偏差値30、40台の学生を一流のITエンジニアにする教育法
ゆとり教育の被害者を稼げる人材に変えよ!(その1)

2012年05月21日(月) 田村 耕太郎

数学なしでも一流ITエンジニアになれる

 この連載では今まで世界のエリート教育に重点を置いて紹介してきた。今回はボトムアップ教育について書いてみる。日本にはエリート教育が足りないことは口を酸っぱくして繰り返してきた。しかし、今や日本のボトムアップ教育も“ゆとり教育”のせいで崩壊の危機にある。ゆとり教育で“学力”と“知識”を失った日本の若者は被害者だ。日本の未来は若者が担っている。彼らの戦闘能力を底上げするしか希望はない。そこに果敢に挑戦し結果を出している事例を紹介する。

 入学当時は偏差値30台、40台だった学生(中には不登校児も少なくない)を、東大や東工大の学生を押しのけて、日本総研、ヤフー、日立ソフトエンジニアリング、リコーテクノシステム、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ、NTTデータ通信、ドワンゴといった日本トップクラスのIT企業に就職させるカリキュラム開発や教育体制の構築に取り組んできた芦田宏直氏(前・小山学園理事、現・人間環境大学副学長)、および芦田氏の下、実際に授業で学生を育ててきた芦澤昌彦氏(元・東京工科専門学校講師)に話を聞いた。

―ITエンジニアと言えば高度な数学が必須と考えてしまいます。数学ができなくても一流のITエンジニアになれるのですか?

「もちろん、3Dのゲームや機械制御には数学が必要です。しかし、現在のWebを中心としたITは、コンピュータ特有の二進数の世界から離れようとしています。その鍵を握っているのが、すでにソフトウェア開発において主流となっているオブジェクト指向という技術です。これは数理的な思考から極力離れて、概念と概念を組み合わせるようにしてソフトウェアを開発する技術です。いわゆるプログラム言語もその流れの中にあります。オブジェクト指向言語の代表格はJava。Android(アンドロイド)のアプリはJavaで書かれており、iPhoneのアプリもObjective-CというJavaに近縁の言語で書かれています。特殊な数理的知識が不要なのは、Javaを教えている私が文学部出身で哲学専攻という事実からもわかるとおりです。私の場合、コンピューターのプログラミングを学び始めたのが31歳、Javaの勉強を始めたのが、38歳です」

専門技術を積み上げられない大学教育

―芦澤先生の教授法では、偏差値30、40台の学生や不登校の学生など、一般的に「学力が低い」と言われる学生達を次々と一流のIT企業に就職させています。どんな方法があるのでしょうか。

「大切なことは、いまの大学教育も専門学校教育も、積み上げ型のカリキュラムになっていないということです」(芦田氏)




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。