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インサイドレポート「ならず者」サダム・フセイン、ビン・ラディンは処刑したのに なぜアメリカは金正恩を捕獲しないのか

「あの憎たらしい顔に、一発かましてやりたい」---オバマ大統領は金正恩の顔を見て、内心そう思っていることだろう。アジアの小国に、なぜ世界最強の軍事力を誇るアメリカは翻弄され続けるのか。

残された「悪の枢軸国」

 アメリカのブッシュ大統領がイラク、イラン、北朝鮮の三国を「悪の枢軸国」と呼んだのは'02年のこと。この10年の間に、イラクはブッシュ政権によって倒され、イランはオバマ政権とにらみ合いをつづけ、いつ戦争状態に突入してもおかしくない状態となっている。

 翻って北朝鮮だけは無傷のままだ。核の力を背景に、「恫喝外交」を繰り返してきた北朝鮮。アメリカが手を出してこないのをいいことに、この国は世界一の「ならず者国家」と相成った。

 米朝合意を一方的に破棄してミサイル実験を実施したことは言うに及ばず、北朝鮮の度重なる挑発行為に、アメリカの怒りは頂点に達していることだろう。

「ここにきて、'04年にアメリカ人男性が北朝鮮に拉致されたのではないかという疑惑が持ち上がっている。これが本当であれば、米朝間に新たな亀裂が走ることになります」(外務省関係者)

 アメリカはこれまで、国際社会の批判など気にもせず、「目障りだ」と思った相手に対しては容赦ない攻撃を加えてきた。「大量破壊兵器を隠し持っている」と主張してイラクに戦争を仕掛け、穴蔵に潜んでいたサダム・フセインを捕獲し、アメリカ主導の裁判にかけて処刑したことしかり、「テロリストに正義の鉄槌を下す」として、パキスタンにあった隠れ家を攻撃し、ウサマ・ビン・ラディンを殺害したこともしかり。

 ならば、「これ以上ミサイル実験や核開発を進展させないためにも、北朝鮮に侵攻して金正恩を捕獲する」という計画がアメリカで持ち上がっても不思議ではない。しかし現在のところアメリカの中枢から「金正恩をひっ捕らえるために、北朝鮮を攻撃すべし」という声は聞こえてこない。なぜなのか。前出の外務省関係者が語る。

「オバマ政権にも、対北強硬派は存在しています。国防副長官を務めるアシュトン・カーター氏は過去に何度も『北朝鮮がミサイル実験を行う前に、ミサイル施設を先制攻撃によって破壊するべきだ』と主張してきました。それはいまも変わっていません。ですが、現在のところカーター氏の主張は現実味のある行動とは考えられていないのです」

 なぜアメリカは北朝鮮への攻撃を躊躇するのか。

 実はアメリカは朝鮮戦争休戦以後、少なくとも3度、北朝鮮への攻撃を試みたことがある。米議会調査局で長年にわたって北朝鮮情勢を調査してきた、ラリー・ニクシュ米戦略国際問題研究所上級研究員が説明する。

「1度目は'68年、北朝鮮がアメリカのスパイ船・プエブロ号を拿捕したとき、2度目は'76年に板門店で国連軍と北朝鮮軍の間で衝突が起きたとき。そして3度目が'94年、北朝鮮の核開発を止めるために、クリントン政権によって寧辺の核施設を空爆する計画が練られたときです。北朝鮮が核保有を公式に宣言するのは'06年ですから、いずれもそれ以前の話です」

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