日銀法改正に向けて、「独立性」「透明性」確保の前に、中央銀行としてのあり方をもう一度考えてみたい
日本銀行は実はジャスダック銘柄〔証券コード8301〕でもある〔PHOTO〕gettyimages

 以前にもここで記したが、デフレ脱却のための金融政策を機動的に実施するためにも日銀法の改正が急がれるし、また与野党ともにその機運は高まりつつある。野党自民党では、消費増税の審議に合わせて日銀法の改正もセットで行おうという動きすらあるようだ。
こうした中で筆者らが昨年立ち上げた民主党議連の「円高・欧州危機等対応研究会」では日銀法の改正試案を検討中であり、その内容について当コラムで示したところでもある。

 作業は詰めの段階で、残る論点についてはまた追って示していきたいが、ここで、そもそも論としての「日銀のあり方」について少し考えてみたい。

日銀の資本構成と利益処分は適切か

 デフレ脱却のための金融政策が今日まで多年にわたって十分でないことから、1997年の日銀法改正において主眼とされた「独立性」「透明性」の確保に疑義が生じていることが、今日の日銀法改正議論の動機ともなっている。したがって常に論点の中心となるのは「独立性」についてであり、政府との「目標」は一致させながらも、「手段」は独立性を担保するという当たり前の仕組みになっていない法的欠陥が指摘され、中央銀行の「結果責任」を問う、政府による総裁の「解任権」付与などが、法案の中心としてとらえられがちである。

 しかし、こうした論点のみならず、あらためて中央銀行のあり方そのものへの論考も必要ではないか。筆者はその点について、日銀の資本構成についても言及すべきではないかとの想いもあって、指摘しておきたいと思う。

 まず、国民の多くにあまり知られていない事実として、日銀は法人として現在ジャスダックに上場されており株式に準じて取引がなされている、ということがある。かつては東証一部(大証一部、名証の一部にも)に上場していたが昭和35年に上場廃止となった。その後店頭登録となり、今日ではジャスダック銘柄となっている(証券コード8301)。

 日銀の資本金1億円に対しての政府出資は55%で、残り45%は政府以外の所有である。政府以外の内訳は個人36.8%、金融機関2.3%、公共団体0.2%、証券会社0.1%、その他法人5.6%である(2010年3月末現在)。これら民間株主(正確には出資者)は経営には関与できないとされているものの、5%以内の配当権を有する。

 このような形態になったことの経緯を少し見てみよう。

 昭和17年の日本銀行法制定時には、国が55%を出資し、公的性格を明確にしている。しかし、昭和30年代に戦時立法である日本銀行法改正の機運が盛り上がり、35年に金融制度調査会の答申が出されることになる。そこでは、「日本銀行は資本金額の定めのない特殊法人とする」として、旧日本銀行法による民間、政府いずれの出資をも消却し、無資本法人化することが提言されている。(金融研究2000年9月「公法的観点からみた日本銀行の組織の法的性格と運営のあり方」)

 しかし、97年の日本銀行法改正に伴う審議会(金融制度調査会)の答申理由書では、資本構成については以下の通りとなっている。

〈  現在、日本銀行の資本金は1億円で、構成は、国が55%、民間が45%とされている。出資に対しては、出資証券が発行されることとされており、出資証券は証券市場で売買されている。日本銀行の資本金について、中央銀行研究会報告は、「当面現状を維持して差し支えない」としているが、現在の資本金のままで特に支障もないことから、本調査会においても、現状を維持することが適当と考える。  〉

 また、答申理由書の本文中に言及されている中央銀行研究会(官邸主催)の報告書(1996年)では、以下の通りである。

〈  「日本銀行の法的位置づけ・資本金」
日本銀行の法的位置づけは、現在、認可法人となっている。日本銀行が引き続き銀行業務を業務の中心とすること、また、金融政策の独立性を確保する上で支障がないということからも、現在の法的位置づけでよいと思われる。また、日本銀行の資本金については、その構成は、現在、国が55%、民間が45%となっており、当面現状を維持して差し支えない。  〉

 ざっとこのような経緯となるのだが、上記を見ても、「当面の現状維持」を「差支えがない」としているだけで、97年の改正時に本質的議論がなされた形跡はない。むしろ巷間言われているように短期間の議論だったため、現状追認となっているだけ、とも言えるのである。

 一方、筋論としては、中央銀行は通貨発行を独占的に行う国の機関であることは、論を俟たない。したがって、法人形態をとるのであれば国が100%保有すべき、との筋論も成り立つ。

 また、昭和35年の答申にあるような、資本金なしの特殊法人形式でもいいのかもしれない。根幹は、独占業務による利益である通貨発行益の処分であり、資本構成如何にかかわらず国に帰属するように維持することが重要なのである。

 確かに現状でも、利益処分は5%未満に限定されており、経営に関する議決権を持たない出資者の存在を心配する必要はないのかもしれないが、見直しにおいてあらためて、考え方の整理ぐらいはしてもいいのではないかと思う。

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