メディア・マスコミ
「ネット時代になっても新聞はなくならない」---全米63紙をまとめて買収したカリスマ投資家ウォーレン・バフェットは低迷する新聞の「救世主」なのか
バークシャー社の定時株主総会でビル・ゲイツと話すウォーレン・バフェット〔PHOTO〕gettyimages

 世界的な著名投資家ウォーレン・バフェットが新聞63紙をまとめて買収---。今月17日、10年以上にわたってリストラの嵐が吹き荒れていたアメリカ新聞業界にとって久しぶりに明るいニュースが飛び出した。

 バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは、アメリカ南東部各地で発行される地方紙を買収することでメディア会社メディア・ゼネラルと合意した。バージニア州リッチモンドの有力地元紙リッチモンド・タイムズ・ディスパッチをはじめ、メディア・ゼネラル傘下のほぼ全紙に相当する。

 バークシャーは昨年11月にも地方紙を買収している。アメリカ中西部のネブラスカ州オマハの地元紙オマハ・ワールド・ヘラルドだ。推定買収額は2億ドル。オマハは、「オマハの賢人」と呼ばれるバフェットの出身地であり、バークシャーの本社所在地でもある。

 割安株投資家として知られるバフェットは「新聞不況は底を打った」と読んだのだろうか? それともノスタルジアから新聞救済に向かったのだろうか?

 ノスタルジア説にはそれなりの根拠がある。バフェットは少年時代に新聞配達でためた小遣いを元手に投資家としてスタートし、一時は世界一の長者になるほどの巨富を築いた。1973年にはバークシャーを通じて有力紙ワシントン・ポストへ投資し、発行済み株式の10%以上を取得。大株主として長らく同社の取締役も務めていた。

継続的な利益成長を重視

 今回の63紙買収に際しては、次のような声明も発表している。

「コミュニティー意識が根強い地域に住む人たちの多くにとって地元紙は最も重要な財産です。今回買収する新聞の読者層も強いコミュニティー意識を持っています。このような読者がバークシャーという永住地を見いだすことができて、われわれにとってこれ以上の喜びはありません」

 確かにノスタルジアの面も否定できない。だが、「新聞は社会の公器であり、地域コミュニティーにとって不可欠」という理念を最優先したと見なすのは間違いだ。バークシャーは上場企業であって民間非営利団体(NPO)ではない。利益を生まないと分かっていながら、一種の社会福祉事業として新聞を買収しているとしたら、バークシャーの株主から抗議されるだろう。場合によっては訴訟を起こされるもしれない。

 過去の案件を見れば、新聞への投資でもバフェットが持続的な利益成長を重視していたことが分かる。

 たとえばワシントン・ポスト。バークシャーは現在、同社の発行済み株式の18・2%を保有。時価(1株328ドル弱)で換算すると5億6,600万ドルになる。投資額は1,100万ドルであるから、数十年で50倍以上に値上がりしている計算になる。ちなみにワシントン・ポストは、バフェットが少年時代に新聞配達していた新聞の一つだ。

 オマハ・ワールド・ヘラルドはどうか。ネブラスカ大学リンカーン校で金融論の教鞭を執るドナ・ナドニーはブログで「地元市場での世帯普及率で見てオマハ・ワールド・ヘラルドは全米で上位10位以内に入る。オンライン版も地元ニュースを独占的に扱っている」と指摘する。1977年にバークシャーが買収したバッファロー・ニュース(ニューヨーク州バッファローの地元紙)は91%の総資産利益率(ROA)を記録し、「全米で最も利益率が高い新聞」と言われたこともある。

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