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スクープ公開 この大赤字、ヤバいんとちゃう!?
吉本興業「中間決算書」から分かったこと

 吉本の重鎮・明石家さんまが言った。

「私の知り合いのマネージャーは泣いております。辛いときに笑っていられないと。そういう状況の(吉本興業の)社員が多々おりますので、そこであえてBEGINさんにこの曲を歌っていただきます。吉本興業的には笑顔のまんまではいられないらしいんですよ。でも、まだまだ沖縄国際映画祭を続けていくということなので、BEGINさん、ビシッとお願いします」

 これは3月31日、吉本主催の沖縄国際映画祭閉幕式でのひとコマだ。BEGINがエンディングで『笑顔のまんま』を歌う際、さんまがビデオメッセージを寄せたのだ。

「美談のように報じるメディアもありましたが、これは明らかに『沖縄国際映画祭がいかに失敗か』を揶揄するメッセージ。さんまさんの本心だと思います」(吉本興業社員)

 その証拠に、なんばグランド花月(NGK)で4月8日に行われた吉本興業創業100周年特別公演のフィナーレでも、さんまは大崎洋社長に向かってこう言い放ったのだ。

「沖縄映画祭、まずまずの失敗やったんやろ!」

 大崎社長が「さんまさん、(吉本を)辞めないでください」と精一杯冗談めかして返すと、さんまが「(大手芸能事務所)バーニングに入りたいと思います!」と言って観客の爆笑を誘った。大崎社長の苦笑いは心なしか引きつっていた。

 なぜさんまはこうまでして沖縄国際映画祭をやり玉にあげるのか。前出の吉本社員が解説する。

「吉本の財務状況がヤバいことを、さんまさんは知っているからです。それなのに赤字事業の映画祭を来年も強行すると大崎社長が決めたので、黙ってられなかったのでしょう」

 本誌もすでに報じたが、吉本興業は昨年3月期決算で39億円の大赤字を計上している。さらに、先頃株主に向けて発表された平成23年度上期中間決算(4月1日~9月30日)でも、15億2000万円の赤字であることが判明した。

 本誌はその非公開の中間決算書を入手、中身を抜粋したのが右の表だ。

 決算書を見た税理士でコンサルティングアルファ代表の北田朝雪氏が言う。

「まず気になるのが、『今後の返済計画』です。'13年9月に48億6000万円の返済が必要だが、BS(バランスシート=貸借対照表)では現金預金の残高は50億円ちょっとしかない。業績の大幅改善がなければ、借金を返すために借金を重ねる、という自転車操業を迫られる可能性があります」

 大手都銀のベテラン行員もこう分析する。

「BSを見る限り、不動産や投資有価証券もそれほど残っていない。借り換えが前提の返済計画となると、事業の健全性を疑われても仕方がないでしょう」

 しかも上期だけで15億円余りの赤字だから、今年3月期決算も30億円前後の大赤字になる公算が高い。こうなると、虎の子の現金がまた減っていくことになる。

吉本元社長からの苦言

 さらに前出の北田氏はBSの固定資産のなかにある「繰延税金資産 約51億円」に着目する。

「繰延税金資産は『将来黒字化する』ことを条件に資産計上できる、いわば『幻の資産』です。最近ではソニーでも話題になりましたが、赤字決算が続くと、これを取り崩さなければならなくなる。そうすると、現在約156億円ある純資産が、約105億円に目減りすることになるんです。

 もちろん、近い将来、黒字に転換するなら問題はない。ただ、中間決算書には具体的な事業計画が何も書かれておらず、これでは先行きの見通しが立たない。上場企業だったらこの計上は許されないでしょう」

 吉本興業は'09年、TOB(株式公開買い付け=市場外で株主から株を買い集めること)によって非上場会社に生まれ変わった。

「長期的ビジョンの経営を実現するため」

 というのがそのタテマエだったが、市場関係者からは「大株主だった創業家の影響力を排除するため」だと見られている。

 TOBは市場価格より高値で株を買い集めるため、当然、その差額がのしかかることになる。それが「のれん」と呼ばれるものだ。

「のれんの償却にこの上期も約20億円かかっている。どうやら市場価格に100億円ほど上乗せしてTOBしているようです。果たしてそれほどの代償を払ってまで上場廃止するメリットがあったのか、疑問です」(前出のベテラン銀行員)

 '91年から9年間吉本興業の社長を務め、その後会長、名誉会長となった中邨秀雄氏が言う。

「相変わらず大きな借金を出して、数字を見るだけで暗然とします。長らく吉本を支えてくれた多くの個人株主を排除し、テレビ局を大株主にして、バラエティ番組を所属芸人で独占してみても業績は上がらず、結局くだらない番組ばかりが増えることになった。

 お笑い番組を吉本が独占するいまの状況は健全ではない。お笑い文化を育成するためにも、現経営陣に不満のあるタレントや社員は吉本に見切りをつけて外に出るべきです。

 吉本の元社長である僕が言うのも変ですが、それほどまでにいまの吉本興業は歪で、ある意味グロテスクな会社になってしまったということです」

 トップ芸人さんまの放言と元社長の苦言、形こそ違えど「現経営陣への諫言」という点で共通する。はたして、現社長に聞く耳はあるのだろうか。

「週刊現代」2012年4月28日号より

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