ゴルフ
最後の最後まで、わからない
「水を得た大魚」の勝利

「22日に2勝と結婚なんて、すごいなあ」と控えめに喜んだダフナー(写真/平岡純)

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

 HPバイロン・ネルソン選手権を制したのは、またしてもジェイソン・ダフナーだった。

 つい先日、彼の「164試合目の勝利」を書いたばかりだというのに、そのわずか3週間後に再び勝利。とはいえ、ダフナーの続けざまの優勝は、天地がひっくり返るほどの驚きではなかった。

 思えば、10年前のこの大会で優勝したのは丸山茂樹。最終日の終盤、パー3の17番で、丸山のティショットはグリーン右手前の池の淵に転がり込んだ。

 ボールの行方を心配そうに見守っていた丸山は、ティグラウンドで「あっ!」と小声で叫んだ。すぐそばで見ていた私も「あっ!」と叫び、直後に「まずいな……」と胸の中で呟いた。

 だが、丸山は池の淵に敷かれた小さな石ころの合間から、ショートゲームの達人ぶりを見事に発揮しながらピンに寄せ、パーセーブ。あのパーが、もしもボギーやダブルボギーになっていたら、丸山の目前の勝利はベン・クレーンに奪われていたかもしれない。

 そして、昨年。もはや優勝は間違いないと思われた今田竜二が17番で短いパーパットを外し、勝利を逃した。

 代わりに優勝を掴み取ったのは、プレーオフを制したキーガン・ブラッドリー。そのブラッドリーに全米プロでプレーオフに持ち込まれ、敗北したのがダフナーだった。

 今年のバイロン・ネルソン選手権の最終日は、一時は首位に5人が並ぶ大混戦となったが、最後は3人に絞られ、単独首位に躍り出たJJヘンリーを優勝争いから脱落させたのは、またしても17番。

 親友どうしの今田とダフナーの双方がかつて手に入れかけた勝利をさらっていったブラッドリーがディフェンディングチャンプとして臨んでいた今年のこの大会で、2日目までは今田が上位を走り、最後はダフナーが優勝。

 そんなふうに過去の出来事を振り返りながら眺めていたら、いろんな出来事と因果関係が想起され、走馬灯のように巡り続けた。

これぞ、勝ち方

 優勝争いで終盤に絞られたダフナー、ヘンリー、ディッキー・プライドの3人は、誰もが通算2勝目を狙うという共通の立場にあった。

 42歳のプライドが優勝したら、94年のフェデックス・セントジュード・クラシック以来、米ツアー史上最長の17年9カ月19日ぶりの勝利となるところだった。

 だが、18番のティショットを池に落としたミスは、足が滑ったとはいえ、やはりプレッシャーが何かを狂わせたとしか思えなかった。

 それでも3打目でグリーンを捉え、7メートルのパーパットを沈めてプレーオフへ望みをつないだところは立派だったが、ぎりぎりで勝利に手が届かなかったのは、優勝争いの戦い方、勝ち方を思い出すのが、ほんのちょっとだけ遅かったからだろう。

 ヘンリーは5番でホールインワンを達成し、優勝に向かってまっしぐらだった。が、17番でグリーンをオーバーし、寄せとパットのミスでダブルボギー。06年のトラベラーズ選手権以来、6年ぶりの優勝を狙っていた彼もまた、久しぶりの優勝争いで勝ち方を思い出せず、焦ってしまった結果だった。

 ダフナーも17番でヘンリー同様にグリーンオーバーさせてしまったが、冷静にパーセーブ。18番はパーならプライドとプレーオフになるところだったが、見事に7メートルのバーディーパットを沈め、勝利。「これぞ、勝ち方」という締め括りだった。

 初優勝から2勝目へ。その期間が17年か、6年か、3週間か。その差が、勝敗を分けた。

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