航空産業は利用者志向に変身できるか!?
再上場に動くJALと2期連続最高益のANA、復活した航空2社の次なる一手を探る。

伝統の鶴丸ロゴが塗装されたJALのボーイング787〔PHOTO〕gettyimages

 一昨年、会社更生法の適用を受けた日本航空(JAL)がV字回復を果たし、今年9月の東京証券取引所への株式の再上場に向けて動き始めた。その切り札は、格安航空会社(LCC)が持たない、足が長くて燃費のよい新鋭機ボーイング787を活かした国際線のニッチ市場の開拓だ。経営破たんで失った利用者の呼び戻しに繋げたいという。

 対する全日本空輸(ANA)は、すでに787の導入でJALに先行、国内線にも同型機を積極的に投入しており、2期連続で史上最高益を更新する勢い。傘下に、LCC2社を抱えて、本体のフルラインサービスとあわせて2つの航空市場で成長を狙う構えだ。

 日本経済が依然としてリーマンショックと東日本大震災、東京電力・福島第一原子力発電所の事故の影響を克服できず株式市場の低迷が続く中で、復活を果たした航空2社の次の一手を探ってみた。

JALはなぜV字回復を成し遂げたのか

 2010年1月に会社更生法の適用を申請し経営破たんしたJALは、14日発表の2012年3月期決算で2049億円の営業利益(その期間の営業活動だけで生じた利益。借入金の元利払いや保有株式の配当といった金融収支は含まない)を稼ぎ出したことを公表し、「V字型回復」と各メディアの喝采を浴びた。

 未公表のため、独自に入手した今回の決算短信をみる限り、筆者が週刊現代(2006年10月14日号)に投稿した記事「JALは『隠れ破綻』している」を手始めに、破たんまでの約3年4ヵ月にわたって指摘し続けてきた経営実態の悪さを覆い隠す“お化粧決算"の痕跡は払しょくされている。

 破たん前のJALは、購入した航空機やその部品のリベートを収入として計上し売り上げを水増しする事実上の粉飾決算や、リースや退職金関連の負債を簿外処理して帳簿上の費用を過少に見積もり収益を大きく見せるお化粧決算を繰り返していた。

 それでも経営は火の車で、2001年度からの9年間に5度も営業赤字に転落し、最終的に2010年1月に会社更生法の適用申請に至った"破たん会社"だった。不透明な経理処理について法的な責めを負わせることなく、安易に公的資金を投入し救済したことは、歴史が民主党政権の罪として問うべき問題として残っている。

 そうした問題はさておき、今回の決算の貸借対照表や損益計算書を見る限りでは、乱脈経営の破たん会社の面影はまったく残っていない。それどころか、70年を越す歴史の中で初めて営業利益が2,000億円の大台に乗せるという快挙を成し遂げたのである。

 なぜ、これほどのV字回復が可能だったのだろうか。

 決算数字から明らかなのは、稲盛和夫名誉会長のもとでJALが徹底的な経費の削減を断行したという事実である。それは、今回の決算と破たん直前の2009年3月期の決算を比べてみると、はっきりする。

 2012年3月期の売上高(連結ベース)は、1兆2,048億円と破たん前の2009年3月期との比較で38.3%の減収だ。それにもかかわらず、JALは営業費用を48.8%減の9,998億円に抑制することによって、過去最高の2,049億円の営業利益を稼ぎ出す成功を収めたのである。

 ちなみに、JALは2009年3月期に508億円の営業赤字を出していた。

 では、なぜ、これほどの経費削減、リストラクチャリングが可能だったのか。それは、会社更生法の適用により、特殊な経理処理が容認されて、収益力が増す「破たん効果」があったからだ。

 この破たん効果を、JALの財務諸表の中から部外者が正確にあぶり出すのは難しい。というのは、2009年3月期決算は、前述のようにお化粧のオンパレードであり、科目ごとの実態が把握できないからだ。

 ただ、当のJAL自身が、破たん効果の存在を認めており、「内部で試算したところ、460億円程度の破たん効果があった」(広報担当者)と話していることは参考になる。

 JALの定義に従えば、会社更生法の適用を受けて、帳簿に計上されている資産(主に航空機)の評価の洗い替えができたことに伴って、償却負担が軽減されたことが破たん効果ということになる。

 本来ならば、航空機の正札からリベート分を差し引いた金額を資産として計上すべきだったのに、リベートを売り上げに計上して当該年度の売り上げを水増しした結果、航空機の帳簿上の価値(簿価)が実態より大幅に高くなり、後年度に重い償却負担がつけ回されて、経営を圧迫していた。破たん処理に伴い、この帳簿上の資産価値を時価に洗い替えし、その結果として償却負担が軽くなったことを「破たん効果」と呼んでおり、そうした効果で経費が年間460億円程度も削減でき、V字回復に繋がったとされているわけだ。

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