相変わらず「想定外」を想定しない原発村。まず"再稼働ありき"の「新基準」には福島原発事故の反省がいかされていない

 政府は4月6日「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(以下「新基準」)を総理以下の4閣僚により確認した。

http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/pdf/120406-11.pdf

 これは目前に迫る大飯原発の再稼働に向けての地ならしとも言われている。

 当初4月3日夜、総理、官房長官、経済産業、原発事故担当の4閣僚によって、ストレステストの1次評価が終わった大飯原発の運転再開についての協議を行った。この時、総理から「福島第一原発の事故を受けた安全基準が分かりにくい」として、経産大臣に対し、原発安全対策の暫定的な新基準を作るよう指示したとされている。

 5日には新安全基準が提示され関係閣僚においておおむね了承し、上記のごとく6日決定となった。総理指示が出てから検討・策定に要したのは2日、しかも事故発生直後から今日まで批判され続けてきた保安院が策定するという泥縄状態での決定となった。

耳を疑った海江田大臣の緊急安全対策終了宣言

 福島第一原発事故後の定期検査終了原発再稼働問題は、昨年の6月にさかのぼる。6月18日、当時の海江田経産大臣は、事故後に電力11社に指示して実施された緊急安全対策が終了したとして安全確認終了を宣言した。

 これを受けて玄海町長は九州電力に「再稼働に対する安全上の支障はなく、町民の一定の理解は得られたと判断する」と述べ、再稼働の了承を伝えた。

 当時、総理補佐官として原発事故収束対応にあたっていた私は耳を疑った。事故の原因特定がなされずに緊急安全対策の実施のみで再稼働を容認していいのか。とりわけ、緊急安全対策は事故の原因を「津波によるもの」とほぼ特定した対策案でもあった。

 陸海空で漏れ出ている放射性物質の汚染拡大防止策実施に直接あたっていた私は、津波だけではない地震による損傷が確認できない状況の中で、主に津波対策(防潮堤の設置及び電力・動力の多重化等)の実施だけで安全を宣言することなど決してあってはならないと考えていた。

 事実、福島第一原発における原子炉建屋並びにタービン建屋に溜まった大量の汚染水が地下水と混ざって流出し、海域汚染を拡大している可能性については、津波ではなく地震による建屋や配管、あるいは付属施設の損傷が最も大きな要因になるものであり、そのことの可能性は否定できないとの結論をもって対策の実施に当たっていたのである。

 少なくとも現場の東電並びに保安院を含めたプロジェクトチームのリスク分析の思考とは異にする結論を政府が示した瞬間でもあった。

 その後菅総理の判断指示により、海江田経産大臣による安全宣言は出されたものの、改めて再稼働に向けてストレステストの実施が課されることになった。

 経産省発出の安全宣言に官邸がストップをかけたのである。しかし、これにも私は強く異を唱えた。安全宣言はもってのほかであるが、ストップをかける理由がストレステストでは理にかなわないということである。

 ストレステストは余裕度を見るだけであって、安全性を高めるものではない。最も重要なことは客観的事実に基づいた事故原因の特定と、それに伴う安全基準の見直しであることを当時も強く主張してきたものである。

http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-e109.html
http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-f7ea.html

 そして、菅内閣から野田内閣に変わり、ストレステストが継続される中、いよいよ目前に迫った関西電力大飯原発再稼働に向けて、官邸の指示により、あらためてストレステストによる判断ではなく「わかりやすく」するために新基準策定が行われたところである。

 残念ながら、昨年6月以来私が主張していた、さまざまな事故原因の特定による全面的な安全基準の見直しではなく、昨年6月に経産省が出した安全宣言の元となる緊急安全対策の実施とストレステスト1次評価による新基準であり、昨年6月から何も変わっていないと言わざるを得ないものであった。

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