雑誌
巨弾特集 日本の軸は移った なぜ小沢でなく、橋下なのか--この時代の読み方
第1部 田中秀征×田﨑史郎
橋下にあって、小沢にないもの

 愛嬌のある小沢一郎—自民党ベテラン議員が橋下徹大阪市長をこう評した。未知数ゆえの過大評価もあるだろうが、政治はいま確かに橋下氏を中心に回り始めている。「橋下政局」の近未来を読む。

小沢の運命

田﨑 小沢一郎元代表に無罪判決が出ましたね。

田中 まあ、いろいろ言いたいことはあるけど、司法判断としては妥当だと受け止めています。

田﨑 無罪はある程度予想されたことでしたが、私はむしろ内容の厳しさに驚きました。小沢さんの法廷供述を「およそ信用できない」などと、判決文ではっきり言ってますからね。

田中 判決は、道義的、政治的責任はあるというメッセージを含んでいる。当然、小沢さんは党員資格停止が解除された時点で説明責任を果たさないといけない。

田﨑 とにもかくにも無罪となったことで今後の政局がどうなるかを考えてみたいんですが、このあと小沢さんがとるコースは2つですね。つまり新党結成か、代表選出馬かです。

 どちらを選ぶかは政治情勢しだいで、解散になれば第1のコースに行くしかないし、解散がなければ第2のコースもありうるでしょう。いずれにしても、いま50人とか70人とか、まとまった人数を動かせる政治家は小沢さんだけ。その意味で、小沢さんが今後の政局の大きなファクターになるのは間違いない。

田中 争点は言うまでもなく消費税増税法案の行方。小沢さんは増税に絶対反対の立場で国民の大半も増税反対ですが、小沢さんに国民の支持があるかというと、そうではない。増税には反対だが、小沢さんにも反対だという人が多い(笑)。消費税問題には二面性があって、政策論争の面と権力闘争の側面ですが、小沢さんの姿が大きくなると権力闘争の面が強まって、世論は戸惑いを感じるんですよ。

田﨑 過去の〝実績〟が豊富ですからね(笑)。

田中 そう。拒否反応を起こす人が多くなる。だから、増税を本気で阻止したいなら、小沢さんはあまり前に出ず、一歩引いたところで見守ったほうが大きな役割を果たせる。

田﨑 陰で闇将軍になられるのも困りますけどね。ただ、小沢一郎という政治家は、自分のやりたいことを明確にして、そこからいろいろな連携を生み出すという志向がありますから、それを考えると、今後の選択としては、やはり新党の可能性が高いと思う。国民の信頼を失った民主党の破れ傘の下で代表になっても、仕方ないでしょうから。

田中 おそらく小沢さんはすでにハラを決めていると思いますが、言わずもがなの発言で党の分裂を煽るような閣僚もいますね。安住淳財務大臣が小沢さんが増税反対を唱えていることについて、「党が正式に決めたことに対して真逆の反応をすれば、どうなるかくらい国会議員なら分かっているはず」と言ったでしょ。除名をチラつかせているんでしょうが、ああいうモノ言いに政治家はいちばん腹を立てるし、実は日々の政局というのは、政策や大義なんかじゃなくて、結構こんな言葉で動いたりする。ああいう不遜な発言は、政権にとって何のプラスにもなっていない。

田﨑 だいたい、ああいう原則論を持ち出すのは、自分たちがかなり追い込まれている証拠ですね。それに党の決定を持ち出すなら、そもそも民主党は総選挙のマニフェストでは消費増税に触れていないわけです。そういう国民との約束についてどう考えているのか。

田中 そのとおり。それを有権者は決して忘れない。ただ、事態がここまでくると、増税反対の民主党議員が小沢さんと無関係に行動するのは難しくなった。これは、相当に悩ましいね。

田﨑 さて、あらためて消費増税法案の今後の流れをみると、16日からの特別委員会で実質審議が始まり、これにおよそ1ヵ月。すると、衆議院本会議での採決は6月中旬か下旬、あるいは審議が難航すれば7月上旬になる。会期末は6月21日ですから、国会の会期延長は必至です。

 この衆議院通過段階で自民党の協力を得ていなければ、法案は成立しない。小沢さんが息を吹き返しましたから、与党だけで衆議院通過は難しくなった。だから、野田佳彦総理はなんとしても自民党の谷垣禎一総裁の協力を求めていかないといけない。

田中 それはそうなんですが、仮に民主と自民で話し合い解散に合意したとしても、法案が通るかどうかわかりませんよ。自民党から大量の造反が出る可能性がありますからね。

 民主党は小沢か反小沢かの縦割り構造ですけど、自民党はベテランと若手の横割りです。つまり、若手議員は選挙区と密着しているから消費税アップを望まない有権者の声を敏感に受けとめている一方、上層部は選挙区よりも霞が関と一体化しているので、両者の間には大きな開きがある。だから、いくら執行部が増税法案への賛成を決めても、世論を知る若手は従わないかもしれない。

 実際問題、話し合い解散で合意して法案を通した後に選挙をやったら、法案凍結派が圧勝すると思う。例えば、増税する前に10兆円の無駄を省け、それができなければ法案凍結だと。そういう主張をする政党が出てきたら、多くの有権者はそちらへ流れてしまう。

田﨑 しかしそうはいっても、実際の選挙は選挙技術に左右されます。いま300小選挙区のほとんどに候補者を立てられる力があるのは民主党と自民党。都市部はいまおっしゃったような流れになるかもしれませんが、全国的に見たら果たしてどうか。私の予想では第一党自民、第二党民主で、第三、第四が新党ですね。

田中 その可能性はもちろん否定しません。でも、短期的にはともかく、中期的には野田民主党と谷垣自民党、そして小沢グループの三すくみの流れになると思う。そしていざ選挙になると、第三勢力のなかの勢いのあるグループに、民主と自民からかなりの人数が流れる。それほど大きな展開の可能性がある。

 話し合い解散になれば、民主も自民も同じ増税推進派にしか見えないから、選挙戦にならないわけです。だから、増税凍結を訴える第三勢力に人も票も大挙して流れると思いますよ。

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