電通、JFE、全農・・・日本有数の巨大組織を飲み込むLED照明の「闇」
寿命が40倍で消費電力が2分の1のLED照明〔PHOTO〕gettyimages

 寿命が40倍で消費電力が2分の1---。

 このセールストークで、急速に市場規模を大きくしているのがLED照明である。

 約1兆円の一般照明市場で、LED照明は前年比2倍近い伸びを見せ、2000億円を超える勢い。大震災の「3・11」以降は、省エネ意識の高まりもあって、月間売上高はLED照明が従来の白熱電球を上回るようになった。

 そのLED照明の世界を「闇」が覆っている。

 今年2月、鉄鋼大手・JFEホールディングスの子会社、JFEエンジニアリングがLED照明分野からの撤退を表明した。翌月末には、世界有数の広告代理店・電通の子会社、電通ワークスが、LED事業を専門メーカーに売却の上で撤退した。巨大組織・全農の紙パック部門である全農ハイパックは、本格進出した最初の商談でとん挫、代金支払いを求め法廷で争っている。

日本を代表する大組織がLED照明からなぜ撤退するのか?

 JFEに電通に全農・・・。

 日本を代表する大組織である。子会社での進出とはいえ、LED照明の販売には、「本体」の信用が付加されていた。もちろん、3社ともに「本体」の総合力で、LED照明のシェアを奪うもくろみだった。

 JFEエンジニアリングの関係者が、率直にいう。

「全国の製鉄所、事業所、販売代理店、協力会社などの蛍光灯を、LED照明に切り替えるだけでも相当な需要が期待できた。光源とチップとチューブを用意すればいいから、それほど複雑な技術ではない。基本的な販売網はあるし、需要の伸びは、誰もが想像できる。2年前の本格進出の時は、絶好の新規事業と思えた」

 その「絶好の機会」を、なぜ逃したのか。大震災を経て、さらに躍進すべき時に、なぜ撤退するのか。

 LED照明の世界に蠢くブローカーに、もみくちゃにされたのが原因である。

 JFEエンジニアリングは、2010年5月14日、台湾の新世紀光電有限公司(GPI)と組み、同社のLED照明を、JFEエンジニアリングの「省エネ・CO2削減商品」と組み合わせ、「体系的な省エネ環境の提案という形で販売する」と発表した。

 ところが、GPIにパテント問題が発生してまずつまづき、次にLED事業のために設立したJFEアドバンストライトの設立時の社長が、自らの人脈で新たな商流を築こうとして、迷走が始まる。

 JFEエンジニアリングは、撤退理由を黙して語らないが、JFEアドバンストライト前社長の個人的人脈で顧問に就任した電子ブローカーが、関西の従業員十数名の健康食品会社と、LED照明の「製造・販売委託契約」を結んだあたりに、修復不能な「闇の深さ」がかいま見える。

 撤退を決めた時点で、JFEアドバンストライトには在庫のヤマが積み上がっており、「継続より撤退」と、決断をしなければならないほど「呆れる状態だった」(前出のJFEエンジニアリング関係者)という。

 電通の場合は、もっと深刻といっていい。

 電通が、不動産、人材派遣部門の子会社の電通ワークスでLED事業に着手したのは、09年秋頃からで、本格的な取り扱いは10年3月頃からと、JFEエンジニアリングとほぼ同じ。ただ、こちらは沈黙して蓋をしたJFEエンジニアリングと異なり、刑事告訴せざるを得ない状況に追い詰められている。

 電通ワークスが直面しているトラブルについて、私は会員制月刊誌の『FACTA』(4月20日発売の5月号)に、「電通LED循環取引の全貌」と題して記事にした。

 既に、電通ワークスの「120億円のLED照明水増し発注疑惑」「50億円規模の循環取引疑惑」については、時事通信が配信、それを受けて米ウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)などが記事にしているのだが、『FACTA』の記事は、そこに至る過程を明らかにしたもの。

 ここでも不正の主役はブローカーである。

 電通ワークスは、LED照明の発注にあたり、相手先メーカーに50%の前途金を渡すことになっていた。この契約は、メーカーサイドがチップなどを事前に現金で仕入れなければならないなど、相応の理由はあるのだが、「発注=現金」という取引形態が、あまたのブローカーを吸い寄せた。

 水増し発注、架空発注のヤマが築かれ、それに「売上高が欲しい」という電通ワークス担当者の"思惑"が重なって循環取引となり、その総額は60億円を上回った。

 その怪しい取引を一挙に解決するために、「約114億円の水増し発注」という呆れた取引が、10年9月に行われた。

 金額を競う電通得意の巨額イベントなどではない。1本1~2万円の商材を、コツコツと売る地味な製造の世界である。114億円ものLED照明を、80万本以上も発注するなど、錯乱したというしかない。

 そこに至る商取引に、LED照明に棲む魑魅魍魎が食い込んだのは間違いないが、同社に"協力者"がいなければ、こんな商取引は成立しないと考えるのが自然である。

 ただ、電通と電通ワークスは、「ウチは被害者。刑事告訴します」という回答で一貫。司直に解明を委ねる方針だ。

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