韓国の独壇場に待ったをかけられるか?
首脳会談でヤマ場を迎える「日欧EPA交渉」のゆくえ

〔PHOTO〕gettyimages

 韓国に遅れをとった欧州連合(EU)に対する輸出関税の撤廃を獲得できるのか---。

 6月か7月に開催される予定の日欧首脳の定期協議へ向けて、EUとの経済連携協定(EPA)の予備協議が最後のヤマ場を迎えた。独、英、仏、伊のEU加盟主要4ヵ国首脳が東日本大震災をきっかけに積極的な支持を表明していることから、産業界も絶好の機会とみて政府間交渉の側面支援に余念がない。

 成否の鍵を握るのは、EU側が工業製品の関税の撤廃の条件にあげている、(1)日本の非関税障壁の撤廃、(2)外国製品に不利とされている日本の政府調達慣行の見直し---の2つの行方だ。

 日欧EPAは、農業のようなそれぞれの国内で激しい抵抗が起きる分野が対象になっていないうえ、環太平洋パートナーシップ(TPP)に勝るとも劣らぬ直接的な経済効果が期待できるだけに、進行中の予備交渉を終えて、本交渉に進む合意に繋げたいところである。

 日欧EPAは、日本側がすでに工業製品の関税を撤廃しているので、"不平等条約"状態のEU側の工業製品の撤廃が焦点だ。

 EU側は長年、日本の自動車を始めとした工業製品の輸入急増などを懸念して消極的な姿勢をとってきた。

 しかし、昨年3月の東日本大震災を受けて、姿勢を大きく転換。菅直人前首相が昨年5月のドービルサミット出席のため訪欧した際に、メルケル独首相、キャメロン英首相、サルコジ仏大統領らが相次いで、日本支援の一環として予備交渉の開始を後押しする考えを表明。欧州主要国の支援を受ける形で、菅前首相がEUのファンロンパイ大統領、パローゾ欧州委員長と予備交渉の開始に合意した。

 最後まで関税撤廃に慎重だった欧州ビジネス界も、日本側の非関税障壁の撤廃と政府調達慣行の見直しを条件として、交渉に応じる姿勢に転じてきた。

 今年3月に来日したイタリアのモンティ首相も、野田佳彦首相と会談し、日本とEUのEPAについて、早期の交渉開始に向けて努力することで一致していた。

欧州ビジネス界をその気にさせた意見交換

 そもそも韓国が昨年7月、日本に先駆けて、EUとの間で相互に貿易品目の99%の関税を撤廃する意欲的な自由貿易協定(FTA)を発効させており、日本は遅れをとった格好。

 韓国は、このFTAの発効と同時に、欧州から自動車部品(関税率4.5%)、リチウム電池(同4.5%)の関税撤廃を獲得したほか、3年以内の1500CC超の乗用車(同10%)の関税撤廃、5年以内の1500CC以下の乗用車(同10%)、カラーテレビ(同14%)の関税撤廃などの確約も得ている。

 FTAを得て、韓国勢は1人勝ち状態だ。欧州経済危機の真っ只中にあったにもかかわらず、欧州向けの輸出シェアを大きく伸ばした。

 自動車を例にとると、EU域内の乗用車販売台数は昨年後半(7-12月)、欧州車が前年同期比0.5%減の409万9034台、日本車が同7.2%減の75万1120台だったのに対し、韓国車は同18.3%増の33万4898台となっている。

 このため、日本の経済界は、昨年からの予備交渉を逃すことのできない好機ととらえ、欧州ビジネス界の支援を取り付けるべく、積極的に意見交換の場を設営。欧州ビジネス界をその気にさせる方策がないか探ってきた。

 そうした中で、建設的な成果とされているのが、日本の非関税障壁についての欧州ビジネス界の誤解の解消だ。欧州サイドはそれまで、非関税障壁は、日本企業が欧州製品の進出を妨げるために政府に働きかけて構築した諸規制と認識していたが、これは誤りで非関税障壁に映る諸規制の多くは日本企業の手足を縛るもので日本企業も緩和・撤廃を要望している実情が理解されたというのだ。

 例えば、住宅地に自動車ディラーを建設する場合の障害になっている自動車整備工場の厳しい建設規制などはその典型だ。日本の自動車業界が輸入車ディラーと協力して関係省庁に規制緩和の見直しを働きかけていくことで合意ができたという。

 ちなみに、日本と欧州の経済界は4月3、4日の両日、都内で「日・EUビジネスラウンドテーブル」と題する会合を開催した。

 日本からは、日本経団連の米倉宏昌会長が住友化学会長として議長役を果たしたほか、新日鉄、三井住友海上火災、NTT、全日空、東芝、住友商事、東レ、ソニー、テルモ、パナソニック、味の素などの企業が出席した。欧州からも、アリアンスペース、エアバス、アレヴァ、BASF、バイエル、BNPパリバ、ダイムラーAG、日本エリクソン、シーメンス、ティッセンクルップ、フォルクスワーゲンジャパンなどが参加した。

 会合では、それぞれの当局に対して、早期にEPA締結を求める提言をとりまとめた。この提言書は、野田佳彦首相とパローゾ欧州委員会委員長に提出することになっている。

 また、個別分野についての非公式協議(スコーピング)もあわせて開催し、EU側の撤廃要望の強い非関税障壁の取り扱いについても、詳細な意見交換を行った。項目は、電子機器、航空輸送、自動車、医薬品、化学品、化粧品、食品安全、酒類、公共調達、投資、金融サービスなどの約30項目が含まれている。

 具体的には、成田空港の発着枠の不公平の解消、国連で進められている自動車の型式認定に関する国際標準の受け入れの前倒し、軽自動車の優遇税制の撤廃、医薬品の承認機関の短縮化や海外の臨床データーの受け入れ、食品添加物の国際ルール並みへの緩和、他国より厳格な食肉輸入基準の緩和などが含まれている模様だ。

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