暗礁に乗り上げた野田内閣。デフレ下に消費税増税では「財政再建」と「経済成長」は両立しない!
米・キャンプデービッドで開かれたG8サミットに参加した野田首相〔PHOTO〕gettyimages

 世界でも日本でも、政治の機能不全が目立っている。民主主義の危機と言ってもよいような状態である。

 ギリシアでは、選挙後の連立政権作りが失敗に終わり、再選挙の羽目に陥った。緊縮策に対する国民の反感は強く、再選挙では、反緊縮派がさらに票を伸ばす勢いだ。流石にEUから抜けようというギリシア人はあまりいないが、下手をすれば、通貨はユーロから離脱ということにもなりかねない。

 第二次大戦後、ヨーロッパの地に二度と戦争の惨禍を繰り返さないように、ヨーロッパを統合しようという動きが出た。近代ヨーロッパの戦争といえば、普仏戦争も第一次世界大戦も、ドイツとフランスとの間の戦であった。それは、両国国境にある石炭や鉄をめぐる争いであったので、第二次大戦後、まずは石炭鉄鋼共同体を作り、紛争の要因を取り除いたのである。その後、原子力についても共同体を形成した。

 しかし、どうしても統合できなかったのが軍隊である。EDC(欧州防衛共同体)は、何度も試みたが、国家主権の壁を越えることはできなかった。しかし、その後、EUは拡大と深化を繰り返していって、遂に通貨統合にまで至ったのである。ある意味では、通貨の統合は軍隊の統合よりも難しいかもしれない。加盟国の間で、金融政策や財政政策を調和させねばならないからである。ユーロが誕生したときに、私は本当に驚いたし、それを実現させたヨーロッパの人々の英知に感服したものである。

 イギリス(ポンド)やスウェーデン(クローネ)などはユーロを導入していないが、それは、ユーロの利点と問題点をよく吟味した上での決定であろう。

 ギリシアの政治的不安定は、ユーロの危機をも招きかねないという懸念から、世界の株価は下落し、円や日本の国債に買いが集まっている。それが円高をもたらし、日本の輸出にマイナスの効果をもたらす。ヨーロッパの苦悩は、他人ごとではないのである。

財政再建と経済成長の両立をはかる

 フランスでは、緊縮策に反対し、積極的な財政出動を主張するオランド氏が大統領に当選した。これからは、独仏枢軸をいかにして維持していくかが、最大の課題である。

 先週末には、アメリカのキャンプデービッドで、G8サミットが開かれた。ギリシアやフランスの選挙結果が影響したのであろうか、緊縮策一辺倒を改め、財政再建と経済成長の両立をはかることが宣言された。これは当然のことである。

 経済は人間が動かしている以上、人間が元気を失えば、経済は失速する。ケインズであれ、ハイエクであれ、どれか一つの政策だけで経済が蘇るわけではない。しかも、人間の心理に反する経済政策はうまくいかない。

 その最たるものが、デフレ下での消費税増税である。収入が減少しているときに増税をすれば、消費は冷え切る。日本のGDPは約500兆円であるが、その6割の300兆円は個人消費である。それが減退していけば、日本経済は確実に沈んでいく。まずはデフレを克服し、経済成長の実をあげることである。それなくしては、日本は再生しない。

 社会保障にカネがかかることは、皆よく理解している。だからこそ、日本全体で富を生み出さなければならない。したがって、海外への飛躍をはじめ日本企業が活躍できる体制を確立することが不可欠なのである。政府の不要な規制を緩和し、海外の企業と対等に渡り合える環境が不可欠である。イノベーションを促進する政策も重要だ。TPPやFTAを進めることは、そのためにも必要なのである。

 野田内閣は、消費税増税にまっしぐらである。しかし、特例公債法案は店晒しのままであり、今年の国家予算を支える国債発行の目途すら立っていないのが現状である。内閣として、政策の優先順位の付け方を間違えているのではないか。そのちぐはぐさが、外交における発信力の弱さにもつながっている。アメリカから帰国した野田首相は、少し冷静に日本を取り巻く状況を観察したほうがよいのではなかろうか。

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