普及促進へ規制改革を閣議決定
太陽光、風力、地熱――脱原発依存へ103項目[再生エネ]

大分県九重町の九重地熱発電所(記事とは直接関係ありません)=11年8月5日

 政府は、太陽光や風力、地熱発電といった再生可能エネルギーの普及促進を目指し、103項目の規制改革を閣議決定した。即効性を重視し、法改正を待たずに政省令の改正や運用変更で対応できる対策が多く、一部は既に実施している。再生可能エネルギーは、原発の穴を埋める電源のひとつとして期待されている。「脱原発依存」を進めるためにも、迅速な制度改革が求められる。

 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発の事故を受け、日本のエネルギー政策は大きな転換を迫られている。

 事故前の10年6月に鳩山由紀夫政権がつくった現行の「エネルギー基本計画」は、原発依存度を当時の約3割から、30年までに5割強に高めることになっていた。水力を含めても9%にとどまっていた再生可能エネルギーは、21%まで増やすという目標だった。

 政府は現在、この計画の見直しを進めているが、原発依存度は高めるどころか、引き下げなければならない。そこで、その穴を埋めるエネルギーが必要になる。

 当面は、節電・省エネと天然ガスを中心にした火力発電に頼らざるを得ない。しかし、過度の節電は国民生活への影響が大きく、経済成長も阻害しかねない。

 火力発電は天然ガスや原油の価格高騰が懸念され、供給元である中東の政情不安といった地政学的なリスクも大きい。CO2排出量が多く、地球温暖化対策の面でも問題が残る。

 完全に自前の資源であり、地球温暖化対策にも資する再生可能エネルギーへの期待が、高まるわけだ。

 今回、閣議決定した内容は、「エネルギー・環境会議」と「行政刷新会議」が関係省庁と調整して策定した。再生可能エネルギーの関連で39項目、電力システム改革関連が38項目、省エネなどで26項目を挙げている。

 エネルギー・環境会議はこれらの中から28項目を重点項目として選び、改革を強力に推進するという。古川元久経済財政・国家戦略相は「今夏の電力需給にも寄与するだけでなく、中長期的には再生エネルギー関連産業などグリーン成長の基礎にもなる」と強調し、関係省庁に速やかな取り組みを求めている。

 中でも注目されるのが、地熱発電を巡る規制緩和だ。環境省が、国立・国定公園内での設置基準を緩和した。

 地熱発電は、地中深くまで井戸を掘削し、上がってくる蒸気でタービンを回して発電する仕組みだ。風力や太陽光など他の再生可能エネルギーに比べ出力が安定しており、一定量の電気を安定的に供給するベース電源として使えるのが強みとされる。

 日本は世界でも有数の火山国であり、地熱に恵まれている。産業技術総合研究所によると、地熱資源量は原発約20基分に相当する2347万キロワットで、世界3位に相当する。地熱発電機の世界シェアも、富士電機がトップで4割を占め、東芝、三菱重工を合わせると約7割にも達する。

 ところが、国内の発電設備容量は約53万キロワットで、世界8位にとどまる。潜在能力の2%余りしか活用していない計算だ。

 資源の約8割が国立公園などの特別保護地区・特別地域にあり、景観や生物多様性保護などの観点から、開発が規制されてきたことが、大きな原因だ。

 今回は、国立・国定公園内の発電施設設置について「1974年時点で建設工事が始まっていた6カ所に限定」としていた通知を廃止した。

国立公園内で垂直掘削認める

 環境省は2月に、環境保全に支障がない場合などに国立公園などの規制地域外から「傾斜掘削」する工法を認めたが、傾斜掘削はコストがかさむうえ、適当な場所が少なく、垂直掘削を求める声が出ていた。そこで今回は、関係者間の合意や自然環境への影響を最小限にとどめる技術の導入などを条件に、一部地域で垂直掘削も認めた。経済産業省によると、新たに約300万キロワットの開発が期待できるという。

 基準緩和を受け、早くも福島県の磐梯朝日国立公園など全国5カ所で開発計画が持ち上がっている。しかし、実現までの道のりは険しそうだ。

 環境省や経産省は地元での説明会を開き始めたが、環境保護団体からは「環境行政の後退で看過できない」などの批判がある。

 温泉と競合するとして、お湯枯れを懸念する温泉事業者の反対も根強い。08年には、群馬県嬬恋村が、地熱発電のための調査を計画したが、予定地が草津温泉の源泉から数キロしか離れていなかったため、温泉組合の猛反発を受け、調査に着手できなかったという例もある。

 確かに、いったん破壊された環境の回復には、巨額の費用と時間がかかる。拙速な開発で環境や温泉に深刻な影響が出れば、他地域の地熱開発の芽を摘むことにもなりかねない。

 枝野幸男経産相は、5カ所を「優良事例として進展するように取り組みたい」と述べた。政府と事業者が連携し、環境保護と地域振興の両立につながる成功モデルを目指す必要があるだろう。

 太陽光発電については、大規模発電所(メガソーラー)の普及に向け、敷地の緑地規制を撤廃する。現在は工場扱いのため、工場立地法に基づいて敷地の25%を緑地にする必要があり、コストを押し上げる要因になっていた。

 また、工場の屋根などに太陽光パネルを設置する際の建築確認手続きも撤廃し、屋根を発電事業者に貸す「屋根貸しビジネス」を後押しする。

 風力発電施設に関しては、高層ビル並みに厳しい構造審査を簡素化する。さらに小水力発電所建設時の許可手続きも簡素化。農業用水を使った発電は許可制から届け出制に切り替え、エネルギーの「地産・地消」化を進める。

 もっとも、規制緩和で再生可能エネルギーを増強しても課題は残る。天候などに左右され、発電量が不安定になるため、送電網への負担が大きいとして、電力各社が受け入れを制限しているからだ。

 電力各社の送電網を一体運用することで、送電網の規模を大きくすれば、より大量の再生可能エネルギーを受け入れ可能になる。そのためにも、「発送電分離」が求められることになる。

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