社会保障・雇用・労働
同じ時間内にこなさなければいけない仕事がだんだんと増えているため、すでに大きな社会問題になっている燃え尽き症候群で、病院は半年待ち!?

ドイツでも燃え尽き症候群は、すでに大きな社会問題に〔PHOTO〕gettyimages

 燃え尽き症候群というのが、社会問題になりつつある。働いても働いても、仕事が減らない。そのうちに眠れなくなり、鬱になり、ぱたりと何もできなくなる。そして、何年も家から出られなくなったり、それが嵩じると、たまに元気が出たとき自殺してしまったりする。こういう、心の病の兆候を示し始めた社員を、手遅れにならないうちに救済するための措置を取り始めた日本企業もある。

 ストレスでやられる人間が増えているのは、実は日本だけではない。ドイツでも燃え尽き症候群は、すでに大きな社会問題だ。ドイツ人は常に物事を悲観的、かつドラマティックに考えるので、燃え尽き症候群に対しても報道はかなり大仰。"これは新しい国民病となりつつあり、軽視してはいけない、兆候が出れば、すぐに医者にかかるべきだ"といわれており、まさにそのせいで、最近は、精神科やカウンセラーへの紹介状をもらっても、順番待ちで半年ぐらいはアポイントが取れない。これでは、本当に危うい病人は手遅れになってしまう。そうこうしているうちに、長期病欠者の急増で、雇用者と健康保険の負担も無視できない金額に膨れ上がってきた。

 アンケートによると、ドイツで働いている人の3分の1が、同じ時間内にこなさなければいけない仕事がどんどん増えていくと感じている。確かにそれはあるだろう。ドイツ人の労働時間は短く、しかも賃金は高い。おまけに、社会保障費も高い。社会保障費の半分は雇用者が負担しなければいけないから、雇用者側は、当然、できるだけ従業員を増やさずに、労働効率を上げようとする。一方、被雇用者は首になったら困るから、なかなか文句が言えない。つまり、同じ時間内にこなさなければいけない仕事がだんだんと増えていっても不思議ではない。

 しかし、私の見るところ、ドイツ人は、自分で自分の首を絞めているようなところも多い。だいたい、働いている人が、自分の労働時間をあまりにもシビアに見張り過ぎている。たとえば週38時間の雇用契約を結んでいる人は、自分の労働時間がそれを1分でも超えると、損をしたと思い、とても腹を立てる。

 だから、何が何でも時間内に仕事をこなそうと皆が常に焦っていて、勤務中、極端に不機嫌だ。終業の10分前に掛かってきた電話などには絶対に出ない。すでに仕事を終えた人は、終業時間と同時に飛び出せるようウォーミングアップをしているし、まだ終えていない人は、後の10分で終わらせようと死にもの狂いだ。店でも同じ。閉店間際に店に入ると、店員が「なんで今頃来た?」と言わんばかりの、もろに嫌そうな顔をする。こういう働き方では、自分でストレスを育てているようなものだ。

 ドイツの教員は、授業をする時間数に沿って給与体系が定められている。州によって少し差があるが、週26時間といった辺りが100パーセント勤務で、産休明けや育児中で100パーセント勤務をしたくない人は、週8時間といった契約にし、状況に応じて徐々に増やしていく。26時間にせよ、8時間にせよ、それに対して支払われる給料は、もちろん、その授業をするための準備、採点、両親や生徒との面接など、すべてを包括した金額である。

 それなのに多くの教師は、家に帰ってきてまで採点をしているのにそれが正当に評価されていないと不満を感じている。これではストレスも溜まるというものだ。断っておくが、ドイツの教師の給料は、OECDの中でもトップクラスなのである。