民主党の舵取りでは日本がアジアで孤立を深めるばかり
国益にかなう貿易自由化へ強いリーダーシップを!

TPP交渉参加の正式表明を見送った野田首相にアメリカは失望している?〔PHOTO〕gettyimages

 5月2日、台湾の国立政治大学現代日本研究センターが主催する「日台関係四十周年国際シンポジウム」が、台北で開催された。専門の研究者や外交官らが多数集まり熱心な議論が展開されたが、私も招かれてFTAやTPPをテーマとするセッションに参加した。

 このセッションは、次期台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使)に内定している外務次官の沈斯淳外交部次長(外務事務次官)が司会をつとめ、日台間でのFTA締結や、両者のTPP加盟について、私を含む4人のパネリストが見解を述べた。

 このシンポジウムの直前に、日米首脳会談が開かれたり、中国と韓国の間でFTA交渉入りが決まったりしたため、たいへん時宜にかなったテーマ設定となった。日米首脳会談では、野田首相はTPP交渉参加の正式表明を見送ったが、オバマ大統領は、自動車、保険、牛肉の3分野で日本が不公正だと指摘し、その改善を求めた。アメリカとしては、TPP交渉に関する野田政権の指導力の欠如に失望しているとの観測もある。

 自由貿易推進に関する日本の動きの鈍さに苛々しているのは、アメリカだけではなく、韓国も同様である。日本は、日中韓3ヵ国のFTA交渉を目指していたが、韓国は日本を外してまずは中国と交渉に入ることを決めたのである。

 それは、日本の対応があまりにも遅いからである。韓国は、すでにアメリカやEUとFTAを締結しており、貿易自由化では日本よりも先を行っている。もちろん、農業団体などの反発は強く、産業の構造改革など、国内での調整に大きな課題が残っていることは否めない。しかし、日本よりも強力なリーダーシップで自由化を進めてきたことは確かである。

 これに対して日本の出遅れが目立つ。日本は、一方ではアメリカが主導するTPPに参加しながら、他方では中国と韓国とのFTAを進めるというダブル戦略を描いていたが、下手をすると虻蜂取らずになりかねないのである。

 民主党政権は党内対立に明け暮れ、内政で手一杯で、とても外交までは手が回らない。外交で起死回生を図ろうとして訪米した野田首相の狙いは、実現したとは言いがたいようである。

日本の経済戦略は五里霧中

 日本でも、自由貿易の推進に関しては、農業団体をはじめ根強い反対があるが、貿易自由化は輸出を増やし、GDPを増やし、日本経済の力を強めていく。それが、過去の経験が示していることであり、TPPやFTAを推進させることこそが国益にかなう。先端産業で、韓国に追いつかれ、今や先を越されようとしている。国内の調整は政治の仕事である。反対派の存在を理由にして、貿易自由化に逆行することは許されない。

 現在、アジアでは、自由貿易を推進させるため、様々な経済連携構想が動いている。まず、2006年11月にアメリカが太平洋自由貿易構(FTAAP)想を提案して以来、その実現に向けて、APECに参加する21の国・地域で議論が展開されている。

 東アジアでは、このFTAAPにつながるような地域的な取り組みが盛んになっているが、ASEANプラス日中韓(ASEAN+3)は、東アジア自由貿易圏構想(EAFTA)を、ASEANプラス日中韓印豪NZ(ASEAN+6)は、東アジア包括的経済連携構想(CEPEA)を実現するように作業が進められている。

 そのような努力をさらに勇気づけるのが、TPPであり、2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヵ国で始められたTPPは、その後、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアを加えて9ヵ国に拡大した。そして、2011年11月には、日本、カナダ、メキシコが交渉参加に向けた協議を開始する意向を示した。フィリピンや台湾も参加の意向を示しており、中国もまた将来の参加の可能性は排除していない。

 2011年11月にハワイで行われたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、台湾の連戦首脳代表は、「台湾はこれまでTPPの進展を注視してきた」と述べた上で、台湾としては十分に準備をしてから参加表明すべきだという考えを示した。

 その直後の11月14日、馬英九総統は、TPP参加のために10年間で条件整備をすることを明らかにし、2012年1月の総統選挙で再選を果たした馬英九総統は、改めて「この10年以内にTPPに加入するよう図り、台湾を真に刷新するようにしていきたい」と述べている。馬英九総統は、台湾を世界のイノベーション・センターにし、アジア太平洋地域の貿易ハブとしようする壮大なヴィジョンを抱いているようである。

 今のところ、EAFTAに台湾を招いたり、日中韓FTAに台湾を参加させたりするといったような計画はないが、台湾にとっては、TPPをうまく活用することが、アジア太平洋の経済連携協定で取り残されないために重要だと考えているようである。

 馬英九政権になってから、台湾と中国の経済的連携が強化されており、それが、アジアの繁栄と平和にも貢献している。日本もまた、アジアで孤立しないような経済戦略を強力に推進しなければならない。 

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