高速バス事故の「事故の責任」は、あなたにも私にもあるかもしれない。ブラック企業を生み出す「ブラック消費者」という問題

2012年05月04日(金) 藤野 英人
upperline

 このデフレ経済に対応をするためには、消費者に対する価格を下げるための企業努力が必要になります。それは「消費者がのぞんでいるから」です。生産者や販売者は売値を安くしたい動機はあまりありません。売値を下げるのは厳しい経営努力が必要になるからです。売値を下げるには、相当なビジネスモデルの工夫が必要ですし、原価を下げるか、従業員やアルバイトに長時間労働をお願いするか、賃金を引き下げるか、従業員の数を減らすしかないわけです。

 私は大学で教えているので定期的に大学生と会う機会がたくさんあります。すると面白いのは大学1、2年生は話の仕方とか礼儀とかまったくなっていないのですが、3、4年生になるとそれなりにこなれてくるのですね。それはなぜかというと、アルバイトをする(せざるをえない)からです。

 家庭教師などもありますが、多くはサービス産業に流れていくわけです。飲食業などが特に多い。そうなると消費者の強烈さに驚きます。父や母に怒られたことはないのに、お客様はとても偉そうです。たかが居酒屋であっても、非常に高いサービスを求めています。お金は払いたくないけれどもサービス満点を求めているし、店側も激しい競争のためにそのために少しでもそのような期待に応えようと頑張ります。

 結果的に、そういう厳しい消費者に鍛えられて、学生たちは相当にたくましくなっていきます。自分の娘や息子には怒鳴れないオヤジがお客様という立場になると物凄く横柄な口で従業員に威張りちらします。読者の皆様もそのような人たちを日常見ませんか?

ブラック企業を生むバッドスパイラル

 従業員に過重労働を強いるという「ブラック企業」を生み出しているのは、それにも増しておそろしい「ブラック消費者」とはいえないでしょうか。より安くよりよいサービスを求めるのは賢い消費者の条件であります。しかし、それが度を超えてブラック消費者になってしまってないでしょうか。

 お客様は神様なのでしょうが、そのような客としての傲慢がその会社の従業員やアルバイトにしわ寄せを生んではいないでしょうか。タクシーの運転手のささいな口の利き方で腹を立てたりしていませんか。本来はサービスの受け手と出し手は平等なはずです。お客様に感謝をするのは商売人としては当たり前ですが、消費者としてもサービスの担い手にも感謝をするのが当然ではないかと思っています。

 よりよくてより安いサービスを。しかし、それが行き過ぎてしまい、過当な価格競争をするのはサービスの提供者だけでなく受け手の行動にも原因があります。多少価格が高くてもより安全性の高いものがウケるということになれば、サービスの提供者も安全性を高くし少しコストをかけて、その中で価格競争をしていくでしょう。

次ページ  社会全体で給料が下がっていく…
前へ 1 2 3 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事