小沢無罪判決が浮き彫りにする司法のあり方と政治的影響
いまこそ日本の「第三の開国」につながる途を整えるとき

 政治資金規正法違反の罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告に対して、東京地裁は、26日、無罪の判決を言い渡した。

 判決の内容であるが、検察庁が、事実に反する調査報告書を作成し、検察審査会の判断を誤らせることは許されないとした上で、小沢氏の起訴を決めた検察審査会の議決は有効とした。そして、石川知裕議員と池田光智元秘書の収支報告書虚偽記載については認めた。

 しかし、虚偽記載については、小沢氏と石川議員らとの共謀は認められないとした。

 これは、司法の判断であり、重く受けとめなければならないが、検察や司法のあり方について、様々な問題を浮き彫りにしている。今回は、石川議員の調書が違法な取り調べによるものだとして、証拠採用されなかったが、特捜部のあり方が厳しく問われている。私が厚生労働大臣だったときに、部下の村木厚子局長が冤罪の犠牲となったが、これもまた特捜部の勇み足が厳しく糾弾された事件である。

無罪は勝ち取ったが・・・          〔PHOTO〕gettyimages

 したがって、市民の司法への参加が有効となる。裁判員制度や検察審査会制度を創設したのは、そのためであり、検察や裁判所の改革につながるものである。特捜部や裁判所は、世間から隔離された聖域となるきらいがある。政治悪と戦う「正義の味方」とか、良心にのみ従う独立した裁判官というイメージが巷間に流布され、外部からの批判を許さない体質となってしまった。

 三権分立を錦の御旗にして、司法が行政府や立法府からの合理的な批判を拒絶するような愚を犯してはならない。

 この問題は、日本という国のかたちをどうするのか、日本をどう統治していくのかという根源的な問題と大きくかかわっており、それこそが日本の「第三の開国」につながるテーマなのである。司法の言葉の難解さ一つをとってみても、権威主義と笑って済ませることはできない。国民の基本的人権に関わる問題だからである。

 今回の無罪判決で、民主党は小沢氏の党員資格停止を解除するであろうし、小沢氏も政治活動を活発化させるであろう。しかし、永田町と世間の空気は同じではない。4億円ものカネの出所がどこか。政治団体が土地の取引をするのか。秘書が有罪になっても、監督すべき国会議員の責任はないのか。そのような疑問が完全に払拭されたわけではない。

 それらについて、国民に明確な説明ができなければ、小沢氏が、世論的にみて完全に復権するのは困難であろう。

 自民党政治の問題点の一つが、政官業の癒着であり、たとえば、公共事業の配分の見返りとして政治献金を受けるといった構図であった。カネにまみれた政治を終わらせたいという国民の願いが、「コンクリートから人へ」という民主党のスローガンに力を持たせ、政権交代の原動力となったのである。

苦境に立つ野田政権

 ところが、今や民主党政権が、政官業の癒着の方向にまっしぐらに走っている。

 政治改革は、まさに「日暮れて道遠し」であるが、そのことを考えても、小沢氏が国民的な支持を得て、政治的に復権することは考えがたい。

 社会保障と税の一体改革を議論する特別委員会が衆議院に設置された。しかし、与党である民主党の中は消費税賛成派と反対派に二分されている。政府与党案として、関連の11法案が提出されたわけであるが、委員会でどのような議論が展開されるのであろうか。

 そして、採決の時には、小沢氏のグループはどのような投票行動をとるのだろうか。野田首相は政治生命をかけると言っているが、議論の先送りもありうるであろう。その場合、野田首相の責任はどうなるのか。

 解散総選挙を断行したところで、民主党が勝てる戦略は立てることはできまい。無作為のまま、国会を閉じて、9月の民主党代表選挙を迎えるのか。そして、自民党もまた、どのような戦略でこの政局に臨むのか。野党第一党の自民党のほうが、むしろ苦しい立場に追い込まれているのではないか。

 小沢氏無罪で、政界方程式はますます複雑なものとなってしまった。小政党の代表としては、大政党の動きをじっと見ながら、国民にとって最善の選択をするしかない。
 

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