加藤典洋×内田樹 「この国の未来原発と橋下を語ろう」徹底討論 迷えるニッポンはどこへ行くのか

2012年05月24日(木) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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内田樹氏

内田 そのたとえ話は原発だけじゃなく、日本の戦後政策のあらゆる面に当てはまりますね。要するに「グランドデザイン」がないんです。温泉旅館によくあるじゃないですか、客が増えたからと建て増しし、風呂場が足りないから、トイレが足りないからとその場しのぎで建て増ししているうちに、醜悪で巨大な建物になってしまう。

 長期的な設計図がないままに、とりあえず「待ったなし」のニーズに応えているうちに日本もそうなっています。

加藤 まず、菅降ろし、次いで普天間、TPP、原発再稼働、消費税と、日本政府も次から次へと大問題を提起し、増築をしてきたわけです。でもそれらがどんなモンスターを隠してきたかが、問題でしょう。TPPは昨年11月のAPEC前に、一度タイムリミットが設定され大騒ぎしました。でも野田首相の参加表明後は話題になりません。とにかくすべてが一過性的、神経症的なんですね。

病気を自覚できない患者

内田 設計図というのはいわば「国家の額縁」です。大枠が決まっていれば、その中の空白を埋めてゆくうちに、しだいに格好がついてくる。でも、今の日本は額縁がない。その代わりにリミットがある。「待ったなしだ。もうあれこれ議論している暇はない」というタイムリミットを設定して、思考停止する。ステークホルダーの頭数を増やして、「これだけ大勢の人が関わってるから、今さら変えられない」で現状維持を押し付けてくる。「大きすぎてつぶせない」という言い方がありますけれど、こちらはいわば「スケールリミット」ですね。

加藤 そう、二つある。タイムリミットとスケールリミット。でも、だったらどうすればいいのか。内田さんはどう思いますか?

内田 どこでボタンをかけ違えたか、それを検証する必要があると思うんです。二種類のリミットで選択肢を絞り込んで、射程の広い発想をすることを制度的に禁止することを「リアリズム」と呼んで来たわけですから。

加藤 それで言うと、一つの分岐点は20年間で200兆円という原発災害の「大きな穴」の出現。これがいちばん大きい。あともう一つが、これまでの半世紀以上のツケである日米関係という「穴」です。

内田 僕もそれはまったく同感です。戦後アメリカの占領下で日本の統治システムがつくられたわけですが、当時の日本人には「これはアメリカから押しつけられたもので、いつか自分たちの手で作り直さなければ」という思いがあった。

 ところがその明治生まれの政治家や官僚たちが姿を消した1980年代くらいから、これは暫定的な制度に過ぎず、アメリカを押し戻して日本人的なシステムに作り直すべきだという発想をする人がいなくなってしまった。

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