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連続トップインタビュー 必要なのは情報ではなく、たったひとつの確信です「うまくいってる」会社の社長たち12人が
そのヒントを次々に話す(下)

 いい時も悪い時も、次の一手を常に考える。肝が据わっているから、決断に迷いがない。だからどんな時代も、「一番輝いていた時代」にしてしまう。生き様を語るように、経営の極意を話してくれた。

全部勝たない方がいい

タムロン
小野守男(おの もりお)
2勝1敗でいい
'48年生まれ。聖橋高校卒業後、自動車部品会社を経て'74年にタムロン入社、'02年より現職。タムロンはレンズ専業メーカー。売上高585億円('11年12月期)、従業員数6005名('11年12月現在)。タイの洪水に見舞われた'11年12月期も増収増益

 せっかく稼いだカネは超円高で吹き飛び、海外に打って出れば資本規模がケタ違いな中国・韓国企業にボロ負けする。かといって国内に止まれば急激な人口減少で市場縮小が確実で、もはや生き残る術はない。

 そう嘆く日本企業が多い中で、最悪な外部環境をものともせずに、稼ぎまくっている企業がある。前号ではそんな絶好調企業の社長5人が儲けるヒントを教えてくれたが、今回は続けてさらに7社の社長たちが登場、経営の極意を語り尽くした。

「海外に出て行って成功する秘訣って、まずは、現地法人のトップをその国の人に任せることですよ」

 そう語るのは、埼玉県さいたま市に本社を置くタムロンの小野守男社長(64歳)。低価格競争の泥沼に落ちたカメラ業界に身を置きながら、レンズ専業メーカーとして国内外で数々のヒット商品を飛ばし、'11年12月期も増収増益を達成した絶好調企業だ。

 景気低迷が続く欧州でも同社のレンズは売り上げを伸ばしている。海外ビジネス成功の秘訣をこう続ける。

「海外法人なのに日本人がいつもトップだと、現地社員は頑張っても社長になれないと思って、やる気が起きませんよね。だから私が社長になってからは海外現地法人のトップはその国の人にやらせることにした。フランスでは日本人やドイツ人がトップのときは赤字だったのに、フランス人に変えた途端に黒字になった。いままでは言われたことをやっているだけの集団が、『上に行く』という意思を持ったことで会社全体に勢いが生まれたわけです」

 ポジションを与えるだけではない。こんな会話で社員の心を奮起させるのが〝小野流〟だ。

「フランスの20代の社員が『ミスターオノ、私もいつか社長になれるのか』って聞いてきたから、『考えてもみなよ。彼(フランス現地法人のトップ)はもう50代でしょ。あと10年もしたらリタイアするから、君たちの代になるんだ』と言った。そうしたら、いまその社員がNo.1の営業成績を出しています(笑)。〝目指す力〟というのはものすごく大きい」

 小野社長は高校卒業後に車のワイパーを作る会社で働き、26歳のときに職安で見つけたタムロンへ転職、30歳で役員になるというスピード出世を遂げた。異色の経歴の持ち主であるからか、氏の〝人心掌握術〟には独特のものが多い。「営業の言うことを聞かない部署の責任者を営業に飛ばす」というのもその一つ。

「工場部門や生産部門って、自分たちがモノ作りを支えている意識が強く、気を抜いていると社内で力を持ってしまう。それで営業が先方から案件を持ってきても、『納期が厳しすぎてそんなのできない』などと突っぱねるようになる。では、できないというならお前が取引先に行って断ってみろ、と。言うことを聞かない人間を営業部門に飛ばすことにしたんです」

 もちろん営業に異動してみると、取引先に対して簡単に「できません」などと断れないとわかる。

「それに誰しもペコペコ頭を下げるのは嫌でしょ。そのうち飛ばされた人が何人も出てくると、みんな自分が異動させられると思って、営業の言うことを聞くようになった。効果抜群ですよ(笑)。お客様に言われたことはなんでもやる。それがこの時代にあって、うちの強さになっているのかもしれません」

 だからといって、社員に対してむやみに成長や拡大ばかりを求めているわけではない。座右の銘は「2勝1敗」。その真意をこう説く。

「背伸びをしすぎないという意味です。だって全勝を目指すと、必ずどこかで無理をして、社内で隠し事ができたり、不祥事のもとを作っちゃったりする。市場全体が落ち込むときはあるから、そのときは『ごめんなさい』『来年はがんばるから』と素直に言えばいい。1敗しても2勝しているということは、前に進んでいる。それで十分ですよ」

ナブテスコ
小谷和朗(こたに かずあき)
利益なき値下げはしない
'51年生まれ。関西学院大学卒業後、'74年に帝人製機(現・ナブテスコ)入社、'11年より現職。ナブテスコは制御機器メーカー。売上高1693億円('11年3月期)、従業員数4057名('11年3月現在)。'12年3月期は2期連続で過去最高益を更新する見通し

 ナブテスコ(東京都千代田区)も、こんな時代にあって世界を股にかけて大活躍している会社だ。同社の製品ラインナップを見ると、これほどまでかというほど多くの高シェア製品を抱えていることに驚かされる。

 例を挙げればレトルト食品用充填包装機の国内シェアが約85%、鉄道用ドア開閉装置が同約70%、船用エンジン遠隔制御装置が同約60%・・・・・・。ほかにも、産業用ロボットの〝関節〟として使われる精密減速機の世界シェアは約60%、パワーショベル用走行モーターは同約30%といった具合だ。

 ボーイング、中国高速鉄道など世界の超一流企業に製品を納入する実績から、2期連続で過去最高益を更新する見通し。小谷和朗社長(60歳)に強さの理由を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「弊社と同じ性能で低価格のものが出てきて、お客様が他社に切り替えられることがあります。ただその際に『他社に乗り換えるのがいやなら値段を下げろ』と言われても、うちは断ることにしているんです。なぜか? 赤字になるのに売り上げを維持しても意味がない。利益があるから税金を払えるし、株主にも配当が払えるのであって、利益がなければ経営者は何もしていないと同じだからです」

 新規事業にチャレンジするためにも、他の部分で確実に利益を出しておくことは不可欠。だからこそ、利益を出すことに対して「ものすごい執念を燃やしている」と小谷社長は言う。

「先輩たちが開発した商品だからという理由で儲からないのに作り続けて、赤字を垂れ流している企業は少なくない。でも、うちはそういうことは絶対にやりません」

 利益に対してと同様、コストに対する考え方もオリジナル。世界のマーケットで価格競争に敗れている日本企業はいま、安価な労働力を求めて海外に次々と工場を移転。ナブテスコも国内だけでなく、欧州、アメリカ、アジアなど海外に多くの工場を持つが、その理由は「コストが安いから」ではないという。安易に海外移転すると痛い目にあうというが、どういうことか。

「弊社の場合、製造コストを下げるために海外に工場を作ったことは一度もありません。そんな考えでやっても、経営上でいいことはひとつもないからです。というのも、いくら賃金が安い場所に工場を作っても、毎年賃金は上昇していくため、いつかはコストが高くなる。海外で作っていても、同じ商品ばかり作っていたら取引先は毎年値下げを求めてくる。そうこうしているうちに、すぐにコストと儲けの幅が一緒になってしまい、意味がなくなる。そんないたちごっこを続けても将来はないんです」

 社員に対しては、「今の製品は2年しか持たない。その先はどうなっているかわからない」と口酸っぱく唱え続ける。「明日から仕事がなくなるかもしれない」という危機感から、新たな儲け頭を探し続ける。成長しても慢心がない。その延長線上に、利益がついて来たといえるだろう。

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