ゴルフ
マスターズ最終日。
松山英樹の涙。ババ・ワトソンの涙。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

悔し涙

 サンデーアフタヌーンのオーガスタは2種類の涙と拍手と歓声を吸い込み、やがて静寂に包まれた。

 アジア・アマチュア選手権を2連破し、マスターズへの自力出場を2年連続で果たした松山英樹は、昨日までの3日間は伸び伸びとしたプレーぶりと明るい笑顔を見せていた。「最終日は16位以内に入って来年の出場権を獲るのが目標です」と、昨日は言い切った。

 だが、最終日は出だしから躓いた。1番で1.5メートルのパーパットを外した瞬間、「あれっ? おかしい」。

 おかしいと感じたのは自身のパットの感覚だった。ストロークがおかしいのか、それともタッチが狂っているのか。「何かがおかしい」という感覚が松山の以後のパットをさらに狂わせ、パットの狂いがショットもアプローチも狂わせ、すべての流れが乱れに乱れ、80を叩く大崩れの幕切れとなった。

 スタートホールの「あれっ?」という感覚が引き金になって崩れたのは、振り返れば、石川遼の予選2日間とそっくりなパターンだった。いや、松山と石川がそっくりだったというよりも、オーガスタを攻略する上で何かが未熟な選手たちに共通する崩れ方だったのかもしれない。

 ホールアウトし、テレビや海外メディアのインタビューに応えたところまで、松山は悔しさをなんとか喉元でこらえていた。

 だが、顔見知りの日本の記者たちに囲まれた途端、松山の悔しさはついに溢れ出し、目から涙がこぼれ落ちた。声にならない「すいません」の会釈をして、小走りにクラブハウスへ。

 阿部監督(東北福祉大)に促され、あっという間に赤い目をしたまま外へ出てきた松山に「何が、どう、悔しい?」と尋ねると、彼は、こう答えた。

「自信を持ってやっていたパットが悪くて、自分がふがいないというか、パットが良ければもっと上を狙えたというか・・・」

 阿部監督ですら、松山の涙を見たのは「初めてですよ」。

 悔し涙は、始まりの涙だ。涙が溢れるほど自分のふがいなさが悔しいと感じたマスターズ最終日。今日という日が松山の本当の成長の始まりになるのなら、彼の悔し涙は、いつか必ず、うれし涙に変わるはずだ。

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