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佐々木俊尚×牧野洋「『当事者の時代』とジャーナリズム」対談 最終回「アリアナ・ハフィントンがもっとも誇りに思っていることは何か」

佐々木: 少しビジネスの話を伺いたいのですが、アメリカではマスメディアがNPO化していくという流れが徐々に出てきていますよね。あれは「新聞なき時代」において、従来の権力監視や調査報道といったものを完全にカバーするものとして、今後一定の圏域を確保することになるんでしょうか?

牧野: 私自身の感触で言うと、実験の域を出ていないですね。プロパブリカが唯一気を吐いて、ピューリッツァー賞を2年連続で受賞したりはしていますが、現状を見る限りプロパブリカはどちらかというと例外ですね。

 民主主義とジャーナリズムの関係でいちばん重要なのはローカル・リポーティングで、市や区といったレベルの行政が何をやっているのかをチェックすることです。新聞がどんどん消えていくなかで、その穴埋めをするものとしてNPOがいくつか誕生しています。とはいえ、新聞が消えていくペースとNPOが誕生するペースを比較すると、前者のほうが早いんじゃないかな、という気がするわけです。

佐々木: NPOは経営として成り立っているんですか? プロパブリカって、なんであんなに資金が潤沢なんですかね。

牧野: あれはハーバート・サンドラーという銀行経営で巨富を成した人が、世の中のためにということで、サンドラー財団から毎年毎年日本円換算で10億円近く寄付し続ける形でスタートしたんです。だから、あそこで書かれた記事はタダで他メディアに提供するのが基本方針。

 お金を稼ぐというのではなくて、取材した成果を既存メディアに掲載してもらって世の中に広めることが重要だということでやっているんです。ビジネスモデルとしてはどこまで通用するものなのか。私はほかにカリフォルニア州サンディエゴの小さなNPOもいくつか取材しましたが、タダで配るという形でビジネスモデルが成り立つところは少ないです。プロパブリカと違い、何らかの形で掲載料を取るビジネスモデルが多いです。

佐々木: でも、お金をもらって記事を書くというやり方だと、ビジネスとして成り立たせるのは相当たいへんですよね。