[トライアスロン]
細田雄一<Vol.1>「金メダルへの1.7キロ」

日本人初の快挙

 初秋の横浜を世界のトップで疾走した。2011年9月19日、ITU(国際トライアスロン連合)世界選手権シリーズ横浜大会。バイクからのトランジッションを終え、残すは10キロのラン。シドニー五輪の金メダリストであるサイモン・ウィットフィールド(カナダ)、五輪前哨戦となる8月のロンドン大会で2位に入ったアレクサンドル・ブルカンコフ(ロシア)ら居並ぶ世界の強豪を押さえ、細田雄一は1位に躍り出た。

 世界との実力差がまだまだ大きいと言われる男子トライアスロン界において、ランで日本人がトップに立つのは史上初の快挙だった。
「先頭を走るのは気持ち良かったですね。声援に背中を押されました」

 地元開催というアドバンテージもあり、細田は快調に飛ばす。ランは山下公園からマリンタワーの前を折り返し、神奈川県庁をグルッと廻る1周2.5キロのコース。これを4周する。細田は後続に追いつかれるどころか、後ろを引き離しにかかった。沿道からは「細田、ガンバレ」の声がひっきりなしに飛んだ。

 最初のスイムではやや出遅れた。横浜湾内で750mを2周回するコース。スタートから約290m地点にある第1ブイを回るところで内を狙おうとしたところを集団から押し出された。1周目を終了した時点で先頭から21秒遅れ。しかし、慌てずトップとの差をほぼキープし、得意のバイクに入った。

 バイクコースは横浜の街中を駆け抜ける。山下公園からマリンタワーの前を折り返し、神奈川県庁の周りを廻って、みなとみらい地区へ。赤レンガ倉庫の側を通過して再び山下公園へ戻る5キロのコースだ。これを8周回する。

 カーブも多く、大きな折り返しが1周のうちに4度あり、道幅が狭い箇所もある。簡単にスピードアップはできない。先頭は大集団となり、細田もその前方のポジションをとった。
「テクニカルなコースなので体力が消耗しやすい。集団の真ん中に入ると落車などのトラブルに巻き込まれやすい。前に出て廻るか、後ろについて距離をとるかを考えていました」