雑誌
徹底追及!南海トラフ地震が襲う浜岡原発(中部電力)&伊方原発(四国電力)「再稼働は危なすぎる!」
フライデー
浜岡原発の30km圏内には、約74万4000人が居住。原発周辺の居住者数では、東海第二原発(茨城県東海村)に次ぐ、2番目の人口密集地帯である〔PHOTO〕夏目健司

 浜岡には建設中の防波壁の高さを上回る「21mの津波」が襲う可能性が!一方の伊方も「最大震度6強」を想定せず、過去に起きた地震データのみでストレステストを行っている

 M9.1という驚異的な数字が想定されている、南海トラフ地震。3月31日に内閣府から各地の想定震度、津波高が公表された中で、俄然注目を集めたのが、中部電力・浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)だ。福島第一原発を上回る、震度7の地震と最大21mの津波が襲う可能性が明らかにされたからだ。

 内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(座長・阿部勝征東京大学名誉教授)の委員である東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター教授・今村文彦氏が説明する。

「従来、南海トラフでは1707年の宝永地震を参考に、東海、東南海、南海の震源域が3連動する地震を考えてきました。今回はそれに加えて、九州沖の日向灘を含めた4連動、南海の海溝を含めた5連動まで視野に入れた。さらに、プレートが断層として滑って地震や津波を起こすのですが、断層の浅いところでも大きく滑る可能性があると仮定した(3ページの図表で、「地震時に動く断層の想定領域」として示したエリアが、大きく滑る可能性がある地域)。両方の効果によって、津波の規模が大きくなったのです」

 茨城県から鹿児島県に至る太平洋沿岸各地の23市町村で、20m以上の津波が押し寄せる可能性が指摘された。各自治体は早急に対策を立てる必要に迫られることになったが、中でも深刻な危機に直面しているのが浜岡原発なのである。

 浜岡原発は、昨年5月の時点で、津波への対策の不十分さから当時の菅直人首相の要請を受けて4、5号機が運転を停止。3号機は定期検査中で、1、2号機は老朽化による廃炉準備中のため、すべての原子炉が停止している。

防波壁を建築中の浜岡原発。保安院は、中電に対し、最大の津波に対する原発への影響の評価を16日までに報告するよう求めている〔PHOTO〕夏目健司

 中電は、それまで、浜岡原発における最大震度を6強と想定。津波の想定水位を最大で約8mとし、既存の高さ10~15mの砂丘堤防で十分としていた。が、福島第一原発の津波の高さが15mだったことから、新たな津波対策として、鋼材と鉄筋コンクリートなどを使った、防波壁(高さ18m、幅2m、総延長約1.6㎞)の工事を昨年11月に始めた。しかし、今回の想定は、その18mを3mも上回った。津波対策を抜本的に修正しなくてはならないのだ。

 そもそも浜岡原発は、構造上の致命的な欠陥を抱えている。『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社)などの著書を持つ、作家・広瀬隆氏はこう指摘する。

「冷却用の海水を地下の取水トンネルを通じて引き込み、取水槽に蓄えています。しかし、このトンネル自体が、今回想定された震度7の揺れが来たら崩壊する危険性があるのです(4ページ図表参照)。海水が引けなくなれば、取水槽に蓄えてある水で冷却するしかない。ですが、それも20分程度しかもたないのです。冷却が不可能になれば、福島第一原発と同様に炉心溶融に陥るのは防げません」

 浜岡原発の抱える問題点はこれだけではない。中電は3月30日、浜岡原発の定期検査で、5号機の復水貯蔵タンクに40個の穴が見つかったことを発表した。このタンクは、原発の運転中に原子炉冷却のための水を一時貯める設備で、タンク内の水はわずかな放射性物質を含んでいる。昨年5月に運転を停止した際、復水器内に海水約400tが流れ込むトラブルが発生。中電は、その海水によって腐食し、穴ができたのではないかと見ている。放射性物質の漏洩はないというが、津波対策以前の問題があるのではないか。福島第一原発の設計者であり、原子力安全・保安院の専門家会議のメンバーとして、関西電力・大飯原発3、4号機(福井県おおい町)のストレステスト(耐性評価)に参加した後藤政志氏が批判する。

