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特別読み物どう見極めるのか プロ野球ザ・スカウト 才能があってもダメなヤツ、素質がなくても出てくるヤツ

2012年05月05日(土) 週刊現代
週刊現代

 スカウトたちはどこを見て、選手の適性を判断しているのか。技術なのか、身体能力なのか、それとも人間性なのか。スカウトたちが大切にしているのは実は第一印象であったり、なにげない仕草だという。

スピードガンは持たない

 練習後のマウンドに、泥だらけの球児が一人でトンボをかけている。そんな一見ありふれた光景に、ベテランスカウトの目は釘付けになった。

「強豪高の3年生エースが、マウンド整備ですよ。年に何十校と練習の視察に訪れる私達にとって、それがいかに異様なことか。後輩に『やっておけ』と一言言えばいい話なんですから。

 でもあいつは、必ず自分一人でトンボをかけるんです。まるで、『ここは自分だけの場所だ』と主張するように。後にも先にも、あれほど静かで強烈な自己顕示は見たことがない」

 この時、中日のスカウト・米村明は、「何としてもコイツが欲しい」と心底思ったという。彼こそ当時、金光大阪高のエースだった吉見一起。'11年のセ・リーグ最多勝右腕である。

「プロに入ってくる選手は、誰もが何か一つ、ピカイチの才能を持っている」

 米村をはじめプロ野球のスカウトたちは、例外なくそう語る。だが彼らはこう付け加えるのを忘れない。

「ただ、そのすべてが活躍できるわけではない」

 江川卓、清原和博、松坂大輔---かつて「怪物」と騒がれ、プロ野球界を席巻する活躍を見せた選手たち。だがその陰で、ひっそりと消えていった「ピカイチの才能」も数多いる。

「才能だけでは計れない」---ならばスカウトたちは、全国に散らばる原石を、どう仕分けていくのか。

 昨年のセ・リーグ王者・中日は、12球団で唯一、スカウトがスピードガンを持たない。米村はその理由を、「吉見のような選手を見逃さないためだ」と語る。

「数字に頼ると選手の本質が見えてきません。球速は適切なトレーニングを重ねれば、プロに入ってからでも伸びますから。それよりも、プロで戦える気概があるか、対応力があるか、それら人間性を見極める眼力が必要なんです」

 吉見は、そんな理想形にとても近かった。

「もちろん吉見は高い技術力をもっていました。コントロールもいい、ストレートを内角に投げ込む度胸もある。でも何より、あのマウンド整備に象徴されるように、まず練習で手を抜かない。そして自分のルールを貫徹する強さがある」

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