牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」
2012年04月26日(木) 牧野 洋

「ブログサイト」がピュリツァー賞を初受賞、ハフィントン・ポスト、取材陣は有力紙に迫る400人

upperline
ハフィントン・ポスト創業者のひとりアリアナ・ハフィントン〔PHOTO〕gettyimages

 日本で新興のブログサイトが新聞協会賞を受賞することがあるだろうか。まず無理だろうが、アメリカは違う。ブログサイトとして出発したインターネット新聞のハフィントン・ポスト(ハフポスト)が4月16日、創刊7年目にしてジャーナリズムで最も栄誉あるピュリツァー賞を受賞したのである。

 受賞作は連載企画「戦場を越えて」。全国ニュース部門での受賞で、イラクやアフガン戦争で重傷を負い、身体障害者になった退役軍人や家族の状況について生々しいエピソード満載で伝えている。ネットメディアと聞くと「低コストでスピード重視」を連想しがちだが、8ヵ月にわたる長期連載だ。

 筆者は66歳のベテランジャーナリスト、デビッド・ウッド。1977年にアフリカのゲリラ戦争取材のために雑誌タイムのナイロビ支局長に就任して以来、世界各地の紛争を取材する軍事専門記者として30年以上にわたって活躍してきた。直近ではイラクとアフガニスタンの戦線へ何度も出張取材している。

 補足しておくと、ウッドはハフポストへ投稿するブロガーでもないし、同紙へ寄稿するフリーランスでもない。同紙で雇用されている正社員だ。ロサンゼルス・タイムズやボルチモア・サン、ポリティクス・デイリー(AOLの政治ニュースサイト)記者などを経て、2011年前半に入社している。

 要するに、ハフポストはコストをかけてウッドのような人材を採用し、ピュリツァー賞をモノにしたのだ。同紙では現在、400人前後の記者や編集者が正社員として働いている。編集局の規模としては、経営悪化で大規模なリストラを強いられている有力紙ロサンゼルス・タイムズ(550人前後)に迫りつつある。同紙は全米第4位の日刊紙だ。

営利目的のネットメディアでは初の快挙

 印刷メディアを持たないネットメディアがピュリツァー賞の受賞対象に初めて加えられたのは2010年度。1年目に続いて2年目もネットメディアのプロパブリカが受賞し、注目を集めた。同社は調査報道を専門にする民間非営利団体(NPO)だ。慈善事業家や慈善財団から寄付を募って記者を正規採用し、公共性が高い調査報道に経営資源を集中投下している。

次ページ  プロパブリカのピュリツァー賞…
1 2 3 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事