「反社」で辞任させられた富士通・野副州旦元社長の損害賠償請求を「反社」の立証を求めずに棄却した東京地裁の不条理!
2010年4月、前年の解任騒動に対して損害賠償請求の訴えを起こした野副前社長〔PHOTO〕gettyimages

 富士通元社長の野副州旦氏が、落胆を隠さずに言う。

「私は、付き合っていた方が、反社(反社会的勢力)と関係があるという前提で辞任に追い込まれました。にもかかわらず、判決は、反社と関係があるかどうかを問題とせず、『反社との関係を疑う相応の根拠があるから、辞任をせまる十分な理由があった』ということで、私の訴えを退けました。とても納得できませんので、控訴するつもりです」

 無理もない。

 富士通の社長解任騒動が表面化したのは、2010年3月のことである。前年の9月25日、「病気理由」をもとに退任した野副氏が、「実は、反社との関係を理由に辞任を迫られたもので、納得がいかない」と、事実上の解任に至る事情を、マスコミに訴え、裁判所に地位保全を求めた。

 そのうえで野副氏は、富士通と現・元役員4人に、約3億8000万円の損害賠償を求めて提訴。東京地裁は、4月11日、請求を棄却する判決を言い渡した。その判決理由に、「反社か否かの」の判断が下されなかったことが、野副氏は許せない。

 従業員約18万人、売上高4兆7000億円の会社に発生した"内紛劇"は、国民の耳目を集め、マスコミの論調はさまざまだったが、総じて野副氏に同情的だった。それは「大企業VS個人」という判官びいきが生じやすい対立構図というのではなく、富士通経営陣の「解任理由」が、あまりに不可解だったからである。

「反社」の範囲はどこまでなのか

 暴力団との対決を国民に迫る暴力団排除条例が、昨年10月、全国で完全施行されたこともあって、「反社」という言葉を聞くことが多くなった。その数ヵ月前、「反社」との交際を理由に、人気芸人の島田紳助が芸能界を引退したせいもある。

 しかし、「反社」の定義はあいまいだ。

 暴力団と認定されるのは、全国8万人の構成員、準構成員だが、彼らがビジネスに、直接、乗り出すことは少ない。それを担うのは、企業舎弟、共生者といった暴力団の周辺にいる企業関係者で、暴対法施行以降、警察による取り締まりは厳しさを増し、彼らの多くは暴力団との関係を巧みに偽装、「反社」の認定が難しくなっている。

 では、野副氏がつきあったのは「反社」なのか。

 答えは「ノー」だ。

 野副氏は、09年9月25日、富士通本社で、秋草直之取締役相談役、山本卓眞顧問、大浦溥取締役、山室惠監査役、間塚光義会長、安井三也法務本部長の待つ部屋に呼ばれ、元裁判官の山室監査役にこう告げられた。

「会社法に定められた監査役の権限に基づいて、質問します」

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