プロ野球「若き才能」はこうして見出された
特別読み物 中村(ヤクルト)、岩田(中日)、堂林(広島)、宮國(巨人)、川端(オリックス)ほか

 圭子の夢は夜ひらくが、野球選手たちの才能となると、その開花時期の見極めは、熟練のコーチでも難しい。今季ブレイク中の新顔たちは、いかにして少ないチャンスをものにしたのか。

石の上にも三年

「期待してなかったから、いい意味で裏切られたよ」

 中日・権藤博投手コーチの言葉が、マイナスからのスタートだった岩田慎司(25歳)のプロ野球人生を物語っている。

 '08年のドラフト5位(明大出身)。4年目の今季、川上憲伸の代役として先発ローテーションに定着した。この若き右腕に対する入団時のスカウトの評価は、

「将来は野手でいい」

 というものだった。

 昨年まで中日ヘッドコーチを務めた森繁和氏も言う。

「遠投力がないんだ。普通の投手なら100mは投げるのに、岩田は70m程度。ただでさえ中日の投手陣は当時から層が厚かったから、投手として厳しい環境にいたのは事実だよ」

 だが、ただひとつだけ、岩田には他の投手に勝るものがあった。1年目から岩田を指導した稲葉光雄投手コーチが語る。

「どこまでも愚直。岩田は、入団時に私が教えた下半身の基本動作の練習を、大げさではなく毎日、今日まで続けているんです」

 3年前、下半身と上半身のバランスがバラバラだったフォームを、岩田は毎日毎日、矯正し固めていった。

「地味ですぐには結果に繋がらない練習は、疎かにしていく選手が多い。でも投手というのは、常に同じフォームで、同じ気持ちで投げられるのが仕事。岩田には、プロ意識を高く保てる芯の強さがある」(稲葉氏)

「どうしても投手として一軍で戦いたい」---その気持ち一つで練習に励む岩田の心が折れぬよう、稲葉氏は何度も話して聞かせた。

「球威のない岩田のようなタイプに必要なのは、ストライクゾーンを立体的に使うこと。『縦と横だけじゃなく、奥行きも利用しろ』といつも話した。『フォームが固まれば、山本昌や吉見一起のようになれる』とね」

 稲葉氏が岩田の成長を確信したのは、ちょうど1年前の6月4日。二軍での巨人戦だった。先発した岩田はフォームが安定せず、3回で6失点と打ち込まれた。