規制緩和でバスの事故は増えたのか。大統領選で国民が緊縮財政にNOを選択したフランスと、増税でも解散もない日本国民の不幸
髙橋 洋一 プロフィール

 ゴールデン・ウィークのはじめ4月29日未明、関越道で起きた高速バス事故は7人の乗客が死亡する惨事となった。まったく痛ましい事故だ。亡くなった方のご冥福を祈るとともに、けがをされた方の一日も早い回復を祈りたい。

 事故原因は運転手の居眠りという。バスの運行会社は、事故を起こした運転手を日雇いとして受け入れるなど多数の法令違反があるようだ。

 一方で、規制緩和の弊害を上げる声もあるが、はっきりいえば、これだけ杜撰だと規制緩和以前の問題である。もちろん、規制緩和をするといっても安全管理で手を抜くことは許されない。その上で、今回の事故の背景に規制緩和が本当にあったのかどうかを調べてみよう。

規制緩和で事故は増加したのか

 バス事業は、乗合バスと貸切バスがある。今回は基本的に後者の話だ。交通分野での規制緩和は先進国に多くの例があるが、日本での取り組みは遅れ、1996年末の段階で当時の運輸省がようやく発表し、1998年度からの3ヵ年計画である第2次規制緩和推進計画に盛り込まれた。

貸切バスが先行して2000年2月に、乗合バスについては2002年2月に、需給調整規制の廃止等を内容とする改正道路運送法等が施行された(タクシーについても2002年2月に規制緩和された)。これらにより、事業の参入については、需給調整規制を前提とした免許制から、輸送の安全等に関する資格要件をチェックする許可制へ移行し、運賃制度についても、事業者の創意工夫により多様な運賃を設定することが可能となった。

 免許制と認可制は行政実務としてはあまり大差ない。認可制から登録制になると、行政裁量がなくなり、参入業者は飛躍的に増えるが、この意味で、この規制緩和はそれほどドラスチックなものでない。

貸切バスの規制緩和では新規参入がやや促進したが、乗合バスではもともと採算が悪かったのであまり新規参入はなかった。その結果、貸切バスでは料金値下げがあったが、乗合バスでは一部に競争促進の事例があるものの全体としてみれば価格の低下などはあまりない。

先行して規制緩和した貸切バスや遅れた乗合バスのいずれでも、懸念されるのが事故率の変化である。認可制であるので、法律上の建前としては安全基準に問題がある業者は事前チェックによって排除される。ところが、実際にそうなっているかどうかがポイントであり、もし安全基準をないがしろにする業者が参入したとすれば問題である。

二つの統計でチェックしてみても、規制緩和によって事故率が大きく増えたとはいえない。むしろ最近時点では事故率は低回傾向になっている。これから規制緩和によって事故が増加しているとはいえない。

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