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緊急インタビュー石原慎太郎[東京都知事]「尖閣を国が買うなら、倍額で売ってやる」
荒い波に打たれる尖閣諸島の島々。行政区分では、沖縄県石垣市字登野城に位置し、総面積は5.56km2になる

聞き手|金森和行(政治ジャーナリスト)

石原氏は「東京都が尖閣諸島を買わなきゃならないなんて、変な話なんだよ、本当は」と語った(4月23日)

「シナ側が350億円提示?売り渡すわけにはいかない」「橋下さんとは組んでいきますよ。中央集権をぶっ壊す」---地権者との交渉の舞台裏から政府への怒り、「石原・橋下連合」まで語った!

「あんまり騒がんでくれよ。どうせ、すぐにみんな冷めるんだから(笑)」

 時の人の第一声からは、壮大なプロジェクトを仕掛けた自信と、それでもこの国の凋落を止められまいというあきらめの両方がうかがえた---。

 日本時間の4月17日未明、出張先のワシントンで「東京都が尖閣諸島を買う」とぶち上げた石原慎太郎都知事(79)は、それから1週間後の23日、本誌の独占インタビューに応じた。なぜ、〝尖閣買い取り〟に踏み切ったのかを問うと、舌鋒は民主党政権の体たらくを鋭く突いた。

「尖閣諸島で中国の漁船が海上保安庁の船に体当たりして、船長が捕まったでしょ('10年9月)。あの時、中国人の船長を民主党政権はあっさり釈放してしまった。それに怒っている保安庁や石垣島の関係者たちに話を聞いたら、ひどい話なんだ。シナの要人がすぐに船長を引き取りに来るんだが、特別機で夜中の2時に石垣島の空港に来て、無理に飛行場を開けさせてね。払うべき空港使用料もびた一文払っていない。当時の仙谷(由人)官房長官が『那覇地検の判断で釈放した』なんて発言したが、一検事の判断で空港を開けられるかね?外務省、つまり民主党政府のさしがねなんですよ」

 石原氏は返す刀で自民党も斬った。

「私は自民党の谷垣(禎一総裁)に言ったんだ。『民主党にも尖閣の漁船の一件は許せないという奴はいるんだから、超党派で尖閣に行ったらどうだ』と。『なるほど。委員会で諮ります』って答えたけど、半年経っても一向に行く気配がない。理由を聞いたら、理事会で決めたのに国会議員が国政調査権にのっとって尖閣に行くというのに海上保安庁が船を出さないだと。ならば、船は東京都が貸してやるよ。シナに対する政治家の腰の退け方は、お話にならないよ。国が当てにならないのなら、都が買うしかない。それだけのこと」

尖閣諸島を所有する栗原國起氏の実弟・弘行氏が、石原都知事と売買交渉に至った経緯について説明した

 石原氏の交渉相手は、尖閣諸島の5島のうち魚釣島、北小島、南小島を所有する栗原國起氏だ。國起氏の実弟である弘行氏は「事前に石原さんから連絡はありませんでしたが、ワシントンで発表するのでは、と思ってはいました」と話す。弘行氏によれば、本格交渉の開始は、やはり漁船衝突事件が起きた頃だった。

「さかのぼれば、石原さんは青嵐会(注)にいた頃から尖閣を買いたいと言ってきているんです。100人以上の議員全員が出資するので購入したいと話していました。ただ兄は、議員個人ではなく国や自治体に渡すという発想しかなかった。その時点でお断りしてから兄はブレず、また石原さんも終始一貫、『なんとか譲ってください』と主張してこられた」

 石原氏の口ぶりからは、栗原氏との交渉の難易度の高さがうかがえた。

「安倍晋三が首相だった時も、地権者と交渉をして、撥ねつけられたようだね。地権者の弟の弘行さんによると、シナが背景にあると思しき者が『350億円で買いたい』と言ったんですって?バカ言っちゃいけない。石油や天然ガスといった地下資源が豊富に眠るあの島を、外国がそんなに安く買えるものではありませんよ(笑)。都の交渉の中で350億円なんて馬鹿げた金額は提示されていません。国を守る行為として地権者が認めた話なんだから」

 弘行氏が語ったとおり、石原氏と尖閣諸島の関わりは古く、'78(昭和53)年、右翼団体の「日本青年社」が魚釣島に設置した灯台を巡る一件も、石原氏に「国に尖閣を任せられない」と思わせた一因になっている。石原氏は語気を強めた。

「灯台を作った人々に漁民は感謝しているんですよ。作っている最中に日本青年社の石垣の支部長は過労で亡くなってもいる。私も写真を見て本当に立派なので、海上保安庁に正式に海図に載せてほしいと頼んだんだが、載せないんだよ。外務省が『時期尚早だ』とか圧力をかけてね」

 '05年に当時の小泉純一郎首相が、灯台を国有財産だと認めるまでの約30年間、灯台は海図にも記載されず、〝ないもの〟として扱われた。石原氏が続けた。

「今みたいに船にGPSがついていない時代なんですよ。発光物が海図に記載されていないと荒海を航海するのに危険だから、海図に正式に載せろと主張しても、外務省はシナとのゴタゴタを避けることを優先した。彼らにとって、日本の漁民の生命なんかまったく関係ないんですよ」

