ユーロ圏内のマネーフローの問題点=南北対立の激化も

 最近、ユーロ圏内のお金の動き=マネーフローが、ユーロ諸国間の新たな火種に発展することが懸念されているという。ギリシャやスペイン、ポルトガル、イタリアなど南欧諸国では金融機関の信用状態に懸念が出ており、それらの金融機関の預金の減少傾向に歯止めが掛かっていない。

そうした金融機関は、最終的に必要資金をECBからの借り入れに依存せざるを得ない。その結果、ECB内の資金決済システム上、ドイツなど北欧諸国の中央銀行の貸出債権が増加する一方で、南欧諸国の中央銀行の借り入れが増えていることになる。つまり、経済状態の良い北欧諸国から、信用状態の悪化が懸念される南欧諸国にお金が流れているのである。

今後、南欧諸国の借り入れが雪だるまのように拡大し、南欧諸国がその借金を返せなくなると、また違った格好で債務問題が顕在化することになる。依然、ユーロの先行きは不安定であることは間違いない。

資金偏在の背景と問題点

ユーロ圏の人々にとって、ギリシャ人であろうと、ポルトガル人であろうと、ユーロ圏内で預金する場合、いずれの国の金融機関に預けても通貨はユーロで同一だ。通貨が同時であれば、人々ができるだけ信用力の高い金融機関を選ぶのは当然だ。そうなると、どうしても信用力に懸念のある南欧諸国の銀行から、安心できるドイツなど北欧諸国の銀行に預金が移る。

ユーロ圏内のこうした資金フローは、最終的に大きな問題を醸成することも考えられる。一つは、ユーロ圏内の債権・債務の額が雪だるま式に拡大することだ。この資金フローが今後も続くと、結果的に、北欧諸国が持つ債権額は際限なく拡大する。彼らが持つ債権の相手は、ユーロ圏の決済システムを通して債務を負うのは南欧諸国の金融機関だ。

この債務額が返済不能なほど拡大してしまうと、最終的に北欧諸国の中央銀行が多額の損失を負うことになりかねない。ということは、債務再編を受けいれる相手は、今までの民間金融機関などから北欧諸国の中央銀行になることが考えられる。信用不安問題は一段と難しい局面に入ることも考えられる。

ユーロ圏の信用問題が政治的亀裂に発展の可能性
もう一つ懸念されるのは、ユーロ圏の信用不安問題が政治的な亀裂に発展する可能性だ。南欧諸国の金融機関の預金が北欧諸国の金融機関に流れている間、圏内の資金偏在に歯止めがかからない。むしろ資金の偏在傾向は一段と鮮明化するはずだ。その結果、北欧諸国の中央銀行は、南欧諸国の企業や人々に資金を融通する構図になる。ドイツやオランダなど、厳格な北欧諸国の国民がそれを長い間容認するだろうか。どこかで“堪忍袋の緒”が切れるような気がする。

ユーロ圏の信用不安の問題はユーロ諸国間の収支不均衡に行き着く。それを解決しなければ、いくらユーロ圏諸国の財政支出削減をルール化したとしても、それだけで大元の原因を片づけたことにならない。早期に、ユーロ諸国間の収支不均衡の問題にメスを入れて、ユーロ統一債の発行や財政統一に向けた検討を本格化することが必要になる。

ユーロ圏諸国の政治が根本的な解決に向けた努力をしないと、通貨ユーロや南欧諸国の国債は、いずれ、投機筋などのターゲットになる可能性は高いとみる。ということは、ユーロの先行きは、依然として不透明な要素を待ち構えているとみるべきだ。それが現実味を帯びてくると、世界の金融市場や実体経済にも大きなマイナス要因として作用するだろう。

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