ミサイル発射の「確認」に40分以上もかかる防衛力のお粗末さ
日本はヒューマン・インテリジェンスを基盤に情報分析能力を磨け!

ソウル駅でテレビモニターを見守る市民〔PHOTO〕gettyimages

 北朝鮮の弾道ミサイル打ち上げは、失敗に終わった。4月13日朝、7時40分頃のことである。発射後、わずか1分で爆発してしまった。

 この発射のことを私が知ったのは、テレビの緊急速報からであった。韓国国防省の発表を伝えたものであった。テレビは、アメリカ政府も発射の事実を公表したことを報道したが、田中防衛大臣が発射を認めたのは、発射後40分以上経過してからのことである。

 参議院外交防衛委員会のメンバーである私のところに防衛省から連絡があったのは、発射後1時間を経過してからである。そのときに、私はテレビで官房長官の会見を見ていたが、こんなに情報伝達が遅いのなら意味がない。一応関係国会議員には連絡したというアリバイ作りのためだと言われてもしかたがないであろう。

 系列的に整理すると、以下のようになる。

7時40分:米軍が発射を探知
7時51分:韓国のメディアが報道
8時00分:韓国国防省が発射を発表
8時05分:アメリカCNNが速報
8時09分:首相官邸が「発射を確認していない」と発表
8時23分:田中防衛大臣が「7時40分頃、飛翔体が発射された」と発表
8時36分:藤村官房長官が、防衛大臣発表を追認

 ミサイル発射から確認に40分以上もかかったのは、やはり問題である。ダブルチェックに時間がかかったというが、これは言い訳にはならない。全国瞬時警報システム(Jアラート)も鳴らなかった。弾道ミサイルが日本に到達するのに必要な時間は7分くらいだが、探知に1時間もかかるようでは、迎撃どころではないであろう。

 情報は迅速さが勝負である。正確な情報を、包み隠さずに、できるだけ早く国民に伝えることが危機管理の基本である。「正確な」という点に固執したあまり、このような失態を演じてしまったのであろう。

 それでは、どうすれば正確な情報を入手できるのであろうか。イージス艦や早期警戒衛星などの最新鋭の機器を活用することは、当然である。

 しかし、軍事行動は人間が起こすのであるから、人間の研究が必要であり、人的ネットワークなどを活用して敵の内情を探らねばならない。これが、ヒューマン・インテリジェンスである。

 中国は発射前日の12日、すでに13日には発射される旨の観察を公にしていた。北朝鮮の後見人として、北朝鮮政府内部の様々な情報を入手していたのであろう。

 日本としては、中国や韓国には及ばないにしても、もっとヒューマン・インテリジェンスに力を注ぐ必要がある。公安調査庁が行っているような定点観測も重要である。そして、雑多な情報を取捨選択して総合的に判断する情報分析能力が不可欠である。戦後の日本は、この分野に人材や財源を投入する努力を怠ってきた。それが、日本の国力を弱体化させている。軍事力に欠ければ欠けるほど、情報能力を増す必要があるのである。

危機に対応できない未熟外交

 民主党政権は、これまでの基盤的防衛力構想に代えて、「動的防衛力」構想を打ち出したが、今回の北朝鮮ミサイル迎撃対応で、それが実際にどのように機能したのであろうか。
米軍との連携に不備はなかったのか。じっくりと検証する必要があろう。金日成生誕百周年の軍事パレードでは、大陸間弾道弾と思われるミサイルが登場した。これはアメリカも射程に入れるが、日本の防衛構想も見直しを迫られるであろう。

 今後は、国連安保理での北朝鮮非難決議などの対応が問題となる。中国がどのような態度を取るかによって、安保理での対処も変わってくる。日本としてはアメリカ、韓国と共同歩調をとりながら、北朝鮮の冒険主義に釘を刺すべきであろう。

 金正恩体制の確立を目指す北朝鮮にとっては、今回のミサイル発射失敗は、大きく威信を傷つけるものであったし、また、失敗を公表せざるをえなかったことも、国際社会における北朝鮮の孤立を印象づけたと言えよう。

 21世紀の今日、なおも世襲の独裁を続けるこの国をどのようにして開放し、民主主義国家に変えていくのか。軍事力の行使という選択肢以外の智慧を、隣国として生み出さねばならないが、それはまた、中国との付き合い方とも大きく関連してくる。外交不在の民主党政権にとっては、荷が重すぎる。
 

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら