映画「テルマエ・ロマエ」のケロリンに学ぶ商売の工夫とマーケティングとは

  テルマエ・ロマエ、もう見ましたか!? ゴールデンウィークでは最も人気の映画だったようで、興行成績も非常に好調だそうです。もともと人気の漫画が原作で、映画はその原作に比較的忠実かつイメージを壊さない内容です。特に主演の阿部寛さんのまさに体を張った演技が何よりも楽しい。あんなに劇場内で笑いの絶えない映画も久しぶりでした。

 ローマの巨大な公共浴場の設計士のルシウス(阿部寛)がひょんなはずみで現代の日本に来て、その日本のお風呂文化に触発されてローマに戻って大活躍するという荒唐無稽な話ですが、まあ、それが非常にいろいろ楽しい。論より証拠でぜひ映画で見てください。

 その映画の中にケロリン桶が出てきます。銭湯やゴルフ場、旅館のお風呂などに行くとありますよね、ケロリン桶。黄色い桶に「ケロリン」と書いてあります。このケロリンがとても楽しい小ネタとして、テルマエ・ロマエで「出演」しています。

懐かしい少年時代の祖父との思い出

 ケロリンは今でも愛用者の多い痛み止め薬です。私は富山生まれなのでとても馴染みのある薬です。私の祖父は戦争前、小さな製薬メーカーの経営者でした。戦争で小さな工場が燃えてしまい、雇われ薬剤師として死ぬ直前まで働いていたのを記憶しています。

 祖父の家には富山の薬がたくさんあり、富山の置き薬の箱や中の薬がたくさん置いてありました。お客様へのプレゼントに使う紙風船もたくさん家にあり、祖父の家に行くとそれをむやみにたくさん膨らませて、祖母から大目玉を食らったというのも子供時代の思い出です。

 子供の時、このケロリンを何度か飲んだ(飲まされた)記憶があります。私が子供だったからか、その当時の薬は飲みやすさをあまり考えていなかったのか、とても飲むのに苦労をした覚えがあります。大学の時にカフェオレにシナモンをたくさんぶち込んで飲んだ時に思い出したのが、子供のころに飲んだケロリンの味でした。調べてみると桂皮(シナモン)がかなり入っているのですね。

 なんで日本中のお風呂にこのケロリン桶が入っているのか?これは現在で言う「バナー広告」そのものです。今では銭湯ではなく家庭の内風呂が当たり前になっていますが、銭湯で風呂に入るのが当たり前だった時代には否が応にも「ケロリン」が目に入ります。大変な宣伝効果です。テルマエ・ロマエでもローマから日本の銭湯に迷い込んだルシウスはすぐにこの「ケロリン桶」に注目をすることになります。

ケロリン桶も大活躍する映画「テルマエ・ロマエ」は全国東宝系にて公開中   ©2012『テルマエ・ロマエ』製作委員会

 ケロリンは「内外薬品」の商品で、内外薬品は100年以上の歴史のある富山の会社です。富山では江戸時代から、有名な「置き薬」という手法で、「富山の薬売り」という独特の商売を始めました。富山藩が重点産業として売薬を奨励したことも薬売りが発展した大きな背景です。それは家庭にそれぞれ薬の箱を無料で置き、各家庭で使った分だけあとでその分の代金をいただき、薬を補充するという「先用後利」(せんようこうり)という商売の手法でした。ケロリンもそのような置き薬の中の人気商品として、全国に販売をされていくわけです。

 そもそも「先用後利」というのも商売としては今でも生きている普遍的な手法かもしれません。まず使ってもらって信用をしてもらい、それから少しずつ資金回収をして永続的なビジネスを顧客との関係で構築をしていくということですから。

 内外薬品のHP上の「メデシン・ロードー薬の道」によれば、ケロリンは痛みが「ケロって」治るということから作られた名前だそうです。効用と名前が連動して忘れにくかったという意味で、ネーミングがよかったことも普及に大きな要素になったのは間違いありません。また昭和に入り、ボクシングや野球が日本で人気が出るにつれて、スタジアムに大きなケロリンの垂れ幕を掲げて、知名度をあげていったということですから、広告宣伝にそもそも強い力があった会社のようです。

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