ワシントンリポート---「安全保障」「原子力」「TPP」大統領選の年の「日本・米国議員会議」から日米両国の課題を考える
米国側議員団の中心となったダニエル・イノウエ上院議員〔PHOTO〕gettyimages

 「日本・米国議員会議」という日米両国の国会で唯一認められている公式会議に出席のためワシントン入りした。公式会議だけでなく大統領選挙を控える米国の政治および経済状況を知るため、さまざまな要人とも公式、非公式の日程が入った。衆参両院かつ超党派の議員団は仙谷議員団長(衆議院・民主)、黄川田副団長(衆・民)、川上副団長(参議院・民)に、大野功統(衆・自民)、棚橋泰文(衆・自)、林芳正(参・自)、大谷信盛(衆・民)、猪口邦子(参・自)、徳永久志(参・民)に私の10人である。

 今回で3回目となるこの日米議員会議は、米国側はダニエル・イノウエ上院議員が中心となって超党派で議員団を組んでいる。政治・経済についての議員間での実質的討議が中心になる。今年、米国は大統領選挙の年である。選挙のことを抜きには何も語れない。

 また日本でも政局が気になるところである。双方が極めて緊密な国政の情報を交換する場とも言える。日米議員会議における丸一日のセッションと昼食並びにレセプションをはじめ、日本大使館はもとより米国政治アナリスト、各種シンクタンク、政府高官など多くの政府並びに政治関係者との会合を行い、現時点における日米問題の整理を行った。

 個々の組織、あるいは個人の発言というよりも、現時点におけるワシントンで語られる日米を取り巻く状況についての見解を受けた、私の観点からリポートしたい。

 われわれが訪米中に公式に会談を持つことができたの、はチャーリー・クック(政治アナリスト)、リチャード・アーミテージ(元国務副長官)、ジョン・ポデスタ(アメリカ進歩センター所長)、ビル・バーンズ(国務副長官)、マイケル・グリーン(CSIS部長)、マシュー・グッドマン(CSIS部長)、ダニエル・イノウエ(上院議員)、アイリーン・ヒラノ・イノウエ(米日カウンシル会長)、マーク・ベギッチ(上院議員)、ジェフ・ビンガマン(上院議員)、トム・ハーキン(上院議員)、カール・レビン(上院議員)、ジャック・リード(上院議員)、リサ・マカウスキー(上院議員)、ジョン・ケリー(上院議員)、ラマー・アレクサンダー(上院議員)、チャールズ・シューマー(上院議員)、ダニエル・アカカ(上院議員)、フランク・ローテンバーグ(上院議員)らである。上記以外にジャーナリスト、米経済界及び日本リエゾン並びに大使館関係者などからの多くの情報に基づいてのものであることを注記しておく。

 公的ミッションに依っての会談ゆえ、特別の記述がない限り、以下、記録については特定の機関・個人の明記は差し控える。特に、日米議員会議については非公開原則のためその詳細については記載を控える。

1.政治情勢:大統領選挙

 米国の深刻なリセッションの後に成長維持のためになすべきことは、長期的に見た金融の問題整理が必要である。また投資と歳入確保のための税制並びに構造改革をバランスよく高齢化社会に対応可能なように実施しなければならない。こうした課題はおそらく日本も同様であるとみられる。決定的に違うのは、米国では政権交代可能な二大政党が明確に考え方を異にするが、日本の場合はそうではないということだ。

 とりわけ消費税については日本の民主党、自民党共にほぼ同じ考え方を持っている。米国では11月までに民主党、共和党の考え方の違いが整理されていく。オバマ政権はアジアにおけるプレゼンスの強化と日米同盟に力点を置いていくだろう。

 世界を見ると、フランスでは、現職2期目挑戦のサルコジ大統領の苦戦が報じられている。5月の決選投票は相当厳しいとの予想が大勢だ。行政トップの二期目は安泰、というジンクスは崩れ出している。米国でもオバマ大統領は、優勢を保ってはいるが決して安泰というわけではない。

 選挙情勢分析では、むしろ接戦だと政治アナリストは論じている。さらに53対47と民主党がわずかに上回る上院でも、改選33名のうち現職引退が7名の民主党と3名の共和党では選挙結果は民主党が議席を減らす可能性が高く、50対50と拮抗するとみられている。共和党が大統領選を制すれば、上院議長となる共和党の副大統領が101票目の投票権を持つことによって過半数を制することになる。上下院共に共和党が過半数を制する可能性も出てくる。

 GALLUP調査(世論調査)によると政党支持率は民主31%、共和党27%、支持政党なし40%と、米国の歴史でも最も浮動層が高い結果となっている。その最大の理由は、経済状況の悪化である。何よりも経済状況を好転させる施策の実施期待が高まらない限りオバマ大統領は厳しい戦いを強いられることになる。一方、共和党候補者指名確実のロムニー氏は指名獲得のためにこの1年半の指名選挙戦は保守派を中心に訴えを展開してきた。今後、中道穏健派へのアピールを本格的に行うことによって支持がどのように変わっていくか、さらなる支持の拡大があるのか、が問われることになる。

 そうは言っても、オバマ大統領への国民の個人的な好意は全体的にまだ高い。初めての黒人大統領であることの歴史的価値を国民はよく理解しているともいえる。この半年間の支持率で見ればGALLUP調査では、41%から46~47%とわずかながら改善がみられる。これはこの半年間の経済状況が若干良くなってきたことによるものだが、エコノミストからは残り半年間の経済政策によっては、景気状況はまだまだ不透明さが残る、と先の見えにくい展開が示されている。オバマ、ロムニー両陣営共に無党派層へのアピールに、今後は全力を尽くすことになる。

 ネガティブキャンペーンもすでに始まっている。オバマ陣営は、いわゆるエスタブリッシュメント出身(父はアメリカンモーターズの再建者)のロムニーでは、米国民の普通の暮らしがわからない、と相手を特権階級だとラベリングしている。また、ロムニー氏自身の発言のぶれ(同性婚や人工中絶などについて)も指摘し、flip-flop(風見鶏)と一貫性の無さを厳しく批判している。

 一方ロムニー陣営はオバマ大統領の経済政策の失態を厳しく指摘し、医療保険制度改革中心で経済に対して十分な配慮がなかったと訴えている。特に、経営、あるいは経営再建といった経験を持つロムニー氏との対比の意味で、オバマ大統領はマネジメント能力が欠如していると厳しく批判している。

 いずれにしても、今後は経済問題に対する姿勢が焦点になることは間違いない。現時点では外交政策については大きく隔たりのない両名の争いということで、我が国との関係が大きくスイングすることはないだろう。

 4年前の熱狂的なオバマ大統領選挙では、マイノリティと称された黒人、ヒスパニック、ラテン系並びに若年層からの集票が決定的だった。しかし、医療保険制度改革に熱心がゆえに経済政策が置き去りになったオバマ大統領の政権運営によって、前回の支持層が失業率の悪化・高止まりなど「雇用」という直接自らの生活に影響を与える課題に直面し、その支持が離れた。こうした中間層並びに低所得者層の課題は、医療など社会保障の充実であることは間違いない。

 一方、経済の発展がこうした層の雇用に直接影響を及ぼすということで、そのかじ取りが不十分な場合には政権基盤を揺るがせる要因になることも明らかになった。まさに、先のフランスでも同様の傾向が表れていると言える。言い換えれば、我が国にも当てはまるかもしれないのである。

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