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スクープインサイド 三代目は単なるお人形さん狂乱の北朝鮮金正恩は操られている

 金日成軍事総合大学で学んでいた頃、金正恩には二人の「教育係」がついていた。金正日総書記の死後、急速に台頭したこの二人は、金正恩を意のままに操り、北朝鮮をわがものにしようとしている。

平壌駅前に新型街頭テレビが

「北朝鮮のミサイル発射によって、複数の国々に影響が及ぶことが予測されます。日本、韓国、フィリピン、インドネシア、これらの国々にはミサイルの破片が落ちて、犠牲者が出ることも考えられるのです。アジア太平洋地域の国々は、さらに厳重に警戒していかねばなりません」

 アメリカ国防総省のアジア太平洋安全保障問題担当官であるルボイ次官補代行は米下院軍事委員会の公聴会で、衝撃的な発言を繰り出した。アメリカの軍関係者が、公式の場で北朝鮮のミサイルやその破片が近隣諸国に落下する可能性を指摘したのは初めてのことである。

 この報告の直後、フィリピンは北朝鮮のミサイルが通過すると予想されるルソン島東部海域で、4月12日から16日の間、船舶と航空機の運航を禁じることを決定した。発射予告日まで残り1週間を切り、東アジア周辺にはただならぬ緊張感が漂っている。

 だが、それとは対照的に、平壌市内はお祭りムード一色に染まっている。金日成主席の生誕100周年を祝う「太陽節」を15日に控えた北朝鮮では、連日にわたって市民が学校の校庭や広場に集められ、マスゲームの練習を行っており、街のあちこちに金日成、金正日両名の功績を称えるポスターが貼られている。祝賀行事では大規模な軍事パレードやアリラン(朝鮮民謡)大会が開催され、北朝鮮の歴史上もっとも盛大な祝賀祭となる見込みだ。

 そしてミサイルの発射は、この祝賀祭のメーンイベントである。

 日本では東京近辺と沖縄に迎撃ミサイル・PAC3が配備されたが、平壌駅前に設置されたのは、新型の街頭テレビだ。「人工衛星」が発射される瞬間、このテレビにその模様が映し出される予定で、そのとき平壌駅前は市民で溢れかえり、歓声が轟くのだろう。

 しかしここに来て、北朝鮮国内でもミサイルの発射に懸念を示す勢力がいたことが明らかになった。外交に従事するテクノクラートたちである。彼らの懸念と金正恩の「発射宣言」までの行動を辿っていくと、正恩の背後に潜み、若き指導者を操ろうとする人物の姿が浮かんでくるのだ。

〈人工衛星『光明星3号』を4月に打ち上げるのは時期尚早です。いまはアメリカとの間で、食糧支援に関する合意が結ばれたばかりです。その直後に人工衛星を打ち上げれば、アメリカだけでなく、各国も反応し、わが国は不利益を被ることになるでしょう〉

 金正恩がミサイルの発射を宣言する直前、北朝鮮の外務省は、正恩大将に向けてこんな「嘆願書」を送っていた。国際社会の反応を予想した、強い懸念が窺える。韓国外商部の高官が明かす。

「北朝鮮の外務省は、『せめて発射するなら、5月以降の方が問題は大きくならない』とも進言したようです。従来であれば、金正恩に意見をすることなど、畏れ多くて簡単にできることではない。しかし、対外関係の悪化を懸念した外務省の高官らは、決死の覚悟でこう訴えたのです」

 そもそも北朝鮮の外務省は、「太陽節を迎える前に、アメリカから食糧の援助を受け、盛大にこれを祝う準備をしなければならない」という正恩直々の指示を受け、アメリカとの交渉に当たっていたのである。

 2月末、ようやく合意がなされた直後に「ミサイル発射宣言」が伝わったのだから、外務省はこの矛盾する正恩の指示に、戸惑いを覚えずにはいられなかった、とこの高官は語る。

「少なくとも対外方針に変更がある場合、事前に正恩から外務省に対して通達の『お言葉』があるはず。しかし、外務省にはそれすらもなかった」

 対米関係の改善を命じておきながら、もう一方ではアメリカや世界を挑発する。いくら正恩が経験不足の指導者だからといって、こんな矛盾した行動にでるはずがない。韓国の外務官僚から見れば、北朝鮮の「奥の院」で外交方針をめぐるなんらかの混乱が生じていることは明らかだった。

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