「窮余の策」か、それとも「最悪の選択」か!? 東電・下河辺新体制の重い課題

東京電力本社〔PHOTO〕gettyimages

 先週(19日)、懸案だった東京電力の会長人事がようやく決着した。

 政府の原子力損害賠償支援機構(原賠機構)の運営委員長の下河辺和彦弁護士(64)が、野田佳彦首相の要請を受諾し、6月下旬の株主総会で勝俣恒久会長(72)を引責辞任させるめどがついたのだ。

 福島第一原子力発電所事故を巡って1年以上もその場しのぎを繰り返してきた民主党政権は、後任会長すら決められないという失態を回避できたことがよほど嬉しかったのだろう。今回の人事を「(下河辺氏は)これまでも大きな企業の再生では手腕を発揮した経験もある」(枝野幸男経済産業大臣)と自画自賛している。

 しかし、新聞報道を見れば、この人事の実態が、民間の財界人に引き受け手がなく、「窮余の策」だったことは明らかだ。下河辺氏に弁護士として華やかなキャリアがあっても、経営の手腕はまったくの未知数である。

 それどころか、下河辺氏は、昨年来の政府の東電支援策と東電の経営合理化策に関し、政府の第3者委員会「東京電力に関する経営・財務調査委員会」(経営・財務委員会)の委員長として、また、「原子力損害賠償支援機構」(原賠機構)の運営委員長としてお墨付きを与えてきた人物だ。この実績を見る限り、今後、国民負担を極大化する「最悪の選択」にならないよう祈らざるを得ない危うい人事かもしれないのである。

国民の期待に応える人事とは言い難い

 19日午前、野田首相との官邸での会談を終えた下河辺弁護士はテレビカメラの前で、「新生東電の第1歩を踏み出すために、精一杯の努力をさせていただきます。会長の要請、確かにお引き受けいたしますとお伝えした」と語り、東電会長への就任要請を快諾したことを明らかにした。

 野田政権は、下河辺氏を絶賛し、人事の成功を印象づけようという戦略のようだ。

「企業再生のプロの中のプロだ」(仙谷由人民主党政調会長代行)とか、「当初から、下河辺先生にお願いするのがベストに近いかなと考えてきた」(枝野経済産業大臣)といった発言が目立つ。

 下河辺氏が客員弁護士として籍を置く「ルネス総合法律事務所」(東京・千代田区)のホームページによると、同氏は1947年北海道札幌市生まれ。京都大学法学部を卒業し、ライフや大成火災海上保険の管財人をつとめた。1990年代から花形とされてきた、いわゆる"倒産弁護士"だ。東京弁護士会会長や日本弁護士連合会副会長も歴任しており、弁護士としての実績は立派である。

 しかし、事を、一連の東電問題に絞り込んだ場合、下河辺氏の実績が国民の期待に応えたとは言い難いのではないだろうか。

 期待はずれの第一が、下河辺氏が委員長を務める経営・財務委員会が昨年10月3日に野田首相に提出した「委員会報告」だ。

 以前にも本コラムで何度か取り上げているので、詳細はそちらを参照して頂きたい。が、同委員会は、10回に及ぶ会合の議事録の公開を怠たり、東電寄りの発言を繰り返す委員の氏名を公表しなかったうえ、東電の西澤俊夫社長が提出した資料を迅速に公開しなかった。策定段階から、"密室"で報告作りを進める姿勢が目立っていた。

 できあがった報告は、過去10年間に、電気料金の算定根拠に6186億円もの原価の水増しがあったと指摘して一部の新聞から喝采を浴びたものの、言いっ放しに終始し、肝心の水増しの返却を求めないという失態を犯した。

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