中央政界を揺さぶる「維新の会」
「民主党政権を倒す」橋下大阪市長が〝宣戦〟[大阪]

「維新政治塾開講式」であいさつする橋下徹・大阪維新の会代表=大阪市北区で3月24日

 関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼動を急ぐ政府を激しく批判し、野田政権を揺さぶる大阪市の橋下徹市長(42)。「民主党政権を倒すしかない」と次期衆院選での対決姿勢を強く打ち出している。そんな中、橋下氏が率いる「大阪維新の会」が衆院選の候補者発掘の場と位置付ける「維新政治塾」が3月末に開講。約2000人もの受講生を集めて国政進出に向けた準備をスタートさせ、中央政界に大きな衝撃を与えている。

 「霞が関・永田町だけでは日本を動かすのは土台無理。ネットワーク型・分権型の国家運営に作り直す。体制が変わるにはすさまじい戦争を経ないといけない。来るべき大戦(おおいくさ)に備えて、我々でしっかり準備していこう」

 3月24日の維新塾開講式で、維新代表の橋下氏は会場内にびっしりと並んだ受講生に呼び掛けた。

 維新幹事長の松井一郎・大阪府知事も「日本を変える運動を起こさないといけない。一緒に立ち上がってほしい」とボルテージを上げた。

 維新によると、受講生は3月21日時点で2023人。応募した3326人から書類選考で選ばれた。9割が男性で、山形県を除く46都道府県から集まり、シンガポールや香港など海外在住で近く帰国予定の日本人も参加。職業も、会社員、地方議員、現役官僚、医師、弁護士、公認会計士、行政書士など多彩だ。受講料は年12万円で、受講生は4半期分(3万円)を前払いしている。

 講師は、堺屋太一・元経済企画庁長官や中田宏・前横浜市長ら、維新と共同歩調を取る有識者や元政治家。このほか、維新幹部のつてで、北岡伸一・政策研究大学院大学教授(日本政治外交史)▽外交評論家の岡本行夫・元首相補佐官▽鈴木亘・学習院大教授(社会保障論)▽元財務省官僚の高橋洋一・嘉悦大教授▽元経済産業省官僚の原英史氏---らが講師に招かれている。

 維新は、次期衆院選の政権公約となる「維新八策」で、「大阪都構想」や道州制をはじめとする統治機構改革に加え、外交・安全保障、税制、社会保障制度についても盛り込み、6月をめどに成案をまとめる方針。しかし、こうした国家的課題は、地域政党である維新がいずれも取り組んだことのない「未知の領域」だ。国政の各課題に通じた専門家を講師に迎えることで、「維新八策」づくりに本腰を入れる「本気度」も見え隠れする。

 開講日は原則第2、第4土曜の月2回。受講生が多数のため、約500人ごとの4グループに分けて、大阪市内のホテルや貸し会議施設など計4カ所で同時並行で講義を行う。

 毎回の講義で課すリポートや、チューター(個別指導補助員)役の維新議員が判断する人物評価を基に、6月をめどに受講生を約800~1000人の「塾生」として選考。その後も選抜を重ね、「候補者予備軍」を確保する戦略だ。

 橋下氏は、政界に大きな発言力を持つ石原慎太郎・東京都知事とのパイプもフル活用し、維新塾の〝付加価値〟を高めている。4月4日には石原知事と大阪市内で会談し、維新塾の講師を務める確約を取り付けた。維新は、塾生選考後の6月以降、石原知事による講義を行う方向で調整している。石原知事は帰京後の会見でも「橋下君がやっている塾に非常に注目している。うまく化ければいいなと思ってますよ」と期待感を示した。

 大物政治家からのエールについて、維新幹部は「大阪と東京の首長が、そろって国の仕組みを変えようとしていることに意義がある」と話す。

次期衆院選で過半数を目指す

 維新塾をベースに、国政進出への準備を着々と整えつつ、政権批判や国政進出のトーンを強めている。

 松井氏は4月6日、「(次期衆院選で)過半数を目指すのは当然。国民との約束を実行するには過半数が必要だ」と述べ、維新として次期衆院選で政権獲得を目指す考えを表明。

 同月13日には、橋下氏が、大飯原発の再稼動を「妥当」と判断した民主党政権を「倒すしかない」と強く反発した。

 翌14日には、急きょ幹部を招集して役員会を開き、次期衆院選で民主党と全面対決する方針を決めた。これには、民主関係者も「橋下氏がぶち切れたって本当か?」と周辺に確認を求めるなど動揺が走った。

 一方、与野党を問わず、中央政界へのアプローチも頻繁に図っている。

 4月13日には、松井氏が東京都内で、自民党の安倍晋三元首相や、菅義偉元総務相と会談した。

 19日にも上京し、民主、自民、みんなの各党の中堅・若手国会議員と会談した。出席者は、自民党の松浪健太、西村康稔両衆院議員、民主党の松野頼久元官房副長官、みんなの党の小熊慎司参院議員ら約10人。出席者によると、松井氏は「民主も自民も今のまままなら元(の党勢)には戻らない」と両党の先行きに否定的な見解を示したという。

 松浪氏は大阪府内を地盤とし、道州制実現を唱えるなど維新と近い。西村氏は、09年の党総裁選で谷垣禎一総裁と争い、その後、松浪氏とともに、世代交代を目指すグループ「新世紀」を設立した。

 松野氏は鳩山由紀夫政権下で、官房副長官を務めたが、現政権とは距離がある。

 こうした民主、自民両党のそれぞれ執行部と距離のある議員との会談は、次期衆院選をにらみ、連携を模索する動きとして臆測を呼びそうだ。

 しかし、国政参加のための候補者をそろえるのは容易ではない。約2000人が集まる維新塾だが、「維新が何を考えているのか知りたかった。政治家志向、国政志向は全くのニュートラル」(男性39歳、地方公務員)、「政治家になるのは二の次。改革の手伝いをすることで維新を支えたい」(女性37歳、家事手伝い)など、受講生の志望動機はまちまちだ。

 さらに、数百万円を超えると予想される選挙費用は原則、自己負担とする方針で、立候補予定者はより限定される。

 毎日新聞の世論調査では、維新の国政進出に「期待する」とした人は62%に上る。公約となる「維新八策」は未完成で、1人の立候補予定者も決まっていない段階での期待値の高さは〝維新バブル〟とも言える。人気が先行する中、国政に携わるに足る政策提示と候補者の選定ができるのか。これからが正念場だ。

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