FOOTBALL STANDARD

二宮寿朗「風間八宏が示すニッポンの進むべき道」

2012年05月09日(水) 二宮 寿朗

「もう欧州から学ぶ時代は終わったと思う。日本人の特徴を誰が一番知っているかと言ったら日本人。サッカーにおける日本人のポテンシャルは高いし、選手たちはJリーグのなかで十分、うまくなれる。日本人(の指導者)だからこそ、日本のサッカーというものをつくっていけるんだと俺は思うよ」

 言葉の主は川崎フロンターレ・風間八宏監督である。

ミーティングなしが“風間流”

 筑波大蹴球部の指揮官時代に何度も取材させてもらったが、指導者の立場から風間監督はいつも“日本のポテンシャル”というものを強調していた。日本人はテクニックがあること、勤勉であること、そして集団性があること。それらのストロングポイントをどう活かすかが“風間サッカー”の根底にある。

 川崎の監督に就任したのは4月下旬。わずかな時間で“意識改革”は進んでいる。結果を並べてみると面白い。就任初戦のサンフレッチェ広島戦(4月28日)は1-4、2戦目のジュビロ磐田戦(5月3日)が4-3、続く名古屋グランパス戦(同6日)が3-2。普通の監督なら失点の多さに目を向けるだろうが、風間監督は自分たちの形でどう点を獲っていくかにこだわっている。

 自分たちでボールを長く保持するという発想が“風間サッカー”の大原則だ。逆に言えば、相手に保持されることを前提としない。筑波大時代にミーティングをやらなかったのもそのためである。疑問をぶつけると「相手の映像を見たって、相手がそのとおりに同じことをやるわけじゃないから」との答えが返ってきたことがある。相手を分析するミーティングではボールを相手に保持されていることが前提となる。つまり、風間サッカーにはない、その“前提”に重点を置いたミーティングは必要がないというわけだ。

 その方針は川崎でも変わらず、分析のためのミーティングはなし。「自分たちでボールを保持していく」という意識改革の促進剤にする意味も含まれているのだろう。

 改革というものは大きければ大きいほど最初からうまくはいかないものだ。風間フロンターレの場合は準備期間が少なかっただけになおさらとも言える。

 采配初戦の広島戦は攻撃でいつものように5トップをしいてくる相手に数的優位の場面をつくられ、ゴール前で猛攻を受け続けた。本職のボランチからセンターバック(CB)に回った稲本潤一もクロスに対する処理に戸惑いを見せていた。結局、全体的に消極的な横パスとミスが増えたことで失点を重ねてしまった。

 しかし、風間監督からすればそれも折り込み済み。稲本のCB起用は後ろからボールをつなげられる彼のパス能力の高さを優先した形であり、パスコースを消した後に相手をつぶす先導役としても適任と見たからだろう。

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