中国
乱れ飛ぶ札束にコンパニオン・・・成長率失速を吹き飛ばし、豪快な力業で世界を牽引する金満中国のパワーを見よ!

「甲板へ逃げるんだ!!!」

 ディカプリオがウインスレットの手を取り、2人は水浸しになりながら、船内を必死に駆け上がる。すでに腰まで浸水し、各所で放電も起こる中、巨船が右に左に、大きく揺れ動く・・・。

 4月14日のタイタニック号沈没100周年を記念して、1997年の懐かしいハリウッド映画『タイタニック号』が、4月11日より中国で再映され、空前のヒットを飛ばしている。今回私が観たのは、昨年の大晦日に、北京北三環路の大鐘寺に角川映画がオープンした最新型のシネコン『新華国際影城』だった。8館計1218席から成るこの巨大なシネコンでは、上映している6本のうち4本がハリウッド映画だ。

北京の住宅地での野外映画。庶民の映画への渇望こそが、ビッグビジネスへの好機となる 〔PHOTO〕gettyimages

 特に『タイタニック号』は、上映時間3時間の巨編だというのに、朝10:00の回から夜21:50の回まで、1日13回もかかっている。

 入場料は100元(約1300円)で、3D用黒メガネを渡され、「震感庁」に案内された。いま北京の映画館では、「3D+震感」がブームになっている。3D用黒メガネをかけて3次元的感覚を実感し、冒頭のようなシーンになると、席がガタガタと揺れ出して臨場感を体験できるというわけだ。

 思えばこの映画が世界中でヒットした15年前当時、中国に入って来たのは、セリーヌ・ディオンが歌う主題歌だけだった。当時、北京最先端を誇っていた三里屯のカフェバー通り(といってもまだ十数軒しかなかったが)へ行くと、まるで洗脳テープのようにディオンの美声が鳴っていた。

 そして東京で一足先にこの映画を観た私が、いかに豪華絢爛たる舞台装置かを説明してあげると、北京っ子たちは、羨望の眼差しで聞き入ったものだ。つまり、いまの中国の多くの「80後」(1980年代生まれ)、「90後」(1990年代生まれ)の若者たちは、映画『タイタニック号』処女体験なのである。

旧作でもボロ儲け

 この振って湧いたようなタイタニック・ブームのさなか、4月22日から28日まで、第2回北京国際映画祭が開幕した。4年前に開催したオリンピックの会場をメイン会場に据え、世界各国の計260作品が上映された。

 世界の映画祭と言えば、2月のベルリン、5月のカンヌ、8月のベネチアが、いわゆる3大国際映画祭だが、1985年に金満日本が、東京国際映画祭を創設した。バブル経済絶頂の頃は、渋谷の東急文化村に世界の映画スターたちが集結し、私も毎年、取材に行ったものだ。

 だがいまや、アジアの国際映画祭と言えば、1993年に創設され、毎年6月に開かれる上海国際映画祭と、1996年に創設され、毎年9月に開かれる釜山国際映画祭に取って代わった。それを昨年から、4月に北京国際映画祭を持ってくることで、中国としては、世界最大の市場であるアジアにおいて、「映画の主導権」を奪ってしまおうという狙いなのである(国内的には北京VS上海のライバル意識という要因も大きいが)。

 そんな北京国際映画祭の今年の目玉は、何と言っても『タイタニック号』のジェームス・キャメロン監督の訪中だった。キャメロン監督は、中国での異様なモテモテぶりに、終始ご機嫌で、4月24日には、劉淇・北京市党委書記(北京市トップ)に、金の額縁に入ったサイン入り映画ポスターをプレゼントした。北京国際映画祭では他にも、共にハリウッド映画の『ロード・オブ・ザ・リング』3部作や、3D版の『ライオンキング』が大人気だった。

『ロード・オブ・ザ・キング』の1作目は2001年の作品で、『ライオンキング』は1994年の作品である。つまりハリウッドではとっくに「お蔵入り」しているものが、中国では大ウケするのである。不景気に苦しむいまのハリウッドが、"チャリウッド"と揶揄される所以だ。

 中国政府は外国映画の上映を厳しく制限していて、「外国映画は年間20本のみ上映を許可し、うちアメリカ映画は14本を超えない」という国家広電総局の「内規」(2004年規定)があった。これにアメリカ政府が猛烈な抗議を続け、2010年にアメリカ映画の上映枠は、年間20本まで拡大された。

 だがアメリカ政府がさらなる抗議を行った結果、この2月にハリウッドを訪れた習近平副主席は、年間34本まで拡大することを約束したのだった。

 ちなみにこの北京国際映画祭には、日本からの出展は、わずか3団体しかなかった。参加したある日本の映画関連会社社長によれば、北京の大会本部は日本からの出展を促すため、日本企業のブース代と5つ星ホテルの宿泊代を肩代わりしたが、それでも各社とも消極的だったという。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら