濃野平 世界で唯一の日本人闘牛士
「闘牛界の星飛雄馬になりたくて」

単身スペインに渡り、闘牛場にまさかの飛び入り参戦。 漫画のような豪胆さで成功を摑んだ男
43歳とは思えぬ引き締まった体で闘牛の型をキメる濃野。心臓付近に今も残る傷跡が競技の激しさを物語る〔PHOTO〕鬼怒川 毅
のうの・たいら○1968年、東京都生まれ。28歳でスペインに渡り、2年後に、日本人として史上3人目(現役では唯一)の闘牛士となる。
今年3月、初の著書となる自伝本
情熱の階段 日本人闘牛士、たった一人の挑戦(講談社刊)を上梓〔PHOTO〕ALFONSO CATALANO

「試合に出たい。闘牛界で評価されたい。その一心でした。無我夢中で闘牛場に飛び降りて、牡牛に立ち向かったんです」

 遠くスペインの太陽の下、一般の日本人にとってほとんど馴染みのない競技に人生を賭ける一人の男がいる。濃野平(43)、世界で唯一の日本人闘牛士として知られる男だ。現地で一流のプロ闘牛士として認められる位である「ノビジェロ・コン・ピカドール(満3歳牛の仕留め士)」に、'09年に昇格している。

「闘牛はただのスポーツじゃない。定められたプロセスを踏んで、牛を仕留める様子を見せていく〝芸術〟なんです」

 その過程はこうだ。まず主役の闘牛士がマントで牡牛を翻弄し、槍騎士銛打ち士が攻撃を加える。闘牛士はムレタ(赤い布)と剣を手に、血を流して猛り狂う牛に立ち向かう。最後には背中の急所に剣を突き立て、その生命を奪うのだ。

 たとえ若い2歳牛でも、体重はときに500kgを超える。人と獣との命懸けの闘争に、濃野は自身の哲学を見出した。

「闘牛は、単なる牛との闘いではないんです。死と隣り合わせの恐怖心を克服する、自分との闘いだと思っています」