「普通に考えて、1年も経たないのに腐食して穴が空くのかという疑問がある。昨年5月以前から腐食していたと考えるのが妥当でしょう。つまり、きちんとチェックされていなかったわけです。福島の事故が起こってはじめて、しっかり検査して分かったということではないでしょうか。原発の管理なんて、この程度だということです」

 いくら巨大な防波壁を作っても、管理体制がしっかりしていないのでは、まさに砂上の楼閣である。中電は再稼働に向けて、防波壁の工事の12月の完成を予定している。今回の最大21mの津波高の想定を受けて、中電はどのような浸水対策を考えているのか。広報担当に疑問をぶつけると、こう回答した。

「現在行っている18mの防波壁などの浸水対策はもう着工しているので、予定通り進めることになると思います。新たな対策を講じるとしても、この浸水対策とは別の工事になると思います」

 今回の南海トラフ地震にともなう津波の想定値が変更されても、とりあえずは旧来の対応を進めるというのである。

伊予灘に臨む、伊方原発(左から1・2・3号機)。伊方町には「電源立地促進対策交付金」で建設された施設や、四国電力関連の建物が数多く存在する〔PHOTO〕朝井 豊

頼りにならない耐震設計

 危うさを抱えているのは浜岡原発だけではない。四国電力・伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)は、不十分なストレステストのまま再稼働へと舵を切っている。

 3月26日、保安院は伊方原発3号機のストレステストの一次評価を「妥当」とする審査書をまとめ、内閣府の原子力安全委員会に報告した。最終的には野田首相を含めた4閣僚が再稼働の是非を判断するが、再稼働に向けて大きく動き出したのだ。

 だが、このストレステストが安全性をまったく担保できていない。

「ストレステストには一次評価と二次評価があります。一次評価は『炉心溶融まで』の耐久テストであり、二次評価は『炉心溶融以降』のテストなのです。福島第一原発の事故を踏まえてテストするのであれば、当然炉心溶融が起こった後、原発がどうなるかという二次評価を行わなくてはならない。だが、提出されたのは一次評価のみ。それで再稼働を妥当と判断しているのです」(前出・後藤氏)

 橋下徹大阪市長(42)がストップをかけて話題になった、大飯原発3、4号機の再稼働問題でも、伊方原発同様にストレステストは一次評価のみで「妥当」と判断され、最も再稼働が早いと見られていた。

「ところが4月3日になって、野田首相は大飯原発の再稼働に関して、新基準を作るよう関係閣僚との会合で指示を出しました。大阪府だけではなく、京都府や滋賀県など近隣府県の反発が非常に強かったため、再稼働の判断が先送りされることになったのです」(全国紙原発記者)

 伊方原発は今回の南海トラフ地震の想定では、震度6強の地震と最大3mの津波に襲われる可能性を指摘された。

昨年5月14日に発電設備全5機を停止した、浜岡原発。海抜は、福島第一原発の10mを下回る、わずか6mだ

 四電はこれまで、伊方原発における最大震度を5強、最大マグニチュードを8.6、最大加速度を570ガルと想定してきた。なおかつ、'01年の芸予地震(M6.7)の際の48ガル(3号機への負荷)が過去最大ということを根拠に、原発の耐震性に問題はないとしてきた。だが、今回の想定では、それを上回る6強という数値が出されたのだ。後藤氏が語る。

「過去にどのレベルの地震が起きたかということを基準にするのではなく、起こりうる最大の規模を想定すべきです。東日本大震災が起こるまで、日本でM9クラスの地震が起こるなんて考えられていませんでした。'07年の新潟県中越沖地震(M6.8)では、柏崎羽原発には2058ガルの負荷がかかりました。伊方原発付近で過去に発生していないからといって、そうした規模の災害に襲われる可能性がないとは言えない。伊方や浜岡(1000ガル)の耐震設計では太刀打ちできません」

 大飯原発はもちろん、安全性がまったく担保されていない両原発の再稼働も、絶対に許されてはならない。

「フライデー」2012年4月20日号より

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら