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どんな不況の中でもやり方しだいで、勝ち続けられる「うまくいってる」会社の社長たち12人がそのヒントを次々に話す(上)
GW特大号スペシャル 連続トップインタビュー

 元気のいい会社の社長は目が輝いている。経営の極意を隠そうともせず、明け透けに話してくれる。聞いてるだけで不況がウソのように感じる。こんな会社が増えれば、日本経済はきっと復活できる。

どんな時代でも利益を出す

アイリスオーヤマ
大山健太郎

競合を意識しないこと

おおやま けんたろう/'45年生まれ。大阪府立布施高校卒業後、'64年に父の後を継ぎ大山ブロー工業所(現アイリスオーヤマ)代表に就任。アイリスオーヤマは生活用品大手。売上高1000億円(2011年12月期)、従業員数2510名(2012年1月現在)。売り上げの約6割を新商品が占める市場創造型企業

 六重苦、七重苦とも言われる経済環境の下で、名だたる日本企業が青息吐息になっている。一方でそんな崖っぷちの状況の中でも、業績を伸ばしている絶好調企業がある。

 なぜ彼らは勝ち続けられるのか。その秘密を社長たちに聞いて回った。

「日本のメーカーって、電機メーカーは電機製品、自動車メーカーは自動車というふうに儲かる得意分野ばかりを作っていますよね。だから売れなくなると一気に経営が傾く。かつてはウチも人気商品に集中投資をしたものの不況が来て一気に在庫が溜まって、倒産しかかったことがある。オイル・ショックの時でしたが、これを機に発想を変えたんです。不況を前提にしたビジネスをやろう、と。

 そのためにやっているのはまず年間1000点以上の新商品を出し続けること。すべてがヒットすることはないけれど、これだけ商品があればどんなときでも何かが稼いでくれる。しかも不況時は小売店さんが起爆剤となる新商品を欲しがるから、ウチが重宝されて、不況のときほど成長する企業体質になれた。

 さらに企業にとって最悪なのは不況時に商品の価格が下がってしまうことでしょう。それを防ぐためにはどうすればいいかと考えた結果、ニッチ(隙間市場)でもいいから、オンリーワンの商品を作るというところに行き着いた。おかげさまで今期もいくつかのヒット商品が出て、売上高、営業利益ともに過去最高を更新できました。製造業の多くが円高や欧州危機などの予期せぬ事態が起きたから業績が伸びないと言っていますが、私には負け犬の遠吠えにしか聞こえません」

 日本列島が電力不足に悩まされた昨年来、従来の白熱灯などにくらべて消費電力が少なくて済むLED(発光ダイオード)電球に消費者が殺到し、家電量販店はいま大手電機各社がしのぎを削る・LED特需・に沸いている。ただ、このシェアトップを握るのは東芝でもパナソニックでも日立でもシャープでもない。宮城県仙台市に本社を置くアイリスオーヤマだ。

 市場に本格参入したのはわずか2年前。一気にナンバーワンへと躍進した背景には、何があったのか。冒頭に続けて、同社社長の大山健太郎氏(66歳)がこう語る。

「LED電球って高いんですよ。だからこれまで100円で電球を買っていた人が、いくら電気代が安くなるからといっても5000円かけて買おうとはしませんよね。ではいくらなら買ってもらえるか。私が考えたのは一年間の電気代で元が取れる金額で、2000円という価格を弾きだした。一方で他社は4000円くらいで売っていたので、ウチのほうが消費者に訴求できたということです。

 ヒット商品を生む秘訣って、競合を意識しないことだと思います。他社が4000円ならうちは3000円という発想では売れない。消費者が何を求め、いくらなら買ってくれるか。その一点だけを集中して考えるようにしている。逆にそこさえ見誤らなければ、消費者に受け入れられる商品を無限に、永遠に提供し続けられるはずです」

 元はプラスチック加工業を営んでいた同社だが、いまや売り上げ全体に占める割合は3割以下。売上高の6割ほどは毎年1000点以上を市場に投入している新商品が占める。そのジャンルも多彩で、家電、清掃用品、防災用品、健康ドリンクなど、「消費者の不満を解消する商品」であれば何でも作って売る。

 ペット用トイレに使う『猫砂』、ガーデニング用のプランターなどそれまで市場がなかったジャンルも開拓し続けることで、1000億円企業にまで成長してきた。徹底した顧客志向はこんな形でも表れる。

「多くのメーカーは工場の稼働率を上げることを必死に目指しますよね。在庫を最小限に抑えて、必要な時に必要な分だけ生産するトヨタのジャストインタイム方式がいい例です。でもこれって、トヨタさんにとっては最適かもしれないけれど、消費者にとっても同じでしょうか。プリウスが欲しくても納期まで数ヵ月待ちになってしまうでしょう。

 経営者には、ヒット商品が出て100欲しいと言われたら150をすぐに供給する責任があると思っています。だから、工場稼働率は7割以上にしないというのが弊社の考え方。常に空きスペースを確保しておくことで、突然の増産にすぐ対応できるようにしているんです。LEDを大量に即座に市場投入できたのはこのおかげ。稼働率を上げるために無駄を省くのは短期的に業績を上げるには正しい経営でしょうが、消費者の安くて品質のいい商品をすぐに持ってきて欲しいという要求に応えられない」

 会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境に於いても利益の出せる仕組みを確立すること—同社の経営理念の一番目に掲げられたこの言葉を、大山氏は文字通り体現しているのだ。

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