側の窓口でもあった。でも、彼がスパイだなんていう意識は、まったくありませんでした」

 困惑気味にこう語るのは、中国への農林水産物輸出のために、昨年7月、都内に設立された一般社団法人「農林水産物等中国輸出促進協議会(促進協議会)」の田中公彦代表理事である。

 『読売新聞』が、5月29日、一面トップで報じた「中国書記官 スパイ活動か」という記事が波紋を広げている。

 疑いをかけられているのは、中国人民解放軍に所属する情報機関「総参謀部」出身の在日中国大使館の一等書記官(45)だが、流暢な日本語を操り、各界に人脈がある。

 なかでも野田佳彦首相、玄葉光一郎外相を始め政治家を輩出している松下政経塾に入所していたことがあるだけに、「日本での役割」に関心が集まっている。

 既にマスコミ各社は、ウィーン条約に抵触する健康食品会社からの顧問料授受、中国の農業特区への出資持ちかけ、といった書記官のビジネスを報じているが、「スパイ活動の中身」については、殆んどふれられていない。

 ただ、最近、農水機密に接触した事例としてあげられたのが、促進協議会絡みだった。読売報道によれば、輸出促進事業の推進役である田中代表は、事業を主導する筒井信隆副農相から、「機密性2」といった表記の文書を入手していた。従って、中国側の「協力者」である書記官には、田中代表を通じて機密が漏えいしていた可能性があるという。

 では、輸出促進協議会とはなにか。

中国大使館も事業の支援を名言

 この団体については、今年1月、「鹿野派利権」「3億円詐欺事件」という形で怪文書が流され、「永田町」や「霞が関」で騒動になった。その顛末を、私は本コラム(1月26日配信)で記事にした。

 怪文書は、利権を匂わせ、「詐欺紛い」と断定、「警視庁捜査二課が捜査着手」と、尾ひれがついていたが、結論からいえば、「事件」の要素より、"内紛"の色合いが濃かった。

 事業そのものは、「攻めの農業を展開しよう」という前向きな発想から始まった。

 10年7月、民主党内に勉強会が立ち上がり、鹿野道彦農相、筒井副農相、一川保夫前防衛相などが参加、農水省の事務方も加わって、議論は本格化、話はトントン拍子で進み、10年末に筒井副農相が訪中、中国有数の国有企業「中国農業発展集団(中農集団)」のトップの劉身利会長と「覚書」を交わすまでになった。

 「覚書」に基づき、11年1月には鹿野農相の招きで劉会長ら一行が来日、各所を視察。そうした交流を経て、日本側が窓口団体(促進協議会)を設立、北京の「全国農業展覧会」に場所を借りてアンテナショップとし、展示会販売するという事業は、順調なスタートを切った。

 この事業を、スパイ容疑をかけられた書記官は、経済担当として、「勉強会」の段階から議論に参加してサポート、昨年7月、促進協議会が立ち上がると、大使館の窓口として活躍した。

 中国大使館は、事業を大使館として支援することを明言するなど、相当に積極的だった。また、促進協議会にとっては懸案の検疫問題(展示館向けのコメの燻蒸と検疫については、中国検疫担当部署とは別ルートだった)についても支援した。

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