ゴールのためのビジネス経験則2
1.鈴木 満(鹿島アントラーズ 常務取締役兼 強化部長)
2.羽生 英之(東京ヴェルディ 代表取締役社長)

 限られた予算と時間、優れた人材の育成。サッカーチームには「組織」と「個人」による、あらゆるビジネスシーンのモデルが組み込まれている。そんなサッカーの世界における、マネージメントの極意!

前回の記事はこちらをご覧ください。

鈴木 満1957年生まれ。宮城県出身。住友金属工業(現・鹿島アントラーズ)でプレーし、引退後はコーチに転身。Jリーグ発足に際しては、当時JSL2部にいた鹿島のリーグ参入に尽力した。その後、強化部長として有能な選手を発掘し、タイトル獲得に寄与。現在も常務取締役兼強化部長としてチーム強化に勤しんでいる

鈴木 満
鹿島アントラーズ 常務取締役兼 強化部長

「受け継ぎしジーコの哲学」

ジーコがもたらした哲学
血色力と勝利への執着心

 リーグ創設からの20年で、鹿島アントラーズは燦然たる功績を残してきた。最多となるリーグ優勝7回を筆頭に天皇杯優勝4回、リーグカップ優勝4回と、数多くのタイトルを積み重ね、今やJリーグを代表するチームとして名を轟かしている。

 しかし、Jリーグ創設前のJSL(Jリーグの前身)時代は長らく2部に所属しており、お世辞にも強豪とは言えない弱小チームだった。その鹿島が、この20年でJリーグ屈指のクラブへと成長した背景には、ある男の哲学があった。直接、その男の言葉に触れ、意志を受け継いできた強化部長の鈴木満は語る。

「その誰かとは、もちろんジーコですよね。彼はまだ右も左も分からない我々に、プロの選手とはこういうものだ、フロントとはこういうものだということを示してくれました。我々にプロフェッショナリズムを教えてくれたんです」

 ブラジルから来たレジェンドは、鹿島にサッカークラブの哲学とプロとしてのスピリットを植え付けた。それは大きく分ければ2つあるという。

「ジーコの哲学を紐解けば、1つは結束力であり一体感ですよね。サッカーは11人でやる競技ですが、この人数では長いシーズンは戦えない。そのため30人ぐらいの選手が所属しているわけですが、彼らにスタッフも含めた50人程度が、同じ参画意識を持たなければならないのです。それともう1つは、勝利への執念。僕なりにジーコの哲学は大きくこの2つだと理解しています」

 いかにして結束力なり、勝利への執着心を全体に植え付けていくのか。組織をまとめる鈴木の仕事はそこにある。それも1シーズンだけ共通意識が生まれればいいというわけではない。コンスタントに結果を出していくには、長いスパンでの結束力が問われる。鈴木の言葉を借りれば、チーム力を維持し、さらに成長させていくには、「適正戦力」なるものがポイントになってくる。

「チーム編成を考える上で意識するのが適正戦力ですね。例えば所属している30人全員が、同じレベルにあればいいかというと、そうではない。試合に絡む、戦力となる選手は1年で20人程度だと考えています。その20人に対しても互いの競争意識が高まるような編成にしなければならない。全員がゲームをコントロールするような10番タイプではダメだし、サイドアタッカーでもダメ。ポジションや役割に応じた選手を獲得することもまた大事になってきます。

 ただ、ここで気をつけなければならないのが、バックアップを務める選手に力があって、その選手がベンチやベンチ外になってしまうと、チームの一体感に影響が出るということです。だからといって、主力の選手が絶対的な存在になってしまうと、競争意識が生まれないので、チームは活性化しませんよね。このバランスが難しいんです。

 そして残りの10人ですが、彼らは現状では試合には出られないかもしれませんが、将来的には現時点での主力に取って代わるような選手たちになります。彼らが成長することでチームは循環していく。それが適正戦力であり、チーム力を維持していくことになる。ほどよい競争とほどよい序列を作る。これを意識していますね」

 鹿島の選手たちは口々に言う。小笠原満男は本田泰人の背中を見て育ったと語れば、岩政大樹は大岩剛の姿勢に学んだと言う。それは自然と受け継がれ、今の若手は小笠原や岩政の背中を見て成長していく。

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