中国
「公明星3号」騒動に見え隠れする「中国包囲網構築」というアメリカの真の意図
ミサイル発射失敗を報じる号外〔PHOTO〕gettyimages

 4月13日朝7時39分、北朝鮮が金正恩新体制の威信を賭けて打ち上げた「光明星3号」は、発射後1分後に空中分解するというあっけない幕切れに終わった。まさに大山鳴動してねずみ一匹である。

 この「光明星騒動」で、先週の北東アジアは、まるで戦争前夜のような緊迫感に包まれた。中でも、特に過敏に反応したのが日本だった。

 この日、北京で中国の元ベテラン外交官とランチした際、彼は私に、中国が今回の日本の「光明星3号」への対応を、まったく別の視点から捉えていたことを告げた。曰く、

 「日本が、飛来コースの軌道近くに位置する沖縄を防衛しようとしたのは分かるが、隕石が落ちる確率と同程度しかない首都・東京までものものしくPAC3(パトリオット・ミサイル)を配備したのは理解できなかった。これは、『北朝鮮の脅威』を口実にして、アメリカが目論む'中国包囲網'に協力したものだろう。

 その証拠に、3月30日に野田首相が安全保障会議を召集して『弾道ミサイル破壊措置命令』の発令を決めた時、その冒頭で、『アメリカと緊密に連携を取りながら、必要な措置を講じる』と述べた。オバマ政権発足以来、アジアの指導者がこのセリフを吐いた時は決まって、『アメリカの要求に応じて、'中国包囲網'に協力する』という意味だ。

 ちょうど2年前に李明博大統領が天安号事件に呼応して発表した際も、同じ文言だった。以後、米韓は、『北朝鮮の脅威』を表看板にして、中国近海で合同軍事演習を繰り返している。アメリカはこの延長線上で今回の『北朝鮮の脅威』を捉え、日本はそれに乗っかったのだ」

常に「中国の脅威」を意識するアメリカ

 この中国人外交官の見解を理解するには、若干の説明がいる。

 アメリカはこの1月、今後10年の防衛戦略の転換を決めた。過去10年間の防衛戦略の主要テーマは「中東の民主化」だったが、サダム・フセインもビン・ラディンも消滅させたいま、今後10年の防衛戦略の重心を、「中国包囲網の構築」に移すということだ。これ以上、中国を台頭させては、唯一の超大国としての覇権を中国に奪われてしまうと、アメリカは危機感を募らせているのである。

 オバマ政権は、一昨年3月に韓国海軍の艦船「天安号」が撃沈されるや、7月に韓国と合同で、中国近海で史上最大規模の軍事演習を実施した。同月、中国とベトナムが南沙諸島の領有権を巡ってつばぜり合いを起こす中、クリントン国務長官がベトナム入りし、「共同で中国の脅威に対抗していこう!」とASEAN(東南アジア諸国連合)を鼓舞した。

 そしてその後は、中国vsベトナム、及び中国vsフィリピンの2国間問題だった南沙諸島の領有権問題を、中国vsASEAN(及びその背後のアメリカ)という対立の構図にすげ替えることに成功したのだった。

 一昨年9月には、中国漁船が尖閣諸島に侵入したことで、日中が一触即発となったが、この時もクリントン長官は、「尖閣諸島の防衛は米日安保条約の範囲内だ」と宣言し、中国への対抗意識を剥き出しにした。

 北朝鮮の「光明星」に関しては、2009年4月も、今回と同様の展開となった。

 アメリカはBMD(弾道ミサイル防衛)システムの一環として、2007年3月、日本に初めてPAC3を配備した。それから2年後の2009年4月5日、北朝鮮は「光明星2号」の発射実験を行った。この時、麻生首相は、発射の約1ヵ月前の3月7日に「破壊措置命令」発動を指令し、迎撃準備を行った。

 だがこの時は、北朝鮮のミサイルは遠く太平洋沖に飛び去ったため、日本は実際には迎撃を行わなかった。麻生政権としては、純粋に「北朝鮮の脅威に対抗する」目的だったのかもしれないが、アメリカの真の目的が「中国の脅威に対抗する」ことだったのは間違いない。

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