ドイツ
イスラムに異国情緒しか感じていないあなた! 「サラフィスト」と呼ばれる人たちを知っていますか?
4月14日、ベルリンのポツダム広場で無料のコーランを配布するイスラム教組織の男〔PHOTO〕gettyimages

 「サラフィスト」という言葉を聞いたのは、つい最近のことだ。ところが、その存在が、今、あっという間に大きな社会問題に膨れ上がりつつある。「サラフィスト」とは、イスラム原理派の中でも、ウルトラ過激派、「サラフィー主義者」のことで、彼らは、イスラム教の預言者、ムハンマドの時代、つまり、7世紀の初期イスラム世界に回帰することを目標としている。

 別に、サラフィストが何を信じて、どこに回帰しようが、それは自由だが、問題は、彼らが全世界を自分たちの原理で制覇しようと目論んでいることだ。

 サラフィストは、コーランを唯一の法典とみなしている。その他のいかなる価値観も、憲法も、宗教も認めない。つまり、早い話が、自分たちだけが正しく、他はすべて悪。そして、これが1番の問題なのだが、自分たちの主張を通すためには、暴力も辞さない。

 2006年にはアルカイダと統合した。連邦憲法擁護庁の長官によると、「サラフィストの全員がテロリストではないが、テロリストの全員がサラフィストであることは確か」なのだそうだ。

 イスラム過激派の脅威にさらされていないのは、世界中で日本だけではないか。だから日本人は、イスラムに対しては、異国情緒の他にあまり何も感じない。それに比して、ヨーロッパもアフリカも東南アジアも、そして、多民族を抱える中国もロシアも、イスラムの過激派勢力には常に悩まされてきたし、それどころか、ここ数年、その脅威は膨れ上がるばかりだ。

もはや信教の自由の範疇を逸脱している

 イスラム過激派の勢力は、私たちが思いもしないほどの速さで伸長している。彼らは武力闘争と並行して、別働隊を使って積極的な宣伝活動も行っている。

 4月には、サラフィストがイスラムの聖典、コーランを30万部、ドイツのあちこちの都市の歩行者天国で、無料で配り、大いに問題になった。コーラン自体が問題なのではない。テロを推進しているサラフィー主義者の組織が、コーランを使い、白昼堂々と信者の勧誘を行うことが問題になったのだ。そこには、「ドイツの法律など無視しよう」というメッセージが明確に見てとれる。これは、信教の自由の範囲を逸脱している。

 サラフィストのプロパガンダは、特にインターネット上で凄まじい。その結果ドイツでも、戦闘的な宗教メッセージに傾倒する若者が急増。彼らは、自分たちが権力を握ったなら、裏切りや姦通には石打の刑、窃盗には手を切り落とすといった刑を復活させると、本気で言っている。実際に、ソマリアでの石打の私刑の様子がユーチューブにも上がっている。気の弱い人は見ないほうがよい。

 次の"妻の十戒"も、サラフィストのサイトで見つけたものだ。

1.汝の美しさを夫の心を得るために使え
2.夫が帰宅したら、素晴らしい挨拶で、つまり、昼食を用意し、申し分なく着飾り、清潔でよい香りのする子供たちと共に迎えろ。
3.絹を身にまとい、アイラインを引き、夫のために歌え。
4.家の中では夫のために宝石を付け、美しい衣装をまとえ。
5.夫と冗談を言い、戯れろ。男は楽しげな女を求めている。
6.夫のしてくれる親切に常に感謝しろ。
7.夫との喧嘩を収めるために、自分に罪がなくとも謝れ。
8.常に夫に気に入ってもらえるよう努力しろ。夫は汝の天国へのカギである。
9.夫の言うことに耳を傾け、服従しろ!
10.夫婦関係を素晴らしいものにするため、アラーに祈れ。

 日本とドイツで暮らしている限り、これを世界に浸透させようというのは不可能だとしか思えないが、しかし、実際には、この価値観が猛威を振るっている国は、世界には結構多い。

 ドイツでもたまに、イスラム系の移民の家族で、親に隠れて恋人を作った娘や、姦通がばれた妻を、父や兄が殺してしまうという事件が起こる。もちろんドイツではれっきとした殺人罪になるが、トルコのような、イスラムの中ではかなり先進的な国でも、この「名誉のための殺人」は、つい最近まで情状酌量でうやむやにされていた。いずれにしても、女性は父親と夫に絶対服従を強いられる。こんなところに生まれてしまったら大変なことだった。

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