(注)自民党のタカ派の若手議員らで1973年に結成された政策集団
 

 弘行氏は本誌に、「売買契約はまだだが、都なら売却してもいいという基本合意ができている」と明言したが、「都が南海の小島を手に入れて何に使うのか」、「都税を使うべきなのか」という批判は消えない。石原氏は、こう展望を語った。

「島の利用方法? 700頭にも増えてしまった山羊の除去や、新しい漁礁の創設、特別種調査、みんな都下に離島でやってきた経験もあるのでね。昔、ダイビングのついでに尖閣の島に行ったことがあるが、かなり峻険な島でね。船が近づけるのは、日本青年社が作った灯台の近くだけ。国が整備すべきなんだがね。名誉回復のつもりで国に万が一、買う気が起きたのなら、都が購入した価格の倍額でお売りしますよ(笑)」

 しかし、石原氏の〝申し出〟に国が乗ることはなさそうだ。石原氏のワシントンでの爆弾発言の直後こそ、「必要なら」と国有化を示唆した藤村修官房長官(62)も、すっかりトーンダウン。野田佳彦首相(54)と直談判する構えを見せた石原氏に対し、「両トップがお話をするレベルではまったくない」と事態を矮小化するのに必死だ。石原氏自身も、他の用件で野田首相と会談はするが、「国は絶対買わないね」とオチを見越している。

 石原氏の尖閣発言は、身内にも波紋を呼んだようだ。石原氏の長男で自民党幹事長の石原伸晃氏(55)は、上海の大学で講演を予定していたが、大学側が難色を示したことで訪中延期となった。父としては、いかなる思いを抱いているのか。

「今度、防衛省の補佐官に元陸上自衛隊員の志方俊之さん(帝京大学教授)がなったけれど、彼にこんな話を聞いたことがある。自衛隊のある幹部や彼自身も中国に行って、向こうの軍の幹部と防衛政策について議論し、徹底的に負かしたことがあるそうだ。それで苦笑いしながらの乾杯となり、晩餐会を開いてもらったんだが、帰国すると、とんでもない病気になって、死ぬほど苦しんだそうだ。原因は不明だよ。ただ、シナ4000年の歴史の中で、暗殺や毒殺はしょっちゅう登場する手口だが(笑)。伸晃も行かなくてよかったんじゃないか。むしろ上海の大学が、自国の馬鹿な奴が馬鹿なことしでかしたら困るという良識を働かせて断ってきたようだな」

松下政経塾の塾長になりたい

大阪市の橋下徹市長は、尖閣諸島お買い上げについて「石原知事にしかできないこと」と大絶賛(4月23日)

 尖閣諸島にまつわる石原氏の動向ばかりが注目されるが、もう一つの懸案事項「石原新党」の実現可能性からも目が離せない。4月12日に「5月に20人規模で結党」と産経新聞に報じられた石原氏は、「一回、白紙に戻す」と言い残して、ワシントンへと飛び立った。新党の実現が遠ざかれば、国民新党代表の座を追われ、〝浪人〟の身である盟友・亀井静香氏(75)の政界での立ち位置は危うい。

「私の知らないところでいろいろな人がベラベラしゃべってしまうんでね(笑)。ある筋から聞いたところ、小沢一郎(元民主党代表)とも連携するなんて話をしているそうだ。それは御免こうむるからね。一回仕切り直そうと」

 だからと言って、「石原新党」の現実味が消えたわけではない。石原氏がカウンターパートと決めているのは、亀井氏ではなく、大阪市長の橋下徹氏(42)だろうと、多くの政界関係者が見ている。

「橋下さんとはこれからも組んでいきますよ。東京、大阪、河村たかし(名古屋市長)がいる愛知・・・。私たちは中央集権をぶっ壊そうとしてるんですから。この連携が衆院選にどんな影響を及ぼすのかは分からないが、橋下君は大阪維新の会の政治塾に2000人を集めた。小選挙区のせいで市会議員になれないような奴が国会議員になってしまう時代だから、ちゃんとした風が吹けば、小選挙区でも通るかもしれない。たちあがれ日本の平沼(赳夫)君が研修会を開いていて、真面目な研修生を集めている。平沼君に『橋下君と協力したらいいじゃないか』と言ったこともあります。

 昔、生まれて初めて〝売り込み〟をしたことがあるんですよ。親しかった松下電器の会長だった松下正治さんに『松下政経塾の塾長にしてほしい』とお願いしたことがあるんです。鉄鋼労連の会長だった宮田義二さんが退任時期を迎えていた頃でね。実現しませんでしたが、もしもあの時、塾長になっていたら、違った政治の世界が開けたかもしれない。ぺラペラ口ばかりの政治家でなく、国家観を持った人間を育てられたかもしれない。そう思うことがあるんですよ。でも、もう歳ですな(笑)」

 尖閣諸島を買う---。実現可能性はおいても、石原氏の発想に圧倒された。〝老い〟の演出に惑わされず、次の一手を注視すべき数少ない政治家である。

〔PHOTO〕小檜山毅彦 山本皓一 橋本 昇 鬼怒川 毅

「フライデー」2012年5月11・18日号より

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