スポーツ

読み切りレポート 菊池雄星も大石も伊藤も泥にまみれる
プロ野球「二軍」という人生劇場へようこそ

2012年05月31日(木) 週刊現代
週刊現代

 一球団の支配下選手登録枠は70人まで。公式戦出場枠、いわゆる「一軍」は28人に限られる。つまりプロ野球選手は、その半数以上が二軍選手。二軍で磨きをかけるのは「技術」だけではない---。

ここに長くいてはいけない

「悔しいですよ!あんなの打たれたら僕の一軍がまた遠のくじゃないですか」

 打撃練習の合間。西武の外野手・熊代聖人(23歳)のボヤキにしては大きな声が、室内練習場に響いた。

 前日に行われたソフトバンクとの公式戦。9回2死満塁から米野智人(30歳)が放った5年ぶりの本塁打は、「奇跡の逆転劇」としてスポーツ紙の紙面を飾っていた。

 一軍の本拠地・西武ドームに隣接する、西武第2球場。ライバルの活躍を素直に喜ぶ選手は、ここにはいない。

 行澤久隆・二軍監督が言う。

「プロとは、勝ち負けの世界に住んでいる人間のこと。ですから技術より何より気持ちが強くなけりゃ、一軍には上がれません」

 前夜のヒーロー・13年目の外野手・米野は、昨年の今頃まで捕手だった。この日吠えていた熊代もまた、昨年冬に「小学生以来」というスイッチヒッターに転向している。

 昨オフ、今治西高時代の同級生と7年の交際を実らせ結婚したばかりでもある。

「上で大暴れしたい!」

 さらに大きな声を発し、熊代は左のバッターボックスに向かった。

 西武の二軍でもがいているのは、熊代だけではない。

 '10年のドラフトで6球団が1位指名した大石達也(23歳)が、芝の禿げ上がったグラウンドの外野線を、繰り返し繰り返しダッシュしていく。その脇では、'09年のドラフトで同じく6球団が競合した菊池雄星(20歳)が、一球一球フォームを確かめながら、キャッチボールを行っている。

 時折声を交わし笑顔を見せる。二人のドラ1から、悲壮感は感じられない。

 さらにその奥では、エース・涌井秀章(25歳)が、二人の後輩を引き連れ、グラウンドに引かれた白線に沿ってインターバル走に励む。

 決して競走しているわけではない。それでもゴール地点では常に、涌井が先頭を走っていた。

 そのエースの姿を、菊池も大石も立ち止まって眺めている。

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