雑誌
ヤクザやニートが告白
「生活保護の〝不正受給〟」急増の実態!

フライデー

 受給者総数は終戦直後の混乱期よりも多い209万人!「虚偽申告で騙し取るケース」や「親子2代で受け取る例」が後を絶たず、3兆円超がバラ撒かれているのだ

 鮮やかな刺青が彫られた腕を折り曲げタバコに火を点けると、木村義雄氏(30代、仮名)は淡々と語り始めた。

「生活保護を受け始めたのは、2年ほど前からです。ちょっとヘマして組を破門になり刑務所に入っていたんですが、出所してもカネや住むところがなかった。それで友人に相談すると、『生活保護を申請すれば』と言われたんです。最寄りの市役所に行きましたが、最初は断られました。『あなたは働けるでしょ』と。再度、友人に相談すると、生活支援の福祉団体を紹介されました。そこの職員と一緒に市役所に行くと、今度はあっさりOKです。職員が『この人は働きたくても働けない状態です』って言ってくれてね。

 支給されるのは、月に11万9000円。冬になると灯油代としてプラス3000円、正月には1万円が加算されます。まぁ、お年玉みたいなものでしょう。俺も働けないことはないですが、保護をもらい始めると、だらけてしまいますね」

 木村氏はこう言って苦笑いし、さらにヤクザ社会で学んだという、生活保護を受けるための〝裏技〟を明かした。

「申請に行く時は、現役でも必ず『元』とウソをつきます。暴力団員は保護を受けることができませんから。あと必要なのは、医者の診断書です。ヤクザの中には、覚醒剤や酒の飲み過ぎで肝炎などを患っているヤツが多いんです。申請を受ける担当者もお役所仕事ですから、診断書まで見せられれば『分かりました』と、たいがい受理してくれます。暴力団排除条例の影響でシノギ(収入を得るための手段)が減り、保護を受けるヤクザ関係者はかなり増えましたよ」

 元ヤクザの木村氏が、市役所から受給しているという生活保護---。1950(昭和25)年に施行された生活保護法に基づき、国や自治体が困窮する人々に対し、最低限の生活を保証するために保護費を支給する制度だ。まず本人や親族が、健康保険証など必要な書類を持って自治体の担当部署と面接。その後、申請書を提出し調査担当員(ケースワーカー)が生活状況を調べ、病気やケガなどで一定の収入が得られないことが分かれば保護を受けられる。支給金額は年齢や世帯の人数などで異なるが、月に一人当たり10万円~13万円というのが一般的だ。自治体はケースワーカーを通じて就労支援をしつつ、受給者が安定的な収入を得られるような仕事に就くまで保護を続ける。

 だが近年、この生活保護の実態が大きく様変わりしている。保護受給者が急増しているのだ(前ページの表参照)。'95年には1ヵ月平均約88万人だったのが、今年は209万人を突破。終戦後の混乱期、1951(昭和26)年の204万人を超える水準に達している。これにともない、保護費の支給総額も増加の一途を辿っている。'00年には2兆円を下回っていたが、今年度は、過去最大の3兆7000億円を上回る見通し。大変な財政負担となっているのだ。

「受給者や保護費が急増している要因の一つに、不正受給があります」

 こう指摘するのは東京・台東区議会議員で、生活保護の問題を追及している阿部光利氏(みんなの党)だ。

「不正受給は、いまや社会問題です。例えば大阪府警は今年の2月7日に、大阪市住吉区から6年半にわたり3200万円の保護費を騙し取っていた40代の露天商の男を逮捕しました。

 この男は年収1000万円以上あり車も2台所有していたにもかかわらず、『俺は病気で働けない』と虚偽の申告をして、自分と次男の分を月に数十万円も受け取っていたんです」

 厚生労働省によると'09年度に不正に保護を受けたケースは全国で1万9726件、被害額は102億1470万円。'10年度はそれぞれ30%近く増加し、2万5355件と128億7426万円にのぼる。だが、この数字はあくまで判明した分にすぎない。

家族の口座に200万の〝隠し貯金〟

 現役のヤクザである鈴木剛司氏(40代、仮名)が、自らのケースを語る。

「保護を受け始めたのは、覚醒剤の所持でパクられ組も破門になり、刑務所の中で『出所したら生活保護もらいなよ』と同房のヤツに言われたのがきっかけ。地元の市役所に行って相談すると、『ヤクザを辞めたという証拠を持って来てください』と言われました。俺は笑って、『破門状くださいと組長に頭を下げることができると思いますか』と反論しましたよ。結局、1週間ほどで申請は受理されました。ただ受理された直後に今の兄貴分に誘われ、またヤクザ稼業を始めたんです。役所には報告していません。ヤクザとしての稼ぎに加えて、保護費をくれるんですから、そりや黙っておきますよ」

 市のケースワーカーは月に一度のペースで自宅に来て、就職活動の状況などについて細かい説明を求めるという。だが鈴木氏は、のらりくらりとかわす。

「一応、就職活動しているフリはします。ケースワーカーが来る前日に、適当な就職サイトを検索。会社名を書いたリストを見せて、こう言うんです。『いろいろ当たってはいるんですが、最近身体の調子が悪くてうまくいかないんです』と。俺の知り合いには、役所に通帳を見せ収入がないと言って保護を受けていながら、家族の口座に200万円の貯金を隠しているヤツもいますよ。一緒に住んでいない限り家族が調べられることはありませんから、こうした不正も可能なんです」

 だが不正受給は、身分や収入を偽るケースばかりではない。実際に収入がなかったり、ヤクザでない場合でも、不正すれすれの〝グレーな受給〟をしている人も多いのだ。昨年まで働いていた風俗店を解雇され、現在はニート生活を送る伊藤和明氏(40代、仮名)が語る。

「役所に申請を受理させるには、コツがあります。『相談に来ました』と言うと、『一応相談は聞きました』で終わってしまう。だから必ず『申請に来ました』と自分の意思を強くアピールするんです。また福祉団体によっては、申請書の〝模範解答〟を作ってくれるところもある。保護を受けるのは驚くほど簡単です。僕は何社かの面接は受けていますが、生活に困っていないため気合も入りません」

「台東区では生活援護課の110人の職員のうち68人がケースワーカーだが、彼らは超多忙だ」と話す阿部議員〔PHOTO〕鬼怒川 毅

 こうした〝不正受給〟も後を絶たないため、前述したように支給総額が3兆円超にまで膨れ上がっているのだ。前出の阿部議員などは「申請者の審査を厳しくすべきだ」と主張している。

 だが市町村には、審査の厳格化に二の足を踏んでしまうようなトラウマの事件があるのだ。事件が起きたのは、'07年7月のこと。福岡県北九州市で一人暮らしの50代の男性が自宅で亡くなり、死後約1ヵ月たった痩せ細った状態で発見されたのである。残された日記には、「おにぎり食べたい」などと記されてあった。男性は肝臓を患い通院していたため前年12月から生活保護を受けていたが、'07年4月に北九州市の福祉事務所からの「そろそろ働いてはどうか」という勧めに応じ保護を辞退。日記には「働けないのに働けと言われた」などとも書かれてあった。

 現役のケースワーカーが明かす。

「北九州の事件が大々的に報じられて以来、なかなか申請を断りづらくなりました。保護を中断した後などは、『あの人は大丈夫だろうか』と心配になり、夜も眠れないこともあるんです」

 ケースワーカーについては、他にも問題がある。忙し過ぎるのだ。ケースワーカーの経験がある『全国公的扶助研究会』の事務局長・渡辺潤氏が解説する。

「受給世帯の数が増えて、ケースワーカーの数が足りていません。都市部では、一人で100~150の受給世帯を担当している地区も珍しくない。忙しくて、仲間同士で情報交換をする時間もないんです。ケースワーカーは公務員ですが、日本では福祉職として専門に採用される人は少数。人事異動も激しく3年ほどで他部署に移ってしまうため、経験や知識豊富なベテランが少ないのが実情です」

 改善すべき点の多い生活保護。「特に'09年以降は20代~30代の若い受給者が増えた」と話すのは、社会保障が専門の学習院大学経済学部の鈴木亘教授だ。

「'08年の年末から'09年の年始にかけて日比谷公園(東京・千代田区)に設置され、多くの労働者が生活保護を訴えた『年越し派遣村』の影響が大きいでしょう。超党派の大物議員たちが活動を支援したことで、役所は申請を受理するお墨付きを得たんです。あれ以来、若い受給者が多くなりました。彼らにヒアリングして驚いたのは、長びく不況で『親も保護受給者です』という答えが多かったこと。ケースワーカーを増やすことも急務ですが、支給額を抑えることも大事です。デフレが続いているのに、支給額が高額で安定しているのはおかしい。このままだと高齢者だけでなく、これから日本を支えるべき若い世代が高い保護費に甘えてしまい、就労意欲をなくしてしまいます」

 鈴木教授によると、生活保護法は施行以来一度も改正されていないという。基本となる法律が抜本的に修正されていないのだから、問題が改善されないのも当然である。生活保護制度を管轄する、厚生労働省の社会・援護局はこう話す。

「生活扶助の基準額については、現在『社会保障審議会生活保護基準部会』において客観的な検証を行っているところです。就労支援に関しては、一定の成果をあげております。支援が必要な者に適切な保護を実施するという考え方は不変ですが、より徹底した適正化を実施します」

〝不正受給〟の実態に切迫感を持たない、こんなお役所的な対応では、3兆円を超す巨額の生活保護の多くは、今後も泡と消えてしまうだろう。

「フライデー」2012年4月27日号より

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら