金融・投資・マーケット
厚生年金基金の根本問題は手つかずのまま!厚労省の「企業年金は連合会で共同運用すれば大丈夫」はあまりに深い勘違い
厚生年金基金のハイリスクな運用を放置した厚生労働省は「運用」を分かっていない?

 厚生労働省は、AIJ問題の発生を受けて、中小の厚生年金基金の資金を、企業年金連合会に委託することで共同運用する方針を固めたという(『日本経済新聞』5月12日、朝刊)。このことを報ずる記事を見て、筆者は、厚生労働省のあまりに深い勘違いに、目が回りそうな気分になった。

 もっとも、この方針は、厚労省及び企業年金連合会関係者が、AIJ問題から逃げずに「彼らなりに」真摯に検討した、善意のアイデアなのだろうと推測できる。

 それは、こういうことだ。

 AIJ投資顧問による巨額運用損失と虚偽の報告の問題が起こって、当初、厚労省と被害に遭った年金基金は、これは悪徳投資顧問の問題で、自分たちは被害者だという立場のみを取りたがった。行政的には金融庁が悪いという言い分だ。

 しかし、AIJはもともと十二分に胡散臭い運用会社だったし、多くのまともな年金関係者は、安定した高利回りの実績を謳う(だからこそ怪しいのでもあるが)AIJ投資顧問を相手にしなかった。年金基金とはいえ運用のプロなら、AIJ投資顧問の実質的な詐欺の手口を見抜かないまでも、同社に資産を委託することはあり得ない。

 また、多くの厚生年金基金で、「運用が分かる」といえそうな担当者がいないなど、とても年金資金を運用できる体制ではないことが、この事件が切っ掛けで広く報道されるに至った。やはり、この点は問題だ。

 年金受託者の良心に従ってこの問題を見ると、こうした事実を認めるべきだと厚労省の年金関係者も考えたのだろう。

投資のあり方を改善して済む問題ではない

 ところで、こうした実態は、年金基金の監督官庁である厚労省は、もともとよく知っていたいたはずだ。新しく明らかになった事実ではさらさらない。遡ると、多数の(往時には千数百の)厚生年金基金という専門家なき奇妙な運用会社を制度として作り、認可・監督してきたのは厚労省だ。

 彼らは、こうした厚生年金基金に、国の厚生年金の資産まで持たせて、資金を膨らませて運用させてきた。さらには、こうした実態にもかかわらず、年金運用の規制緩和を推進してきたのも厚労省である。

 もちろん、大っぴらにそうは言っていないが、本件は、厚労省の企業年金行政が失敗且つ杜撰であったことを、厚労省の関係者が自ら認めた動かぬ証拠と解釈できる。それゆえに、見かけは地味だが壮挙なのである。

 また、AIJ問題に即していうなら、AIJ投資顧問が悪いのは当然だが、同時に、同社に運用委託した厚生年金基金もまた業務上の過失によって母体企業と加入員に損害を与えた「加害者」なのだと認めたことにもなるはずだ。あれが重大な過失でないと言い張るのは、「責任」という概念を解さない人だろう。

 しかし、この処方箋で、企業年金、特に今回問題になった厚生年金基金の問題が改善するとは思えない。そう。厚労省は問題としては最も肝心な事柄をスルーしたのだ。

 いわば「症状」の一つがAIJ事件に表れた企業年金の問題は、運用機関の評価方法や分散投資のあり方(本当は、基金に対する連合会の常務理事研修などで基本は教えているはずだが、教育に失敗し、それを放置してきたのだろう)を改善して済む問題ではない。

 厚生年金基金の問題の核心は、大きな積立不足を抱えた基金が多数あることと、制度設計上「予定利率」(運用で稼げると想定する利回り。これを下げると保険料を上げねばならない。典型的には5.5%!)が高すぎること、そして、こうした窮状にあってリスク負担能力のない基金が未だにリスクを取った運用を行っていることを厚労省が放置していることだ。

 はっきり言うと、相当数の厚生年金基金について(いわゆる「代行割れ」の基金は全て含む)、先ず、リスクを取った運用を止めるべきだし、厚生年金基金を解散した方がいい。

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