中国
「ニセモノ天国」を揺るがす「ニセ薬」騒動---連載100回記念にあえて耳の痛い話題を
中国人はよほど重篤な病気でなければ病院ではなく薬局へ行く〔PHOTO〕gettyimages

 北京にて、つれづれなるままに、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書き綴っているうちに、いつのまにかこの連載が、今回で100回目を迎えた。丸2年である。思えば、中国はこの2年で、千変万化した。毎週ただ一つのテーマではあるが、現地で定点観測しながら、日本の最大貿易相手国の諸事情を日本にお伝えすることは、意義があると思う。最近では、北京で会う日本人駐在員たちからも、「今度こんなこと、現代ビジネスに書いてください」と提案されたりする。誠にありがたい限りだ。読者の皆様、編集部の方に、感謝不尽! そして、継続努力!

 というわけで、100回記念号のテーマを考えあぐねたのだが、あえて耳の痛い話を記すことにした。まずは昨日起こったことから語ろう。

龍井の新茶を一口も味見せぬまま---

 昨日の昼、亮馬橋にある5つ星ホテル「崑崙飯店」1階のベトナム・レストランで、あるテレビ・プロダクションの社長と会食をしていた。生き馬の目を抜くメディア業界で一財産を築いた、いわゆる「勝ち組」の彼とは、ひょんなことから昨年夏に知り合い、意気投合して、以後、月に1度くらいのペースで会食している。北京っ子は気が短い人が多いが、私はこれまで、彼ほど温厚でお人好しの北京人に会ったことはない。

 前菜の生春巻きを甘辛いチリソースに包めて頬張っていたその時、彼の携帯電話がけたたましく鳴った。彼は「秘書からだ」と言って最初は無視していたが、あまりに鳴り続けるので、しびれを切らして電話を受けた。と、みるみるうちに貌が気色ばみ、「何、本当か?」などと口走り、最後は、ウーンと唸って電話を切った。「オレの番組がやられた・・・」。

 その後、彼が一気呵成に語ったところによれば、自社で制作している一時間のバラエティ番組があり、某薬品メーカーが、ほぼ独占で広告主となっていた。ところがこの会社が、ニセ薬品を大量に出荷していたことが発覚し、午前中に警察の手入れを受け、社長以下、一網打尽となったのだという。これにより広告主は即刻、番組降板。そしてその番組自体も、お取り潰しとなる可能性が高まってきた---。

 私はそのような、もののあはれを聞きながら、目は眼前の、水面をたゆたうように一葉一葉落ちていく龍井の茶葉に行っている。いままさに、年に一度の龍井茶の新茶の季節で、今年は獅峰龍井が1kgあたり36万元(約470万円)の史上最高値をつけたというニュースが出たばかりだったが、彼はこの日、奮発して龍井の新茶を注文してくれたのだった。だが結局、円卓で香り立つ龍井茶を一口も味見せぬまま、ニセ薬事件の影響で、われわれのランチ会はお開きとなってしまった。

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