どんな不況の中でもやり方しだいで、勝ち続けられる「うまくいってる」会社の社長たち12人がそのヒントを次々に話す(上)GW特大号スペシャル 連続トップインタビュー

2012年05月08日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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多数の賛成より、一人の絶賛

キングジム
宮本 彰

マーケティング調査はやらない

みやもと あきら/'54年生まれ。慶応大卒業後、キングジムに入社。総合企画室長などを経て'92年より現職。キングジムは文具大手。売上高248億円(2011年6月期)、従業員数436名(2011年6月現在)。ラベルプリンター『テプラ』、デジタルメモ『ポメラ』などのヒット商品を次々に生み出す開発型企業

 文具メーカーのキングジム(東京都千代田区)も、アイリスオーヤマと同じ「市場の開拓者」。モノが売れないこんな時代にあっても数多くのヒット商品を連発する絶好調企業だ。

 同社社長の宮本彰氏(57歳)に開発の極意を聞くと、意外な答えが返ってきた。

「極意なんてわかっていれば苦労はしないですよ。本当のことをいえば、わからないんです。そしてわからないからこそ、マーケティング調査をたくさんする企業が多いですが、うちはやらない。マーケティング調査をしてうまくいった例がないから、禁止にしました。調査をする時間もカネももったいないので、代わりに早く市場に出しちゃうんです。出せば市場が答えを教えてくれるので、そこから学ぶほうがよっぽどいい。

 もちろん新商品を出して失敗することだってあります。でもそれって、恥ずかしいことではない。失敗した商品は売れないから、店頭からすぐに撤去される。売れた商品は覚えてくれるけど、売れない商品はすぐに忘れられちゃうから全然問題ない(笑)」

 同社を象徴するヒット商品がデジタルメモ『ポメラ』だ。見た目は小型のノートパソコンのようだが、インターネットも電子メールもできない。文章を打てるということだけに特化した単機能電子商品で、パソコンやスマートフォンが多機能化を競う時代にあっては〝異端〟である。

 ところが発売を決定するや、予約数が初回出荷分の1万台をすぐに突破する大ヒット商品となった。宮本社長が開発秘話を明かす。

「うちでは毎月開く開発会議というのがあって、私や経営幹部が参加し、そこで承認した商品しか開発の許可が下りない。そしてポメラのときは参加した幹部の多くが『こんなの売れない』と言っていたんです。ただ、ある一人の役員が『絶対に欲しい』と絶賛した。だから私はGOサインを出したんです。

 実は過去の経験からいくと、10人中8~9人が『まあ、いいんじゃない』となんとなく褒める商品はまったく売れない。人の頭の中には『買い物リスト』があって、欲しいモノが順番に並んでいて、それをもとに消費していきます。ただ、使えるおカネには限界があるから、『まあいい』くらいでは、その買い物リストで順位の低い商品になってしまって、いつまで経っても買ってもらえない。だったら少ない人数でも強烈に欲しがってくれる商品のほうがいい、と。要するにうちはみんなに受け入れられる商品を作ろうとは思っていない。実際、うちの役員の中でポメラを使っているのは一人だけ。私も使っていません(笑)。でも10人中1人だったら、日本の人口が1億2000万人いて、1200万台のポテンシャルがあるのだからすごい市場になるわけです」

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